「今日は七夕です雲雀さん!」
「…君はいつも煩いけど今日は2割増しだね」
「まあなんて失礼な!でもいいです、これ書いてください!」

 そんな事を言われたって私はめげませんから。ハイッ!と勢いよく突き出すと殆ど反射のように雲雀さんはそれらを受け取り「何これ」と呟いた。
 あれれ、おかしいな。普通に幼稚園、小学校と言っていたのであればきっと避けることの出来ない行事だとは思っていたんだけど。
 あ、もしかして雲雀さん友達いないからって不登こ「今君失礼なこと考えてただろ」……ごめんなさい。


「で、何書けばいいの、これ」
「七夕ですので何でも!風紀委員には皆書いてもらいましたよ」

 あとは雲雀さんだけなのです。
 色とりどりの短冊に汚い字で彼女ができますようにというマセたものからテストでいい点をとれますように、風紀委員の制服が変わりますように……ってこれ多分後で特定されて怒られるに違いない。ご愁傷様。とまあそんな感じで皆のを集めたし、せっかくだから応接室に飾ろうと思ったわけですよ。一部は雲雀さんへの意見書のようにもなっているし気分次第で取り入れられたらいいなっていう私の考え付き。流石だね!えらいね私!
 ふぅん、と雲雀さんはそれに納得してくれたのか黒のマジックを使って風紀と二文字。そのブレなさ、素敵です。


「そういえば七夕ってどんな話か知ってるの」
「1年に1回会えるお話ですよ。その分頑張るお話です」
「自業自得だね。サボった奴が悪いんだ」
「まあ…そりゃそうですけど」

 …ごもっともです。元々は働き者の2人が出会ったことによりぐうたらになったっていうお話だったような気がする。でもそんなお話の内容よりも7月7日は祈り、願うもの。そういう行事であるというイベント知識だけが先行しているわけだ。


「君は織姫になりたいわけ?」
「…別に、お姫様にはなりたいわけじゃないですよ。それに1年に1回なんて寂しすぎますし」
「僕ならもっと会ってあげるけど」
「!」

 ボンッと顔が赤くなったことは自覚した。わざとだ。絶対にわざとだ。
 なにか言い返してやりたいとは思いつつも悲しきかな欲望に素直すぎる私のこと。


「……彦星より雲雀さんの方がいいです」

 当然だろと笑いながら私に触れる彼に、そもそも敵うわけがなかったのです。
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