Diary

「残念です。ふかふかの毛布で寝れたら幸せなのに」

昨日のうちに洗濯物を干しておけばよかったと嘆くユキの趣味は昼寝だということは全員が知っている事実だった。
というよりは何も無いこの黒曜ヘルシーランドにおける彼女のやれることと言えば大分と限られており、犬とかくれんぼをしては迷子になったり、千種の後ろを勝手に追いかけて迷子になってやはり骸に見つけてもらったりというのが最近の常になっていたのだが
そういえば最近彼女は迷わなくなったことに気付いた。

最初の方こそ若干面倒だったものの泣きべそをかいた彼女が必死に縋ってくる様子はたまらなく可愛らしかったのだがそんなことを口にすることも出来るはずがなく。


「天気ばかりは誰も、読めませんからねえ」
「昨日起こしてくれたらよかったのに」

恨みがましく自分を見上げるユキの頭を撫でるとほんの少しだけ彼女が己の手のひらに頭をすり寄せた。まるで小動物だ。


「皆疲れてるだろうから、ふかふかなお布団で寝て欲しいのに」
「おやおや、君のお昼寝だけのためじゃなかったんですね」
「…違うもん」

最近は前よりも断然、心の内を明かしてくれているような気もしないでもない。
これほどまでに会話が続いたことだってそうなかっただろう。何がきっかけなのかよくわかってはいないが、それでも彼女が自分たちを想って何かを行動しようとしている様子が見て取れて笑みを抑えることができない。


「安心しなさいユキ」
「はい?」
「午後からは晴れますよ」

骸の言葉が聞こえたかのようにしとしとと降り注いでいた雨が止み、雲の切れ間から日が差し込むとユキは目を輝かせてはしゃいだ。


「骸さん、太陽みたい」
「おやおや、僕が太陽ですか」

私たちを、照らしてくれています。
その言葉ひとつで骸の内に巣食った闇が少しずつ照らされていることなどユキは知らない。彼女こそ、自分たちの、自分の、太陽だというのに。


―――暖かな、僕の太陽。もう暫く、僕の傍で。



骸さんはやっぱり太陽だった。
ん?あれ、どちらかというと天気予報士なのかな?今日は夜まで降水確率100%だったんだけど骸さんが「晴れますよ」って言った瞬間、雨が止んじゃった。骸さんは確か幻術を使うのが得意だって聞いていたんだけど、あれは幻術じゃなくて本物の太陽だったからやっぱり太陽なのかな。だって、骸さんとお話をするとどうしてだか心がぽかぽかするんだ。
こんなこと話したら頭悪いですねって笑われそうだから絶対言わないけど。

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