久し振りにサッカー遠征があってノートをいつものように夜に借りに行った。世話好きな夜のノートは誰にでも貸せるように分かりやすく要点をまとめ、テスト前にはコピーする人間がいると言われても納得がいく。実際そんなことをしているからこそテストの点数もいいんだろう。俺も借りてる1人だからそれはよく分かる。
今回も悪いけど、と前置きして借りようと夜に話しかけたら少し待ってね、と言ったあとにパラパラと自分のノートを捲り何かを確認した後に俺に渡す。受け取りながら何を見たのか聞くと落書きがあるか調べたらしい。真面目な夜もそんなことをするのか、と思いながら自分の席でノートを移す。
郭
ふと片隅に俺の名前が書いてあるのに気付いた。気付いてしまった。
見なかった振りをしても何度も何度もそのページまで繰り返し見てしまう。自分の名前が出て来るような内容である科目じゃない。それって、つまりは。…俺のことをほんの少し、片時でも考えていたんだと自惚れてもいいんだよね。ああもしかして、きっと鋭い君のことだから俺の気持ちも気付いてたかもしれない。でもここは‥
「夜!」
自惚れでもいい、自信過剰と言われてもいい。だけど、言うのは自分から。先手必勝ってね。
そんな俺の考えている事なんて気付くはずもなく、夜はこちらを振り返りなあに?と聞いてきた。それがまた嬉しそうな表情だったなんて言ったら一馬や結人にも笑われてしまうかもしれないけど。
俺は、俺の名前入りノートに少しだけ勇気をわけてもらう事にし、今日の帰り暇かどうか尋ねた。