緊急速報の音は本当にどうにかならないかと常々思っている。不安を駆り立てられるあの音に、何でもない小さなニュースであっても心臓が飛び跳ねるような思いをするのは勘弁だ。だからと言ってその機能自身を切るのは日本にいる以上やっぱり不安というか、なんというか。いつだって情報こそが力になる。だからこそ、この嫌な音と付き合わなければならないのだけど。


『う゛お゛ぉい!大丈夫かぁ!?無事かぁ!』
「……はぁ?」

 その速報の後、数秒後。
 今度は職場から渡された携帯が鳴り響く。おいおい誰だよボスの声を私の着うたに変更したの…いや間違いなくレヴィか嫌がらせを込めてベルに決まってるんだけどさ。『かっ消す!かっ消す!』とボスの声で聞こえてくる携帯の方が何十倍も怖いに決まってるじゃないですか。

 恐る恐る電話を取ると着うたの何倍もの大きな声で聞こえるスクアーロの声。一昨日イタリアを発って以来だけど相変わらずの声量。既に慣れた手つきで音量を最小にしてイヤホンに繋ぐとまだぎゃいぎゃいと騒いだ声。


『震度3だっつってんじゃねぇかあ!大丈夫なのかぁ!』
「んー大丈夫大丈夫。誰も逃げてな『そういう場合じゃねえ!早く逃げ道を確保しろぉ!』…はいはい」

 ガラリと窓を開け、逃げ場を確保。
 靴はまあその辺に転がってるし何かあればここから飛び降りればいい。そういう意味ではこの身体能力、本当に鍛えてきてよかったなあなんて思う。

 ここは日本、地震の多い島国だ。

 当然生まれも育ちも日本の私は別に少しの揺れぐらいどうってことは無いんだけど以前皆で日本に来た時に震度5の大きな地震を皆で受けて以来彼らは地震を恐れるようになってしまったのだ。ビックリするよね、剣とかナイフとかで人を殺す怖い顔立ちの人間たちが天災を怖がるなん『聞こえてんぞぉ!』えっ、嘘ごめんなさい。
 とまあ兎にも角にもそれ以来恋人であるスクアーロは日本の速報に関してやたら詳しくなってしまい、ヴァリアー内専用の通信機器全てに速報が入るようになりこうして小さな速報一つで私を気にかけ電話をくれているという事だった。


「あのね、喋ってられるぐらい全然余裕があるから」
『う゛お゛ぉい良いから早く逃げろぉ!でも電話は切るんじゃねーぞぉ!』
「……ワガママめ」

 だけども心配されて嬉しくないわけがない。
 とりあえず誰も逃げてはいないし周りも至っていつも通りなんだけど可愛い彼の為にちょっと演技でもしておきましょうか。


「じゃー逃げるねスクアーロ」
『そうだぁ!早く任務も終わらせてついでに早くイタリアに帰ってこい!』
「はぁい」

 こんな小さなこと一つで頬が緩む私もどうかと思うけど。
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