ヴァリアーはとてつもなく実力主義だ。雑魚にはそれなりの、強い人間にはそれなりの任務が与えられる。
 つまり大体その任務と報酬額を見ていれば上の人間が自分をどういうレベルだと見積もっているか分かるというわけで。今日も今日とてベル先輩から放り投げられた任務と達成額を確認してこんなものかと溜息をつかずにはいられない。

 そりゃね、鍛えたところで1日や2日で強くなるような人間はいないよ。分かってる。ベル先輩だって小さい頃からなかなかフクザツな家庭環境だったっていうし、スクアーロ先輩なんて手斬ってんじゃん。私そんな覚悟は流石にないし。無理だし。殺すのは好きだけど痛いのは嫌だし。


「あ、良かったじゃないですかCランク」
「うるさい!」

 ひょいと覗き込まれてランクを当てられたことに私は思い切り後ろから声をかけてきた人間を睨みつけた。わかってる。Cランクなんて最低ライン。正直こんなのちょっとしたフリーの暗殺者に依頼したほうが格安で受けてくれそうな気がするってのも自分でもよーーーーく分かってる。

 この無表情で私を見下ろしている蛙野郎は私とは正反対の実力者だ。
 私のほうが長い間ヴァリアーにいるのにこいつはあの六道骸の弟子だとか何だとかだし、ヴァリアーの幹部が総出で迎えに行くほどの類稀な術士、であるらしい。私は幻術とか全然わかんないけど。


「えー、夜もしかしてランク低い任務なの気にしてるんですかー」
「黙って」
「図星って感じの顔してますねー、まあそれぐらいがミーとしても丁度いいって言うか―」

 ”ちょうどいい。”
 フランにだってきっとこれぐらいが私にお似合いの任務だって思われていることに私はショックを隠しきれない。いや、あの…分かってたけどさ。あとから入ってきたペーペーにもそう思われるなんてもうヴァリアーの幹部候補として私結構終わってない…?あれ、所属している意味ある…?メンタルはそれほど強いとは思ってもいなかったけど何か喧嘩ふっかける気もなければベル先輩に抗議しに行く気力もすっかり失せてしまった。あーあ、せめてこの任務ぐらいきっちり終わらせてBランク…って見据える先がそんなんじゃ駄目か。駄目ですよねアハハのハ。

「まーでも夜がそこまで落ち込んでるのは予想外だったので教えてあげますー」
「…フラン?」
「ベル先輩に夜の任務を一番最低ランクにお願いしているのはミーですからー」
「……え、」

 今何て言った。今、フランは何って言った。最低ランクの任務が渡るようにむしろ頼んでいたですって?何でそんなことをこのフランがしているというのか。それって最大の侮辱じゃないのか。
 元々気は長い方じゃない。
 イラッとしてこいつにナイフ1本でもぶん投げてやらないと気がすまないと懐に手を伸ばしたその瞬間、気が付けばフランは私の目の前までやって来ている。

 「夜、」頬を触れるその手は私の手よりも随分大きくかさついている。頭の蛙の所為で随分と背が高いように錯覚してしまい思わず後ろに下がろうとするもいつの間にか腰に回された手がそれを阻む。


「ちょ、近」
「夜のきれいな顔、傷付いてほしくありませんしー」

 「だからこれからも君はCランクですよー」耳元で囁かれた声に、私はお手上げだとガックリ項垂れた。あーもー、やだやだ。だからフランは好きで、嫌いなんだ。

(フランにいつの間にか守られてた先輩)
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