Diary

ユキが風邪を引いた。
それは突然の出来事で、皆で朝食をとっているというのに肝心の食事を作ったユキがなかなか台所から現れなかったので不思議に思った犬が覗きにいったところ慌てた様子でユキを横抱きにしてやってきて発覚したのだった。

「…38度、5分。なかなか高熱ですね」
「ずびっ、すみません」

昨日は何ともなかった様子だというのにやはりこの時期は体調を崩しやすいのだろうか。
一番皆のいる部屋から近いということで骸の部屋へと運ばせ寝かしつけているものの、彼女はそのことに萎縮してしまい先程から謝罪の言葉しか出ていない。

身分証明のできるものも、何ひとつ持っていない彼女や自分たちは病院での治療を望めない。分かりきっていたしそれこそ病院なんてかかることもないだろうと思っていた骸だが彼女の弱った様子を見て、改めて自分の恋慕の相手は一般人であると知る。
少しでも力をこめて首を絞めれば。恨みを買った連中から報復の手が伸びてきたら…間違いなく彼女は生き残る術はないだろう。
それでも一緒に生きようと思ったのは全員の意向だ。彼女の幸せよりも自分たちの、自分の我侭だ。

「こんなとき、病院に連れていってあげれたらいいんですけどね」
「いいです、私薬も注射も嫌いなので」
「ですが」
「だからお願いですから」

きゅう、と柔らかいものを感じ何事かと彼女の手の先を辿れば自分の服の裾をしっかりと握り締める彼女がいて。

「私の事、捨てないでくださいね」

それが一番、怖いです。そう小さく呟いた彼女を愛おしいと。
服を握り締めた彼女の手を外し己の指を絡めると骸はユキの額に自分の額で小突く。

「む、」
「捨ててくれといわれても、捨ててあげませんから」

ゆっくり、おやすみ。
やがて寝息が聞こえたがユキの顔にはしっかりと笑みが刻まれていた。



熱が出たらしい。昨日の雨にやられちゃったのかなあ…。
ご飯を作り終えたところまでは覚えていたんだけど、気が付けば骸さんの部屋に運んでもらっていた。
身体の弱い自分が不甲斐ない。彼らの足を引っ張るようじゃ駄目だ。
早く元気になって、皆にまたおいしいご飯をつくらなきゃ。だって犬のご飯なんて最悪だし骸さんって意外と漢の料理だから結構悲惨だし。言ったら怒られるけど。
早く治さなきゃ。皆に、ありがとうって言わなきゃ。ごめんね、皆。ありがとう。

皆に会えて、私本当に良かったって思ってるよ。
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