普段通りの声色で、様子で、声量で。
「好きだよ、ラッセル。」だ、なんて。お前はいつも平然というってのに。俺にはそれがどーしても、出来ない。
「やっぱりさ。愛の言葉なんてそうそう吐けるもんじゃねーのな。」
左手で珈琲の入ったカップを持つ。黒いそれに自分が映った。
「そうかなぁ?俺は結構言うけど?」
「ペチュニアに?」
「そう。」
いつの間にやら飲み終えたカップを前にしてハンディは、照れくさそうに笑った。
「今日も可愛いね。とか、優しいね。とか。」
「それって、好きとは言ってなくね?」
「本人を前にしたら言うよ。」
そう言ってよいしょと、立ち上がられる。この後、デートだから。とだけ言ってスタスタとペチュニアの家の方向へ言ってしまった。
「会計俺持ちですか。」
仕方ないか、と納得し珈琲を飲み終えるとペチュニアの悲鳴が聞こえて爆発音がした。
「激しいデートだとこ。」
「ラッセル〜!好きだよー!」
「あぁ、はいはい。」
適当に流してその場をやり過ごす。俺はその言葉の深いところは知りたくない。もしかしたら表面上かもしれないし、挨拶かもしれない。そんな言葉にいちいち耳を傾けてる暇はない。
「ラッセルは、何ていうかさ。」
「なんだよ。」
「いつも溺れそうだよね。」
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