10月10日



「何でXANXUSの機嫌が悪いのか分かんないんだけど」

 こちらも不満そうな様子でストローをガジガジとかじる女にスクアーロは「またか」とこれ見よがしに大きな溜め息をついた。それが気に食わなかったようでジトリと女はスクアーロを睨めつける。到底上司への態度とは思えないがここはヴァリアー、実力主義者ばかりが集まる野郎共ばかりなので周りの幹部たちすら咎める様子はない。

「どうせリコがまた何かやらかしたんだろうがぁ」
「一応お前ボスのオンナなんだろ。なんか心当たりねーの?」

 ヴァリアーの幹部補佐、兼、XANXUSの恋人。それがリコである。
 公認の仲となりかれこれ数年は経過しているとスクアーロ自身も認識しているのだが、未だに喧嘩は絶えないのだと言う。こちら側からすればその後の八つ当たりはすべて自分に来るので勘弁して欲しいというのが正直なところであった。なので話を聞いてやっている…というところが現状である。

「心当たりも何も」

 一応、文句を言いたいだけではなく悩んではいたらしい。ベルの質問に対しリコはううんと唸って思い出そうとするが今ひとつのようだった。

「任務が忙しくてそれどころじゃなかったんだよね。会話自体が三日ぶりぐらいだし」
「ふーん。……三日ぶり?」
「? うん、そうだけど」
「お前ボスの誕生日はどうしたんだよ。去年は盛大にやっただろ」
「あーあれね。アレはあのあと機嫌が悪くなったから今年はやってないんだよね。夜にでも用意してた酒持って行こうかなって思ってるぐらい」

 きっと煩いのが嫌だったんだよねえ、困ったよねえ。

 そんなことをのほほんと呟くリコに誰しもがガクリと項垂れた。

「お前……それ逆に何もしてないから機嫌が悪くなったんじゃねえかぁ!!」

 早くXANXUSの元へ行ってこい!と、かつて聞いた事のないほどの大声量のスクアーロの声が部屋に響き渡ったのであった。

(アイツの愛は分かりにくい)

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