「う゛お゛ぉい!」

 何なんだ全くもう。
 朝から部屋のドアをバーンと開けてきたはいいけど完全に風呂上りで髪の毛を乾かしている最中だった。ブオーンなんて音よりも遥かに大きいスクアーロの声。隣ベルなんだから下手に起こして怒られても私知らないからね。


「何よースクアーロ朝っぱらからお元気ね」
「なあコレ何だと思う」
「えーちょっと待ってよ今髪の毛乾かしてるさいちゅ……」

 モフ。

 もふもふ。
 この前ヘアーケアが出来るっていうちょっとお高めのドライヤーを買ったからそれの具合を今日こそは堪能するんだと思っていたのにどうしてだか目の前に差し出されたのはもふもふの何か。何だこれは。ドライヤーを消して思わずガシッと掴んだら「痛ェじゃねえか」とチョップを食らわされた。


「スクアーロあんたそういうしゅ「捌くぞてめえ」……すいません」

 何がどうなってそうなってんだ。鏡越しに私に声をかけてきたスクアーロを見ると何とそのモフモフ、まさかのスクアーロのお尻の方から現れているじゃありませんか。しかも生きているみたいにパタパタと動いては私のほっぺをビシビシとなぶってくる。ちょっとくすぐったいしちょっと生暖かい。え、これ生きてんの。意志、あるの。
 尻尾だ。けど…何で?もう一度触ろうとしたら怒られたし。何だそれ。びっくりして振り向くともっと驚くべきものがそこにはあった。


「……スクアーロあんたそうい「違うつってんだろうがぁ゛!」…すいません」

 いやいやアンタそれどういうことなの、マジで。
 綺麗な銀髪の彼に起こった異変はどうやら同じ色のモフモフした尻尾だけではなかった。頭の、上に。頭の上に、ピコピコとした、ソレ。


「…猫耳にしてはちょっと大きいしピンとしているよね」

 ピコピコ。
 それはスクアーロの感情を如実に表していて、今はちょっとお怒りモードなんだろうなと思うぐらい動きが激しい。猫の尻尾にしては大分とご立派だし、耳だって大きいし。犬に近い気もするけど何だか違うような気もするし。あ、狼?そうなのかも。一番それがシックリくる気がする。私天才じゃん。


「狼男になったのスクアーロ」
「起きたらこうなってた」

 あまりにも可愛い。
 だってもうアンタ幾つよ。私だって年齢いいたくないけど確実にこの男の方が年上だ。そんないい年した男が狼尻尾をブンブンと、そして狼の耳をピコピコさせてるだなんて本当ちょっと写真撮って皆に売りつけたいから是非ちょっと撮らせて欲しい。
 それにしてもマーモンの幻術じゃないよね?と思いたくなるほど非現実的なモノだ。思わず掴みかかろうとしたら馬鹿野郎と怒られ腕を引っつかまれたかと思うとペイッとベッドへと投げられた。思いっきり背中から落ちる私。その後、のしかかってくる狼さん。


「いやいや何してんのアンタ」
「何って…ナニだろ」
「いやいや可笑しいから!それよりもっと考えるべきことあったでしょうが!」

 何で朝っぱらから私はこの狼男扮した…いや違うな狼の耳と尻尾を持ったこの男に押し倒されなくてはならないのだ。勘違いしないでほしいが私はスクアーロとそういう関係ではない。良い仲間ではあると思っているけどこれは一体、何事だ。
 ギッと睨みつけるも相手の男の様子がいつもと違っていることにようやく気付く。私に対して向けたことのない眼。情欲の目。灰色の鋭い目はいつも標的をどう殺そうかと確かに格好良いとは任務を一緒にこなしながら思っていたけどまさかその目が私に向けられる日がくるだなんて思うわけないじゃないですか。


「セックスしてえ」
「ちょっとまって3分でデリバリー呼んであげるからちょっと待っ「待てねぇ」」

 やばい食べられる。
 何故か狼男になった彼の発情期に付き合わされるだんて思ってもみないじゃないですか。いつのまにか臨戦モードに入った彼から逃れられる気がまったくしない。


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