Diary

黒曜ヘルシーランドは人数を増やし、今日も賑やかな日々を送っている。
明るくなったことは素直に嬉しいことだとユキは思う。最初は作るご飯の量だったり洗濯だったりと色々困ることはあったのだけどやっぱり皆が楽しく過ごしている様子を見るだけで嬉しくなるのだ。

「ユキ、ちょっと良いですか」
「?はい」

クロームと話をして、フランにはおやつを用意することを約束して、M・Mには晩ごはんのあとにデザートをお願いされて。ああ、今日も忙しく、やりがいのある仕事だらけだと建物の中を走り回っている最中だった。骸に呼びかけられたのは。
ぴたりと足を止め、何事かと今度は骸の方へと駆け寄った。そういえば最近はこうやって人数が増えてしまったので彼と2人で話すことは久しぶりだなあとユキは骸を見上げながら思う。あれから彼は少し変わったかのように感じている。具体的に言えば骸の誕生日を犬・千種と3人で祝ってからだろうか。どことなく柔らかいというか、甘ったるいというか。何か良いことがあったのかな?とも思ったのだが勘違いなら恥ずかしい。そう思ったが故にユキは骸に聞いたことはないのだ。
だけど、やっぱり。いつもと比べて彼の表情が穏やかな気がするのだ。

「わっ!?」

あともう少し、というところで自分の靴に蹴躓きバランスを崩す。踏ん張りが足らず前のめりに倒れそうになり、反射的に目を瞑ったのだがその後に来るはずの痛みも衝撃も何もない。

「君は、いつもそそっかしい」

クフフと笑い声が降ってくる。そして両脇の下に何やら食い込むもの。恐々と目を開けると自分の視界は骸の服の柄で埋め尽くされている。どうやら転ぶ寸前、骸によって抱き留められたらしい。

恥ずかしい。
穴があったら入りたい。

ジワジワと恥ずかしさから体温が上がっていくのを感じながら「ごめんなさい」と蚊の鳴くような小さな声で謝罪する。どうしていつも自分はこうなのだろう。犬にはいつもトロいとなじられるがここで披露するなんて予想外のことで。

「……骸、さん?」

ところで、いつになったら離してもらえるのだろう。
ずっと抱きしめられているのも何だか恥ずかしい。けれど、ほんの少し嬉しいと思ってしまうのも確かなのだ。
「…もう少し」静かな声。それでいて有無を言わさぬ声だ。それだけでユキの身体はまるで金縛りにあったかのように固まってしまう。だけど怖くはなくて。そうじゃなく、ただ、…ただ、恥ずかしくて。でもこのまま一緒に居たいと思ったのも確かなことで。

「はい、」

今日も黒曜センターは誰かが幻術で遊びまわったりそれを諫める声が響く。何かの破損する音だってする。誰かが怒る声が聞こえる。そう、いつものように騒がしく、賑やかだ。
…そんな裏側で、2人の世界はただ静かに、甘やかしく。
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