闇医者、とは。

医師免許を所有していないけど最高の腕を持っていて、主に裏社会の人間達を診て回っている。犯罪者の顔を変えたり、臓器移植をしたり…表社会では出来ないことを迅速確実に施術できる。だから代金は高額かつ現金のみ。闇医者の所在を知る者は誰一人としておらず、いつ現れるかも分からない…そんな、謎の存在。


「に、なりたかったんだけどなー」

「先生!次の患者さんがお待ちです!」

「はいはい」


私は、闇医者だ。


「先生〜親知らずが歯茎を突き破ってきて痛ぇんだ、助けてくれ!」

「自分の親を刃物でブッ刺し殺したアンタにはお似合いの痛みだろーよ」


もっと細かく言うと、闇の歯医者だったりする。


「先生、先日通院終了した患者さん、痛みが再発したらしくて突然来院されたんですけど…」

「あー、アイツか。サイコパス殺人鬼のクセに自分の痛みには弱すぎるんだよね。診る暇ないからロキソ◯ン渡して帰ってもらってー」

「分かりました」


でも。さっき言った理想の闇医者とは少し…いやだいぶ違う。人目の少ない山の中だけど診療所を持ってるし、電話予約も可である。住んでるアパートは此処からまぁまぁ遠い街だけど、患者達の人使いが荒く突然呼び出されることも多いから、ほとんどの時間をこの診療所で過ごしている。

一人では手が回らないのでアルバイトとして助手ちゃんを一人雇ってたりもする。割愛するがワケありの、でも仕事はちゃんとしてくれる、貴重で可愛い人材だ。

…私?私は、まぁ、よくある話、医師免許が無い。国家試験に落ちたのだ。でも親は死んでるし奨学金返済はあるし就職先は無いしで金銭的余裕が無かったから、とりあえずお金を稼ぐために始めたのが、裏社会の歯医者だったって訳。

これがまぁ〜稼げる稼げる。もちろん保険適用外で治療代は現金払いのみだし、価格設定も好き勝手出来るからね。ホントいつか殺されますよ、と助手ちゃんに苦笑いされたけど今のところ大丈夫だ。そんなに無茶な診察代じゃないし。それに闇医者は結構いるけど闇歯医者って私が知る限り私だけだからね。

医者は基本的にどんな施術も出来るけど口の中は痛みがダイレクトだから下手なことは出来ないし、やはり専門家が一番なのだ。だからまぁ大丈夫でしょ。なーんて軽く思いながらも、少し心配だったり。でも、この可愛い助手ちゃんが元傭兵とか元テロ工作員などという心強すぎる肩書きを持っているから、いざという時は頼りにしている。


「ふぅ。なんとか午前の患者さんは全員終わりましたね」

「そうだね。全く、腕や足が折れても人殺し続けてるような奴らでも口内の痛みには弱いって変な話だねー」

「口の中って自分じゃどうしようもないですからね」


助手ちゃんと機器の片付けをしながら談笑していると、診療所のドアがカラン、と開く音がした。【close】って看板してたはずなのに誰だよ!と思いながら、助手ちゃんと一緒に窓口に行く。


「すんませんけど午前の診察は終わっ…ぐえ!」


私の言葉を遮るように、助手ちゃんが勢い良く私の口を塞いで診察室の中へ引き込む。突然すぎて変な声出た。助手ちゃんは私と入れ替わるように窓口へ駆け出し、どこに仕込んでいたのか分からないくらい大きなライフルを構えて叫んだ。


「ヴァリアーが何用だ!ここはボンゴレ管轄外の地、お前達の管理下には無い!!」


…ヴァリアー、ボンゴレ…!裏社会に詳しく無い私でも知っている名前が出て冷や汗が流れた。

ボンゴレ。イタリアを束ねる巨大マフィアのファミリー。その名を知らぬ者はおらず、イタリアだけでなく世界に影響を与えることができる組織。そのボンゴレの最強暗殺部隊ヴァリアー。そんなとんでもない奴が…ここに?だってここは所有者不明の山林地で、マフィア抗争の敷地争いにも無関係の土地だし、殺人鬼やヤバイ奴らの治療はしているけどマフィアには無関係の小物ばかりだったはずだ。なのに…どうして。

私は診察室の隅に隠してある、万が一の時の為の小型の銃を取り出す。全くもって援護にならないことは承知で助手ちゃんに加勢しようと窓口へ飛び出した。


「コラァァ!!今すぐここから出ていけぇ!!」


我ながら何て弱そうな台詞なんだと思うが、こんな場面は初めてなので仕方ない。以前、助手ちゃんに教えてもらったのを思い出しながら安全装置を親指で外し、相手を確認するよりも速くドアへと銃を向ける。


「せ、先生!危ないし足手まといだから逃げてください!てか邪魔!!」


切羽詰まった助手ちゃんが私を護る様に背中を向けて立つ。ハッキリとボロクソに言われたのは聞こえたけど、それにしてもなんて頼り甲斐のある子なんだとこんな危機的状況で助手ちゃんの有難さを噛み締めながら、助手ちゃんの背中越しにドアの方をよく見た。そこに居たのは。


「妖艶な妖精が、二人もいる…」

「「え」」


ヴァリアーの紋章が入った全身黒ずくめの服を纏い、背中に武器の様な物騒な物を背負った、もみあげと髭の形が独特すぎる男。しかも顔面を何故か赤らめ、こちらを見てモジモジとしている。


「こ、こんな美しい女性達に口内を見られるなど…クッ!」


大きなライフルと小型の銃を自分に向けられているというのに、この男はそんなこと微塵も気にしていない素ぶりで、更にモジモジとしだした。


「な…なんだお前?!気持ち悪!さては私達を油断させる気だな?!」

「先生!本当にかなり気持ち悪いですが本人を目の前にして言って煽ったら危険です!でも気持ち悪い!」


私だって気持ち悪い人に直接気持ち悪いだなんて本人を目の前に言いたくはないけど本当に気持ち悪いのだ。助手ちゃんも言っちゃってるし。これはヤバイ、つい言っちゃったけど絶対怒るだろヴァリアー。だってヴァリアーだもん。ジ・エンド・オブ・私達。

だがしかし、男は私達の言葉に怒り出すことは無く…まさかのまさか、泣き出した。


「ぬん…クッ、そこまで言わんでも良いだろう?!俺、俺だって生きているんだ…!」

「「……」」

「そ、それに、任務終わり故に服装はこれで来てしまったが、今日は歯を診てもらいたくて来たのだ…!」

「え、患者?まじで?」


膝から崩れ落ち号泣するもんだから、ほんの少しだけ可哀想になってきて私だけ銃を降ろす。助手ちゃんはドン引きしながらも警戒心はそのままにライフルを構えたままだ。


「腕の良い歯医者がいると聞いてやって来たのに…こんな仕打ち…クッ!」

「…いや、あのさ、わざわざこんな所に来なくったて、あんたら専属の歯医者の一人や二人雇ってんじゃないの?」


ボンゴレは裏社会も表社会も公認している大きなマフィアだ。腕が良くて、ちゃんと医師免許を持っている歯医者くらい居るだろうに。不信感を露わに視線を向けると、男は目をカッ!と開いて前のめりに叫んだ。


「あんな腑抜け共に任せられぬ!!頼む、代金はいくらでも払う!!診てくれ!!!俺の歯を!!!頼む!!!!!!」


土下座をしながら頭を下げる男。助手ちゃんが小さく耳打ちしてきた。


「…先生。微塵も殺意が無いので、ホントに受診しに来たっぽいですね。しかもあのヴァリアーが土下座だなんて色々とヤバいですよ」

「そうだね…なんか意地でも帰らなさそうだし…仕方ないから一応診るわ」

「分かりました。準備します」


床に額を擦り付け、まるで懇願するかの様なポーズの男に近寄り、しゃがみ込む。


「…あんた、名前は?」

「…レヴィ・ア・タンだ」

「んじゃレヴィ。仕方ないから診てあげる」

「本当か!!」


ガバッと効果音が付きそうな程に勢い良く顔を上げた男、もといレヴィは至近距離で見てもやはり気持ち悪い。しかも救いようの無い程の極悪人ヅラだ。早く終わらせようと私は立ち上がる。


「本当本当。じゃあ診るから入ってきな」

「ぬん!!!」


ぬん、って何だよ返事くらい普通に言えよ。と心の中でツッコミを入れながら診察室に入る。優秀な助手ちゃんが数分で準備万端にしてくれていたので、早速レヴィに診察台に寝てもらい口を開けさせる。

そして、私は目を奪われた。


「…めっちゃ綺麗じゃん!!」


レヴィの口内はとんでもなく綺麗だった。一寸のズレの無い歯並び、赤い歯茎から伸びる歯は真っ白で、虫歯なんて一つも無い。歯の根元に歯垢の類も無く、これぞまさに理想の口内だ。この口内の写真を歯磨きのポスターにして子供たちに配りたい。本当に素晴らしい口内…!


「うわ、本当に綺麗ですね。顔面は汚いのに」

「顔面と口内は違うんだよ。宝の持ち腐れ感が否めないけど久々にこんな綺麗な口内見たわ〜」


私達の容赦ない言葉にレヴィは泣いているが気にせず、本当に綺麗なのでしばらく堪能した。そして、気付く。


「…いや、治すとこ無くね?」


土下座までするからどんな酷い口内なのかと構えていたのに。治すどころか見習いたい口内見せつけてくれちゃって何なんだコイツ。

レヴィの口内から治療ピンセットを出して言うと、こいつは起き上がり、そして胸元から紙を取り出して私に差し出した。


「治療目的で来た訳ではない。これを見てくれ。上の前歯をこんな感じの入れ歯にしたいのだ」

「…は?」


レヴィが差し出した紙には、【高齢者向け☆金の入れ歯〜好きな文字を入れよう〜】と書かれ、夫婦と思われる高齢男女が笑顔で歯を見せている怪しい写真が載っていた。その歯はオール金色で、男の入れ歯には”I love you”、女の入れ歯には”Ti amo”と彫られている。悪趣味にも程がある。


「文字は”VARIA”で頼む」


ウキウキ。そんな効果音が付きそうな表情のレヴィから紙を奪い取ってグチャグチャに丸めて床に投げつけてやった。


「な、何をする!」

「そんな綺麗で健康的な歯を入れ歯になんて出来る訳ないでしょーが!ってか絶対したくない!諦めなさい贅沢者!!」


ついでに紙を踏んづけてレヴィを睨みつける。しかし、この馬鹿は診察台の上でまたもや土下座ポーズをした。お前の特技は土下座か?


「頼むゥゥ!!詳細は言えないのだが戦いへの気合いを入れる為、ボスへの忠誠を示す為にこの入れ歯が必要なのだ!!頼む先生!!どんな痛みでも我慢する!!金ならいくらでも出す!!!だから…頼むゥゥ!!」

「戦いの気合いが入れ歯?!ボスへの忠誠が入れ歯?!頭おかしいんじゃないの?!!」


相手がボンゴレだろうがヴァリアーだろうが関係ない。顔面が気持ち悪くても頭がおかしくても、歯はとても綺麗だ。私はこんな美しい歯を入れ歯にする為に歯医者になった訳じゃあない。


「上の5本だけで良い!1つの歯に一文字でVARIA、丁度良いだろう?!」

「何も丁度良くない!アンタのボスは健康な歯を入れ歯にして喜ぶ変態なの?!」

「ボ、ボスは変態などではない!ボスは、ボスは…!」

「だったら諦めなさい!!」

「…」


土下座のまま診察台の上で項垂れるレヴィは聞き分けのない子どもみたいだ。レヴィはしばらく黙っていたかと思うと、小さな声で話し出した。

「…ずっと、待っていたのだ。ボスが目覚めるのを…」

「…」

「…ボスへの忠誠は昔から変わっていない。ボスがいるヴァリアーへの忠誠もだ」


レヴィは言葉を切って私を真っ直ぐに見る。涙でグチャグチャになった顔の額が俯いていたせいで赤くなっていて正直汚いし気持ち悪い。助手ちゃんはドン引きすぎて、さっきから絶句状態だ。若干診察台から遠ざかっている。無理もない。


「あのさ、それと入れ歯は関係ないでしょ」

「ある!この忠誠心を目に見える形で表したいのだ!!」


思わず溜め息が出る。さて、どうしたものか。

この診療所には、当たり前だがみんな治療目的で来る。その治療の中で、歯が折れたりヒビが入った奴にはインプラントだったり入れ歯だったりの義歯を作る。もちろん、今まで沢山作ってきた。でもそれは人間としての生活を営む上で必要不可欠な【食】が出来なくなってしまうからだ。

レヴィの、見惚れる程に健康極まりない歯を、わざと神経を抜いて偽物にする必要性が私には理解出来ない。神経が通った自分の歯で食事をすることが何よりの健康なのに…この気持ち悪い男には、それが分からないのだろう。


「先生…頼む…」


床で土下座をするレヴィ。ヴァリアーのボスがどんな人かは知らないが、きっと変態に違いない。たぶん、かなりヤバイ変態だろう。あの恐ろしい暗殺部隊が変態部隊だったなんて…メディアに売りたくもなったが命が惜しいので心に留めておく。

…いや、待てよ。これ、もしかして断ったら理不尽な逆ギレで診療所もろとも消されるのでは?変態を晒すだけ晒して大人しく帰るはずがない。嫌だ、そんな理由で死にたくはない。でもレヴィの健康な歯を抜くのも同じくらい嫌だ。どうすればいい、どうすれば…私の命とレヴィの歯、両方とも守る方法…何か…

あ…!

…ある…1つだけ、あるじゃないか…!しかも、稼げる…!!


「…仕方ないけど、引き受けてあげる。まぁ不本意だけど」

「…本当か?!先生、本当か!嘘じゃないな?!本当だな?!」

「しつこい」


レヴィは診察台から飛び降り勢い良く私の両手を握った。さすが暗殺者だ俊敏すぎて避けれなかった。


「先生、感謝する!!」


診療所に来てから初めて、この男は笑顔を見せた。ツリ目が三日月型に細められ、乾燥している分厚い唇の隙間から見える白い歯が姿を現している。泣き顔と同じく笑顔も気持ち悪いが、ほんの少しだけマシに見えたのは、この可哀想な顔面男に慣れてきたからなのだろう。我ながら適応力が高い。


「分かったから、さっさと寝な」

「おう!」


嬉しそうな表情で診察台に寝そべったレヴィを呆れながら見て、私は機器を取り、先程から絶句状態で困惑している助手ちゃんに指示を出し始めた。


「早速、型取りから始めるよ」



ーーーーー
ーーーーーーーーー



そして、一週間後。午後の診察終了時間。


「先生ェェェ!!!」


ドアが吹っ飛ぶのではないかという勢いのレヴィは私が指定した時間キッチリに来院した。診察終了時間にしたのは、他の患者達がヴァリアーの存在を知ったらビビって絶対に来なくなるからだ。それは困る。私の大切な金ヅル達がたった一人の為にいなくなることは避けねばならない。


「あのさぁ、もうちょっと静かに入ってきてこれないの?!私は朝から診察しっぱなしで疲れてんの!」

「ぬ、ぬん…すまぬ…」


ヴァリアーという存在は恐怖対象だが、こいつらが変態部隊だと分かってからは怖くなくなった。レヴィは私や助手ちゃんの暴言にキレ出すことなく大人しく従うので、割と扱いやすい男だと思っている。

相変わらずドン引きの助手ちゃんに案内されたレヴィが診察台に寝そべる。私は一週間かけて作り上げたモノを鼻高々にレヴィに見せた。


「ほら、完成したよ」

「ぬ…これが…」

「そう、マウスピース」


歯を抜かずに、歯を金色にしVARIAと文字を彫る唯一の方法。それはマウスピースだ。

レヴィの歯型を型取り、金色に色付けしたゴム製の液体を流し込む。金の色が中々出なくて調整が難しかったが、光沢感をプラスする為に混ぜた細かいラメが良い味を出している。

固まったら後は文字を彫るだけ。わざわざ版画用の単語板を買ってきて、その単語をなぞるように彫ったので綺麗にVARIAと入った。


「ぬ、ぬん…!なんと…凄い…!」

「サイズ確かめるから、黙って口開けて」


相変わらず綺麗な口内だと感心しつつ、上の歯列にグイッと嵌め込む。暗殺部隊だし激しく動くだろうから簡単に外れないようにピッタリより僅かに小さめに作った。ゴム製なので多少は伸び、その方が密着度が高まるからだ。

数秒で綺麗に嵌ったマウスピース。私はレヴィの口内から手を退け、手鏡を渡してやった。


「どう?サイズはピッタリじゃない?確認して」


起き上がったレヴィは鏡を見て、目を輝かせている。アレだ、メガネ少女がコンタクトにして「これが、私…?」みたいな図だ。この男はメガネ少女の様に可愛くはないし、むしろ気持ち悪いけど。


「せ、先生…」

「ん?」


鏡を膝上に置いたレヴィは、私に向かって満面の笑みを浮かべた。


「最高だ…!」


その口元からは今嵌めたばかりの金色のマウスピースがハッキリと見える。VARIAの文字も、「い」の発音をすればしっかりと確認出来る。自分で作っておきながらセンスの悪さに鳥肌が立つが、まぁレヴィが納得してるようなら良いだろう。


「そのマウスピース、出来る限り薄く作ってあるから一応24時間装着は可能。でも寝る時は外して洗浄液に6時間以上漬けることは守ってよ」

「承知した!」

「あとゴム製だからセラミック製に比べて強度も耐久性も低い。ちゃんと嵌められなくなったら寿命だから」

「そ、そうなのか…ではその時、また頼む!」

「あー…はいはい」


また来るのか、こいつ。とは思ったものの、綺麗な口内を拝めるなら、まぁ良いか。と思うことにした。


「感謝するぞ、先生!よし、早速帰ってボスに見てもらおう!」

「あ、ちょい待ち。おーい助手ちゃん」

「はい先生」


診察台から飛び降り帰ろうとするレヴィの首根っこを引っ掴み、助手ちゃんからもらった紙をレヴィに突きつける。


「診察代とマウスピース、洗浄液、その他諸々、全部合わせて1000万円になりまーす」

「いっ…?!」

「はいコレ請求書。マウスピースを金色にする為の特殊な着色料とラメ、これが超高かったんだよねー。口に入れても大丈夫なやつって中々無いんだよ」

「いっ、いっせ…?!」

「あ、ちなみに現金のみだから」


顔面蒼白のレヴィだが、口元だけは金色にキラキラと輝いている。私と助手ちゃんは顔を見合わせて、笑顔で言った。


「「毎度ありー!!」」



噂の闇歯医者さん




どうにかして全額キッチリ支払ってくれたレヴィは、トボトボと帰っていった。どうにかして1000万円払えるなんてヴァリアーはやはりとんでもない。

この1000万円で診療所内を少し綺麗に改装し、臨時ボーナスとして助手ちゃんと山分けし街で美味い料理と酒をたらふく食べた。それでもまだ沢山余ってるので堅実に貯金。

いやー良い金ヅルだったわー。まぁもう懲りて来ないだろうけど。そう思っていたのに。

1ヶ月後、マウスピースを全壊にしたレヴィが泣きながらやって来るんだから、こいつホントにバカなんだろうなぁと思いつつ。

「先生ェ!これを治してくれ!次は出来れば電撃にかなり強いタイプで頼む!!!」

「(電撃?)あー、じゃあ料金は2倍の2000万円ね」

「にっ…?!」

まぁ、バカは嫌いじゃあない、なんて、思ったり。


【おわり】
×