「テスト何点だった」
「56」
「雑魚」
「…爆豪くんは」
「98」
「さっすがあ」

 3年生に入ってのテスト結果というものは誰しも内申点に反映されたりするものでピリピリするのが当然だ。実際うちのクラスでもテストの点数が思ったように取れていなかった子とかは般若みたいな顔してたし大変だよねえ。私といえばまあ何も気にしなさすぎて先生に小突かれ、大体お前は将来について考えなさすぎるんだとネチネチお説教食らったんだけどそれは割愛するとして。
 多分爆豪くんがこうやってたまに私と一緒に帰る時って何も考えたくない時なんだろうなと判断している。いつもは男の友達と仲良く帰ってんのにわざわざ隣のクラスまで迎えに来るってことはきっとそういうこと。家、隣だし全然良いんだけどね。友達が爆豪くんにすごまれて怯えてたけど。

「テメエ高校は」
「んー?まあ一応自分の行ける範囲内で頑張るって感じ」
「相変わらず腑抜けてんな」

 ゆったり、ゆっくりのんびり歩く私達に声をかけるような勇者は誰もいない。
爆豪くんは例の事件を受けてからちょっぴり変わった。柔らかくなった?いや全然柔らかいとかじゃないけど敢えて言葉にするとそんな感じ。
 昔から緑谷くんに対してやけに厳しかったのは覚えてるけど今はそれもないって聞いたしちょっとは大人になったってことなのかな?詳細は聞いてないから知らないけどさ。まあそれも結局どうなったのか知らず私達は学生最後のテストを終えたというわけだ。あとは通知表次第、先生様次第で、その武器をもって高校受験に挑む。

 確か爆豪くんの志望校は雄英だって聞いてる。すごいよね、隣のクラスなのに情報筒抜け。めちゃくちゃ難しいって言われてるしうちのクラスの秀才君ですら難しいって言われて受験することすら諦めているようなレベル。まあ性格には難有りだけどあの超難関校も彼なら受かるんじゃないかな、なあんて私は思ってんだけどもちろん本人もそう信じているに違いない。直接褒めやしないけどそこが爆豪くんのすごいところなのだ。何度も言うけど性格は試験に反映されないだろうしね。私は間違いなくそんなところに受かるほどの勉強をしてきた訳でもないしヒーローを目指しているわけでもないのでその辺り実はとても尊敬している。

「あーってことは爆豪くんとこうやって帰るのもあとちょっとだね。そう考えると寂しいなあ」
「本当にそう思ってんかよ」
「ほんとほんと。爆豪くんと居たら何も考えなくていいしすっごい気楽だし…ぁいだっ」

 グワシッと隣を歩いていた爆豪くんが不意に私の視界を塞ぐ。何だ、何事だ。私の頭をバスケットボールと勘違いしているのかと言いたくなるぐらい強く握られヒエエと命乞いを開始する。実はご機嫌斜めの日だったのか。さっきまでどっちかっていうと上機嫌だと思っていたのにあいだだだ。
 流石に個性を使われることはないだろうけど真面目に痛い。
 ぺちぺちと爆豪くんの手を叩いて離してもらうと彼は相変わらず不機嫌そうな顔をしているし今日はもう修復可能と見て内心降参ポーズ。その眉間の皺、癖になるからやめておいたほうがいいと思うよマジで。あんた結構綺麗な顔してるのにさ。

「何も考えてねえつったな」
「え、うんそうだけど。爆豪くんも何も考えたくないから私と一緒に居るんじゃないの」

 ぞわり、ぞわり。睨まれてる。怒鳴られることはないけど睨まれている。訳も分からなかったからとりあえず見つめ返してみたけど私の質問に対して答える気はさらさらないらしい。めんどくせと大きな声で言ったのは喧嘩売ってるだと思っていいよね爆豪勝己よ。

「…お前は、」
「ん?」
「……やっぱいい。テメエまじで面倒臭え」
「はあ?ちょっと意味わかんないんですけど」
「トロいし鈍いし良いとこねえっつてんだボケ」
「ひどすぎ笑う」
「笑ってんじゃねえ」

 さっさと歩き出した爆豪くんの考えていることは相変わらずさっぱりわからない。相変わらず愚痴もすごいし。
でも爆豪くんが少し明るく感じたのが気になって明日も一緒に帰ろうねと伝えてみたら頷くことはなかったけど否定されることもなかった。きっと私は明日も放課後迎えに来られて、一緒にこの人と帰るのだと思う。明日は怒られないといいなあ。
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