大学の講義を終え、帰路につく。
 道中、遊歩道がある大きな公園を横切るのだがそこは隠れた桜の名所だ。
 朝は遅刻ぎりぎりだった為駆け足で横切ってしまったがそれでも桜が綺麗に咲き誇っているのは視界の端で見えていた。
 今日はバイトは休みだ。退治屋の仕事も恐らく無いだろうし、家に帰る前に少し花見でもしていこうかと沢田はゆっくりとした足取りで公園へと入っていった。
 一年前までは毎日のように人外退治で夜の街を駆けずり回っていたが、今やこの街は害をなす人外が現れる事は少なくなり平和と言っても良い程だ。
 僅か一年でここまで劇的に変わったのは沢田の友人である二人の力が大きい。吸血鬼である友人、獄寺と雲雀の。

 獄寺と雲雀とは高校の時のクラスメイトだった。目を引く程整った容姿をした二人は殆どの時間を一緒に行動しており、その容姿も言動もどこか普通とはかけ離れたものを感じさせたが沢田を含め周りの人間は皆彼らを只の男子高生だと思っていた。
 けれど実際は違っていた。
 獄寺は最強の人外と云われる『始祖』で、雲雀はその始祖である獄寺によって吸血鬼となった元人間の『なりそこない』だった。
 その事を知ったのは高校一年のある日の夜の事だった。そこで雲雀は獄寺の血を飲み同じ始祖という存在になり、そして二人は姿を消した。
 それから月日が経ち大学生となった春、沢田は彼らと再び再会したのだ。
 思わず見惚れてしまうくらい美しく成長した姿となっていた彼らは当然の如く大学内は勿論、並盛町内でもあっという間に知られる存在となった。
 だが誰も彼らが人外である事を知らない。沢田達を除いては。
 高校の時は特に雲雀がだが、明らかに異質な存在で周りから浮いていたが大学では上手く溶け込んでいるようで彼らを怪しむような人間はいない。
 沢田の勝手な推測ではあるが、以前の雲雀は獄寺と同じ存在になりたいという強い思いと、その思いを獄寺が頑なに受け入れない事の焦りからか獄寺以外への過剰なまでの攻撃的かつ冷たい言動が多かった。それが周囲とは違う異質さを生んでいたのだが、獄寺が雲雀の望みを受け入れ同じ存在となった事で余裕が出来たのか、以前のような雲雀の攻撃的な言動はすっかり鳴りを潜めたようだ。
 それでも多くの時間を獄寺と共にいる事は変わらないが。

 兎も角、そんな人外最強の始祖である二人が帰ってきた事でこの街は平和になったのだ。
 勿論、二人が只この街にいるというだけで平和になったわけではない。それなら高校の時に既にこの街は平和になっている。
 なら何故今になって変わったのか。それは彼らが人外の抑止力となってくれているからだ。
 数年ぶりに街に帰ってきた獄寺は沢田達に人外である事を隠し、騙していたという負い目をずっと抱き続けていたようで人外退治の手伝いをさせてほしいと言ってきたのだ。
 それは獄寺が人間という存在を愛しているからというのもあった。害をなす人外から人間を守りたい。そう強い光を持った瞳で真っ直ぐ見つめられながら言われれば断る事など出来ない。
 リボーンも人外退治に協力するなら雲雀が今まで人間を襲った事を不問に付すと言った事もあり、獄寺は人外退治の手伝いをするようになった。
 そんな獄寺を見て常に一緒にいる雲雀が何もしない訳も無く、結局雲雀も渋々ながら人外退治をする事になるのだが、始祖が人間を守り、人外を狩っているという事実は人外側にかなりの衝撃を与えたようだった。
 始祖相手では敵わないとあっという間に知恵を持つような強い人外は街に現れなくなり、知恵を持たない本能で人を襲うような人外達も獄寺達のあまりに強い魔力を感じ取り恐れをなして街に近寄らなくなった。
 そんな訳で彼らのお陰でここ最近はとても平和なのだ。
 とはいっても完全に人外が出なくなった訳ではないし、「何もしねーと腕が鈍っちまうだろーが」とリボーンに無理矢理隣町まで人外退治に駆り出される事もあるが、それでも以前までの生活と比べたら雲泥の差だ。夜ゆっくりと眠れる事の有難さが身に染みる。

 心身に余裕が出れば桜を愛でる余裕も出てくるというものだ。
 いそいそとやって来た公園で、その中でも一際桜が綺麗な場所へと向かう。
 遊歩道から少し外れた場所。木製のベンチとテーブルが設置されているそこは近くに大きな桜の木が何本も植わっていた。

「うわぁ…」

 急いでいた時に遠くから横目で見たのと、今ゆっくりと間近で見るのとでは大きく違う。見上げる桜の美しさに圧倒され思わず声が出る。
 見たところ六、七分咲きと言ったところだろうか。今でさえこんなに綺麗なのにこれからもっと綺麗になるなんて。
 明日から少し早く家を出るようにして大学に行く前にここに来るようにしようかと考えていると桜の匂いが強く鼻腔を擽った。
 桜の匂いとはこんなにも強く香るものだっただろうか。まだ満開でもなく、近いとはいえ木から三メートル以上は離れているというのにまるで鼻先を桜の花に埋めているかのように濃厚な桜の匂いがする。
 もしかしてこの桜が特別香りの強い品種だったりするのだろうか。けれど目の前の桜の木はよく見る一般的な品種のものに思える。桜に詳しいわけではないので自信は無いが。

「沢田さん」

 不思議だなぁと見上げていると後ろから声を掛けられ、振り向く。
 そこには柔らかい風に銀糸を靡かせる、吸血鬼である友人が本を片手に立っていた。

「獄寺くん」
「こんにちは。今お帰りですか?」
「うん、そうなんだけど桜が凄く綺麗だったから見てから帰ろうと思って。獄寺くんは?」
「俺も帰るところだったんですが、恭弥の用事がまだ終わってないのでそれまで此処で本を読んで待っていようかと思いまして」

 この場所気にいってまして、よく此処で本読んでるんですと笑う彼の手には表紙に英文字が並ぶ分厚い本があった。
 獄寺は本が好きなようでよく読んでいる姿を見る。しかもそのジャンルは様々だ。
 この前会った時はテレビでよく見る芸人が書いた小説を読んでいたし、その前は哲学書、更にその前は句集を読んでいた気がする。
 その事を以前訊いたら色々な知識を得る事は楽しいですし、それに生きていくには必要な事ですからと言っていた。意味がよく分からず更に訊こうとしたら隣にいた雲雀さんに睨まれてその時は終わったのだが、今ならわかる。
 生きていくには必要、というのは人間達の中で生きていくには、という事だったんだろう。
 始祖は不老不死だ。永く生きている分、蓄えている知識は膨大だろう。けれどその古い知識のまま行動し、その時代時代の新しい知識を入れないままでいれば自ずと周りから浮いてしまう。結果怪しまれる事になりかねない。
 獄寺は人間を愛しているし、人間の中で暮らして生きていきたいと思っている事を知っている。だから彼はこれからも人間と生きていく為に様々な本を読み、知識を得ているんだろう。

「この様子ですとあと二、三日で満開でしょうか。楽しみですね」
「そうだね」

 その時、また桜の匂いが強く香った。正に噎せ返るような匂いという言葉がぴったりな程の匂い。
 そう言えば彼はさっきよくこの場所で本を読んでいると言っていた事を思い出す。彼ならばこの強い匂いについて知っているかもしれないと隣に立つ彼を見上げた。

「獄寺くん、よくこの場所に来てるんだよね?この桜っていつもこんなに匂いがするの?」
「いえ、いつもはそこまでしませんが今日は特に蝶が多いですから、その所為ですね」
「蝶?」
「はい、蝶です」

 にっこりと獄寺が笑う。その笑顔に沢田は戸惑いの表情を浮かべた。
 蝶とはあの虫の蝶の事だろうか。けれど今周りには蝶など一羽も飛んでいない。それに例え蝶が飛んでいたところでそれが桜の匂いに関係するとは思えない。
 考えても意味がわからず疑問だけが浮かぶ。そんな沢田を見て、獄寺は「ああ、」と声を出した。

「沢田さんは見えないんですもんね、すいません。…ちょっと目を閉じてもらっても良いですか?」
「え、うん」

 獄寺に言われるままに両目を閉じる。暗くなる視界。下ろされた右の瞼に何かが触れ、その突然の刺激に思わず肩がびくりと震えた。
 これは獄寺の指先だ。獄寺が右目の瞼に優しく触れている。その触れた個所からじんわりと熱が生み出され目を温かく包む。それは経験したことの無い、不思議な感覚だった。とても心地良い感覚。
 右の瞼から離れた指先は今度は左の瞼へと移る。そして同じように触れた先からはまた温かい熱が伝わり、広がった。

「…もう良いですよ。目を開けてみて下さい」

 獄寺のその声にゆっくりと瞼を持ち上げる。開かれた視界。そこに広がる世界に沢田は声を失った。

「…───!」

 世界が輝いている。
 大袈裟な表現等ではなく、その文字通り目の前は輝いていた。
 間違いなく此処はさっきも見た公園だ。それは間違いない。近くには大きな桜の木が何本もあって、その下には木製のベンチとテーブルが置いてある。それは変わらないのに見える光景は様変わりしていた。
 周りには桜色をした見た事も無い蝶が十羽、いや、二十羽は飛んでいるだろうか。目に見えない筈の空気はきらきらと輝き、下に生えている何処にでもあるような草もさっきよりも明るく鮮やかな緑をしている。
 少し背の高い草原から兎のような長い耳に猫のような尻尾を持った小さな白い動物が姿を現すが、目が合った瞬間また草原の中へと戻っていった。遠くには鹿に似た生き物も見えるが尻尾がとても長くふさふさしているのできっと鹿ではないのだろう。
 ありふれた光景が見慣れない光景へと変わっていた。ファンタジーの世界にいるような見た事の無い生き物達が動いている。
 きらきらと輝く極彩色の世界は人によっては天国や楽園と呼びそうだと目の前の光景に圧倒されながら思った。

「…人外と人間は色々違います。寿命もそうですし、身体能力も、特殊な力もそうです。そして、こうして見ている世界も」

 そう言い、目の前に手を翳す。するとそれを待っていたかのようにどこからか青い鳥が飛んできて獄寺の指に止まった。頭に触角のような長い羽根を二本生やしたその鳥は目も青く、やはり見た事の無い生き物だった。

「じゃあ、今見てるこれって、」
「俺達人外が見えてる世界です」
「…これが…」

 これが、獄寺くん達の見ている世界。

 人差し指に止まる鳥に向けていた翠色の瞳が沢田へと向けられる。青い鳥はまた何処かへ飛んで行った。

「人間が見えている人外は人外の中のほんの一部です。殆どの力の弱い人外は人間には視認出来ませんから。でもこの蝶のように姿以外で存在を感じ取れる人外もいます」
「…あ、じゃあさっき言ってた桜の匂いがするのは蝶が多いからだっていうのは」
「はい、この蝶です。この蝶は羽ばたくと桜の匂いがするので」
「そうなんだ…」

 羽ばたけば桜の匂いがするなんて、とても不思議で幻想的だ。

「他にも見えないけれど存在を感じる人外はいますよ。沢田さんは空に雲が一つも無いのに顔に水滴を感じた事はありませんか?部屋の中で突然普段しない匂いがした事は?無風なのに地面に落ちている枯葉が動いているのを見た事は?」
「………」

 獄寺が口にした現象はどれも経験した事のあるものだった。それら全てが人外だったというのだろうか。驚き、瞠目する先で獄寺が笑う。

「全てという訳ではありません。けれど人外が影響している事も多いです。見えていないだけでとても身近に人外はいるんですよ」

 そんな事、全く知らなかった。退治屋をしている分、一般の人よりも多くの人外を見ているというのに少しも。
 見つめ合う獄寺と沢田の間に桜色の蝶が桜の匂いを纏いながら横切る。
 こんなに小さくて綺麗な人外がいるなんて知らなかった。
 横切った蝶がくるりと円を描くように周りを羽ばたき、沢田の肩へと止まる。その姿が何だかとても愛らしく見えて、自然と口元が綻んだ。

「獄寺くん、この蝶は何ていう人外なの?」
「名前はありません。人外にはそもそも名前はありませんから、名前を付けるのはいつだって人間です。ですから人間が見る事の出来ない人外には名前が無いんです」

 吸血鬼という名称も人間がつけたものですしね、と獄寺が綺麗な世界の中、綺麗に笑う。
 周りの空気のようにきらきらと光る翠の瞳に、綺麗な世界を見ているから彼の瞳は綺麗なのだろうかとふと思う。

「…綺麗だね」
「綺麗、ですか?」
「え、うん、あちこちきらきらしてて、色鮮やかで。ファンタジー映画とか絵画の中にいるみたい」

 本当は彼自身に見惚れて言った言葉だったのだがそれを言うのは気恥ずかしく、それに友人にそんな事を言われても困らせるだけだろうと慌てて誤魔化す。
 咄嗟に出た言葉ではあったがそれも事実である事には間違いない。
 けれどその言葉に獄寺は僅かに首を傾げ、蝶が飛ぶ桜の木へと視線を向けた。

「獄寺くんは違うの?」
「…生まれた時から見ている世界なので特に綺麗とかは…でも、」

 言葉が止まる。翡翠の瞳が眩しそうに細められるのが見えた。

「美しい、とは思いますね」

 彼が言う『綺麗』と『美しい』はどう違うのだろうか。
 この世界を今初めて知った自分にはそれがまだ理解出来ない。
 けれど彼はこの世界を愛しく思っている。それだけははっきりとわかった。


「隼人」


 背後からの声に二人振り向く。
 そこには肩から鞄を掛けた雲雀が不機嫌そうな顔でこちらへ歩いてくる姿があった。
 獄寺に受け入れられ同じ存在になったことで以前よりは余裕が出てきたとはいえ、やはり獄寺と他の誰かがいるのは許容しきれないらしい。
 それを獄寺もわかっているようで雲雀の表情に苦笑した後、沢田の方へと向き直り、沢田の目を覆うように右手を置いた。

「獄寺くん?」
「あまり長い間見ていると境界線がわからなくなってしまいますので」

 目を包んでいた温かかったものがすうっと引いていくのがわかる。そして目の上から手が除けられた後見た世界はいつもの見慣れたものに戻っていた。

 現実とは思えない目に焼き付くようなあまりに鮮やかな世界はあっさりと消えてしまった。まるで夢のように。
 けれどまた強く香った桜の匂いがその世界は確かに目の前にあるのだと、教えてくれている。肩に止まっていた蝶が羽ばたいたのが見えた気がした。

 桜色の蝶も、獄寺くんが美しいと言った世界も、見えなくても確かにここに。

「…俺、この世界も、獄寺くんが見ている世界も、両方好きだな」

 その言葉に獄寺が驚きの表情をした事に気付く事なく、沢田は見せてくれて有難うと礼を言うと公園から出て行った。
 小さくなっていく友人の後姿を獄寺は穏やかな笑みを浮かべ見送る。

「…沢田さんは良い退治屋になられるだろうな」

 彼は自分の生きる世界とあまりに違う世界を見ても好きだと言った。
 個人差はあるが人間は誰しも保守的な部分を持ち、あまりに自分の知っているものとかけ離れたものを見た時恐怖や嫌悪を持つ。それは自己防衛という己の命を守ろうとする本能によるものだ。
 沢田に見せたものと同じ光景を他の人間にも見せたとしよう。そうすれば人間の知る世界とはあまりに現実離れした光景に気持ち悪い、気味が悪いと言う人間もいれば、気が狂いそうになる人間もいるだろう。
 中には沢田と同じように綺麗だと言う人間もいるだろうが、好きだと言える人間は多くないのではないかと思う。
 『綺麗』と『好き』は決してイコールではないのだ。

 そんな獄寺の言葉に雲雀は欠伸をしながら「そう」と興味なさそうに答える。
 相変わらず自分以外には興味が薄い男だと獄寺が苦笑した。

「…なあ、恭弥はこの世界を綺麗だと思うか?」

 知りたくなった。
 過去、沢田と同じ世界で生き、今はこの人間にとっては鮮やかすぎる世界に生きる彼に。自分の所為で見える景色が一変してしまった彼に。
 それに対し雲雀は表情を変える事も無く、事も無げに答えた。

「別に何とも。興味を持った事も無いし。君と同じ景色を見ているというのは嬉しく思うけど」

 それだけだ。とつまらなそうに口にする。それから獄寺を見つめ、笑みを浮かべた。

「僕が綺麗だと思うのは今も昔も君だけだよ。隼人」

 目の前の元人間は世界が一変した事に対し興味が無いと言う。
 己の血を飲んだ瞬間、見える世界が変わった事に絶対驚いた筈だというのに、そんな大きな出来事を興味が無いと。
 確かに今思えば血を与えて一命を取り留めた後、雲雀は見える景色について何か尋ねる事も、戸惑っている様子もなかった。
 只々自分を見つめ、後についてくる。
 それは一変した世界や、人外になった事への不安からなのかと思っていたがそうではなかったらしい。
 雲雀は見える世界の事なんてどうでも良かったのだ。最初から獄寺の事しか興味も無かったし、見ていなかったのだ。それは今も。

 …全く、こいつは。

 笑いが込み上げる。
 出会ってから数十年。逸らされる事無く自分だけを見つめ続ける目の前の男が愛おしかった。

「…桜餅食べたくなった。買ってきて此処で食おうぜ」
「此処?この蝶だらけの場所で?」
「そう。蝶と戯れつつ桜見て、桜の匂いに包まれながら桜餅食おう。楽しそうだろ?」
「…君は偶によくわからない思い付きをするよね」
「四季を感じるのは大切だぜ?」

 口角を上げ笑う美しい男に雲雀は呆れつつも笑う。
 彼が四季を大切にしている事は知っている。そしてそれは自分の為だという事も雲雀は知っていた。
 永い時を生きていると時間の感覚が希薄になっていく。今が何月の何日なのか、何年経ったのか、全てが曖昧になり、そしていずれどうでも良くなっていく。
 雲雀がそうなってしまわないように、獄寺は四季を愛でる。
 春になれば花見をし、夏には窓辺に風鈴を吊るし入道雲を眺め、秋には紅葉を愛で、冬は白くなる息と空から降る雪に喜んだ。
 食べる必要だって無いのに旬の物をわざわざ買ってきて一緒に食べたりもした。
 雲雀に初めて血を分け与えた日から獄寺は一度も日本を出ようとしなかった。
 それは雲雀が日本人だから住み慣れた日本の方が良いだろうというのもあっただろうが、四季がある国だからというのもあるだろう。
 四季の移ろいを感じる事で時の流れを雲雀に感じさせようとしたのだ。
 その獄寺の優しさを、愛を、とても嬉しく愛おしく思う。

「じゃあ早く買いに行こう」

 すぐ何処かに飛んで行ってしまうこの蝶達がいる間に。

 輝く世界の中、指を絡め雲雀は獄寺の白い手を引いた。

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