Diary

ユキが最近、ちらちらと此方を見てきていることにもちろん気がついていた。
紛れもない一般人である彼女と共に行動をし始めてからもう幾年と経過している。出会いは単純、あるマフィアを殲滅したその時ちょうど実験台だか身代金目当てだか何らかの理由で連れ去れ監禁されていた哀れな子供だったというわけだ。
帰る親元もなければ頼れるところもなければ、一人で生きていく力も当然持ち合わせていない無力な子供。

『一緒に来ますか?』

震えることもなく瞳に強い意志を感じたユキに対してそう声をかけたのは、9割が同情であることは否定しない。それでも骸の伸ばした手を一生懸命に掴んだこの少女の事を守らなくてはと幼い心に刻まれたことを今でも覚えている。

そんな彼女も、時を経てば華憐な少女へと変貌していた。元々整った顔立ちをしていた子供だったので予想通りといえば予想通りではあったが。
未だに骸たち以外には頑なに心を開こうとしないことも、最初はどうにかしようと努力はしたものだが結局幼少期に甘やかしてしまったのが悪かったのだろうと途中で誰もが投げ出してしまった。
だけど、今となってはこれで良かったのではないかと骸は思っている。自分達が離別を経験するのは、いつか必ずやって来る死別か、自分たちが彼女を捨てるか、はたまたその逆か。けれど、彼らの過ごしてきた長い平穏の日々が後者二つを完全に有り得ないものとして消してしまった。簡単なことで揺るぎ得るものではなくなったのだ。

―――とは、言いたいものの。

「どうしました、ユキ?」
「いえ、何も」

ないです、と消え入りそうな声でそのまま彼女は自室へと篭ってしまった。
何かしてしまったのかと不安に思ったもののそれでもユキは骸がこの前彼女へと差し出したスケジュール帳を握り締めているのを見逃す事も無かったので、それは違うのかと即座に否定した。
もし何か用事があるならまた声をかけてくるに違いない。それに、彼女のあの少し不安そうな顔もなかなか見ものだ。

「思春期、ですかねえ」
「骸さんおとうさんみたいらびょん」
「…クフフ」

ユキを見る自分の目がどういったものか、分からないのはきっと犬だけだろう。
頬を引っ張りながら―これを俗に八つ当たりという―骸はそれでもユキの消えた扉を不思議そうに見つめたのだった。

彼女の行動ひとつに、これだけ気にかけてしまうのもきっとユキはまだ知らない。






結局三日坊主だった。さぼったわけじゃなくて本当に何もなくて書くことが無かったんだ。だって私は毎日そんなに変わったことをしているわけでもないから。いつも一緒。それだけ。
あ、でもこの前私のおでこに残った痕(骸さんにデコピンされたやつ)を笑った犬にはちゃんとやり返ししておいたからすっきりしている。

今日も特にやることもなかったけど、買出し係だったからチョコレートを買っておいた。骸さんは最近何か考え事が多いのか、チョコレートを食べる回数が増えているからこっそり補充。
ところで食器棚の奥にしまいこんであるチョコレート、骸さんは隠しているつもりなのだろうか。犬は鼻がいいし、私は食器を片付けるたびに甘い匂いがして、ばればれだ。別にかまわないけどお皿も何となくチョコレートの匂いがしているような気がしている。

ああ、でもそろそろ聞かなくちゃ。どうしよう。私、骸さんとちゃんと目を見て話せるかな…。
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