Diary

突然ユキが僕の部屋にカレンダーを持ち込んだ。
そもそも彼女は普段から遠慮をしているのか誰か特定の、僕が許可をしていても個人の部屋には近付かない。ユキの熱が引いて以来僕の部屋に来ることもなく、珍しいこともあるものだと半ば感動しながらそれを見届けると、ユキはよいしょと上の方の壁に引っ掛けようと苦戦していて。
高いところならば僕に任せればいいものを、と思いながらも何でも自分でしようと努力する彼女のこの姿は好ましい。

「ここで、いいですか?」
「わっ!」

ひょいと彼女の小さな手からカレンダーを受け取り上の方に止めると嬉しそうにユキは微笑んで「ありがとうございます」と述べた。
久々に間近に見る彼女は一見何も変わらないというのに日に日に愛しいと思う気持ちが募るのは不思議で仕方がない。

「どうしてカレンダーを今の時期に?」
「もういらないからって商店街の人にもらったんです」

あのスケジュール帳をくれたところですよと小声で話すとクスクスと楽しそうに笑う。例の皆に配ったスケジュール帳は、犬は皆で集まる部屋で落書きに使われ、千種はどうすればいいのかと悩みに悩みまだ渡した時の状態そのまま。ユキにも聞けば千種と同様何も書けずに活用法を探っているとのこと。
それでも僕の渡したものを大事にしてくれているという3人には微笑まずにはいられない。

その後ユキは背伸びをしながら犬からもらったというシールを4日ごとの日付に貼った。
何故パイナップルのシールなのかは後で彼を問い詰めましょうか。

「ここが骸さんの当番の日です。犬にも千種にもカレンダーにシールを貼りました。これでうっかり忘れがないですよね」
「分かりました。また月末にページを破る時は僕にちゃんと頼んでくださいね」
「…はい。その時はお願いしますね」

背伸びをする彼女を見るのはとても微笑ましいが怪我をされては困る。
それに上目遣いの君を見るのも、これはなかなか。




カレンダー貼り付け作業完了!犬にもお願いして商店街を走り回って余ったカレンダーをもらいに行くのはちょっと勇気がいったなあ…。パイナップルのシールを貼った時骸さんがちょっと引きつったような気がしたけど、嫌いだったらデザートも今度からパイナップルは止めておいた方がいいかな。
カレンダーもシールも、皆とお揃い。月末には皆のカレンダーを私が捲るんだ。あ、骸さんの部屋のは骸さんにお願いしないと怒られそうだからメモメモ。
私たちに確約された未来はないから。その覚悟はできている。明日死ぬかもしれないし、明後日に皆が捕まるかもしれないし、私が殺されるかもしれない。

それでも、それまではどうか彼らと一緒に過ごせますように。
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