「着いたら起こせ」
「はーい、おやすみなさい」

 ここのところ任務が忙しく、全員が疲弊していた。どれだけ大変かと聞かれればあの戦闘狂のベルがもう殺しも飽きたとボヤく程度に、だ。任務自体はそう難しくもないのに、ただ量が膨大である。なんというか最近は依頼が多すぎて人手不足を訴えたい。もしくは依頼料金アップだ。
 疲れているのは幹部以下精鋭部隊だけじゃない。
 もちろんと言うべきなのかボスであるXANXUSへの依頼は心身的に負担が大きすぎる。代わりのいない人なので、西から東へ移動させるのは勘弁して欲しいんだけど何しろ本人の性格上、自身への指名依頼は基本的に断らない。あまりにもくだらない内容だったら逆ギレも有り得るんだけど、残念ながら本人的には満足な質の依頼が舞い込んでいるらしくすべてを受けて現在一ヶ月ほどヴァリアー邸へと戻ってはいないのだった。
 あ、ついてきた私もそうなんだけどね。

「……そう言えば、…ってもう寝てるか」

 確認しておきたいことがあったから声をかけたけれどすでにXANXUSは目を瞑り、私の肩に頭を預けている。そのまま話せば何かしらの返答はあるだろうけどそんなに急ぎでもない。起きてから聞けばいいことだ。
 貸切のジェットは移動の音も小さく、ワインの入ったカップが時折中身を少し揺れる程度。私だって目を瞑ればすぐに眠ってしまいそうな心地良さがあった。今は起こせよって言う指令があるので寝ることはないけれど。
 音楽なんかはかかっていない。この空間は至って静かなものだった。

 ふぅ、とちょっとだけ私も力を抜き、XANXUSの方へ頭を寄せる。いつもいい匂いがするんだけど何の香水を使っているんだろう…。
 大きな獣が、小さな人間に擦り寄ってる。そんな姿にも見えなくはない。私とXANXUSの体格差ってのは結構なもので、特にXANXUSはガッシリしてるし日本人の私は平均値だけどイタリアの男達の中に混じっていると子供のように思われることも少なくはない。だから、私の肩に頭を乗せるのも本当は逆に辛いんじゃないかと思うけど……なんだろう、甘えてくれているような気がしてちょっと嬉しくなってしまう。恋人なので当然なのですが! どんどん甘えて欲しい、と言うのは私のわがままだ。思っていたよりも彼が可愛くて毎日惚れ直しているんだけどさすがにそれを言ったら拗ねられそうなので言ってはいない。我ながら賢い選択だと思ってる。

「いつも、お疲れさま」

 きっと当然だろ、とかお前ほど脆弱じゃねえ、とか言われちゃうのが目に見えてわかるけど言わずにはいられない。
 首をちょっと伸ばしてXANXUSのコメカミあたりにちゅっと唇を寄せると私も静かに目を瞑った。XANXUSが少し強めに手を握ってきたのには、もちろん強くぎゅっと握り返して。

 たまにはこんな日が、あってもいい。
(まどろみ)

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