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『本当にいいのか』
『…仕方ないでしょう』
『だって』
『気にしないの。あんた達こそ前金を受け取ってんだからとっととずらかっていいんだよ』
『…シャルレ』
『ごめん、嘘嘘怒んないでよホント。でも、これが、これで、最後の任務だ』

「生きて会いましょう。…何時の日か」

 さあシャルレ。ゆっくりと息を吸って。吐いて。
 どきどきしている心臓と呼吸が落ち着いたら自分に与えられた役割と設定を思い返して。

 きらきらと光を反射し輝くイヤリングに白いドレス、それとかちりと嵌る指輪。全ての確認が終え、最後に黒のブレスレットをぎゅっと手首の上から握った。
 これから起こる悲劇であり喜劇の幕開けに丁度いい格好だなとぼんやりと思いながら大きな扉が開かれるのを待つ。

 ギィィとゆっくりと開かれる扉、輝かしくも醜い世界が私を嘲笑うように迎え出る。
 好奇に満ちた視線を一身に感じながら前へ、前へ。
 けれど強張る表情だって、彼の姿を見れば自然と和らいだ。


 ―――さようなら。


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