「ぃだっ!」
何で。何でどうしてこうなった。
私はさっきまで雲雀さんと一緒に社交会へと赴き任務遂行の為にターゲットへ近付いて情報を獲得すべく奮闘していたはずなのだ。
何しろ雲雀恭弥という人間、私は噂でしか聞いたこともないけど群れれば殺されるし使えない人間でもあのトンファーでぶん殴ると言われている。そんな恐ろしい任務に何でボスは私を選んだのかと思ったけど悲しきかな情報員である私に選択権はない。というよりは私はそれしか能がないからと分かっているけどそれがどうして雲雀さんなのかということぐらいは後から聞かせてもらおうと決意はしていたのだ。
だからこうやって頑張ってきたのに。
有益な情報もがっつり掴んで女性客の視線から逃げるように会場の隅で酒を呑んでいた雲雀さんに報告すれば「よくやったね」って褒めてくれてあ、意外とこの人いい人じゃないかと思っていたのに。噂なんて全然違うじゃないかと思っていたのに。
情報を得るためにお酒を結構口にした記憶はある。相手を酔わせるためにはもちろん自分だってそうしなければならないのは当然のことで仕方はないとは分かっているしこればかりは自分の体質を恨むしかない。おかげさまで帰る頃には既に足元もおぼつかず、へろへろ状態。でもボスに報告するまでは眠ってられないと神経を尖らせていたのにボンゴレの車内、隣に座っていた雲雀さんが起こしてくれるからと言ってくれたからお言葉に甘えた。
…それがダメだったのか。
「っひぅ!」
首筋をなぞる熱くぬるりとしたものにまるで私じゃない悲鳴があがる。
ぼんやりとしながら目を開いたところいつの間にか私はどこかへ運ばれていたらしい。ハッとした時には私の身体はふかふかのベッドに投げ捨てられていたし、私の上には当然のように雲雀さんが跨っているわけで流石の私もこれは不味いと判断し逃げようとしたのにそんなことすら先に読めていたのか両手をまとめあげられ彼の腕1本でぐっと抑えつけられていた。
私を見下ろす雲雀さんは先程までの彼とはまるで別人だった。冷たい視線は私を見据え、逸らすことを良しとはしない。
「ひ、ばりさん…?」
「君のこと、ずっと見ていたんだ」
「…っん!」
いつの間にか肌蹴られていた藤色のドレスに彼の手の侵入を拒む力はない。
暴れようとしてもピクリとも動くことがないのは私がまだ酒に酔ったままで力が出ないのか、はたまた雲雀さんが強すぎるのか。
言われた内容に理解など出来るはずもなく、かと言ってこれ以上の行動を許すこともなくいやいやと頭を振るのに彼は楽しげに目を細めるだけでその行為を止める様子は一切見られなかった。
つつつと素肌を滑るかさついた大きな手。
指でなぞられているだけだというのにアルコールを摂取した私の身体は自分でも嫌になるぐらい敏感で、せめて声を漏らすまいと…いつの間にか連れてこられたこの部屋はそういうことを目的とする場所だとすぐに分かったけど唇を噛み締めた。
まさかそれが彼のスイッチに火をつけるとはつゆ知らず。
「あんな群れの中、本当は嫌だったんだけどね」
「…っぁ、やっ、」
「君を連れてくるならってことで飲んだんだ。頑張ったと思うよ我ながら」
だからいいよね。
舌舐めずりする雲雀さんは最早獰猛な獣。いつの間にかスカートもたくし上げられ自由奔放に動き回るその手を止める術を私は持っていなかった。
「すきだよ」初めての告白と、キスとが同時なんて。
覆いかぶさる大きな身体に、押し寄せる快感と激しすぎる刺激に、無力な私はただ彼の真っ直ぐであり歪んだ愛に翻弄され声をあげるしかなかったのだ。