「どうやら無事なようですね。ぼろぼろになった貴方を笑いたかったのですが…」

 口元に指を当て、クフフと相も変わらず不愉快な笑みを浮かべる男に自然と眉間に力が入る。

 何故こんな所にこの男がいるのか。

 羽月鴒人は鉄からの連絡で来たという事を言っていたが、この男に関しては鉄が連絡するとは思えない。
 そもそもこの男は味方なのか。
 何を考えているのかわからない、得体の知れない男。襲われているところを助けられる形になったとはいえ、簡単に信用出来ない。
 そんな考えが顔に出ていたのだろう、目の前の男はやれやれといった様子で微苦笑を浮かべすぐ側に屈んだ。

「僕は敵ではありませんよ。純粋な善意から助けに来ただけです」

 この男程善意などという言葉が似合わない人間はいるだろうか。
 胡散臭い男に警戒心を緩める事無く睨み付けるが、腕の中に抱え込んでいた存在が突然胸ぐらを掴んできた事によって視線はそちらへと移った。
 両手で力の限りに胸ぐらを掴み、至近距離で睨み付ける。その顔は痛々しいほどに蒼白で、僕を映す翡翠の瞳は零れんばかりの水面で揺れていた。

「ふざけんなよっ、てめぇ…!!」

 色を失った形の良い唇が開かれ、震える罵声を僕へと投げつける。
 その言葉は怒りで満ちているというのに瞳から伝わってくるのは深い悲しみだ。

「何で庇おうとしたっ!答えろ雲雀っ!!」

 倉庫に響き渡る怒声が慟哭に聞こえた。
 胸が苦しくて堪らない。
 目の前で彼が苦しんでいる。怒鳴る彼を抱き締めたくて仕様がなかった。

「何で、何でお前は…っ」

 胸ぐらを掴む手が強く震える。
 僕を瞬きもせず睨み付ける悲痛なまでの瞳から、一筋の涙が零れ落ちた。


「何で死んだんだっ…!!」


 …ああ、そうか。
 彼は今、斑鳩要にではなく、雲雀に言っているのか。
 雲雀という僕の知らない僕に怒りを、悲しみを、苦しみをぶつけているのか。

 それを全て受け止め、その震える体を抱き締めたいのに、何も知らない僕にはそれが出来ない。
 それが胸を掻き毟りたくなる程に歯痒く、辛い。

 僕は目の前で涙を流す彼の頬を拭う事すら出来ない。

「…落ち着いてください。彼は生きていますよ」

 霧崎瑪瑙が柔らかい瞳で彼を見つめ、肩に手を置く。
 そこで初めて霧崎瑪瑙の存在を認識したらしく、僕へと向けられていた顔はゆっくりと横を向き、呆然とした表情へと変わっていった。

「骸…?」
「はい」
「なんで…」
「この男が揉め事に巻き込まれていると情報が入りましてね。そしたら貴方までその場所に向かったと聞いたものですから飛んできました」

 『骸』
 それがこの男の前世での名前なのだろうが、名前にしてはあまりに薄気味悪い響きはこの男に不思議な程に合っていると思った。
 その気味の悪い名を持つ男はけれど優しさしかない慈しむような笑みを羽月鴒人へと向ける。それに落ち着きを取り戻したのか、羽月鴒人の体から力が抜けていく。
 僕を掴んでいた手はずり落ちるように離れ、過呼吸を起こしかけていたようで胸元を抑えて荒い呼吸を意識的にゆっくりとしたものに変えようとする。
 次第に落ち着いていく呼吸。自分が涙を流した事さえも気付いていなかったであろう彼の頬は既に乾いていた。

「…実はあの匣の件について、僕も独自に調べていまして」

 羽月鴒人が落ち着いたのを見計らって霧崎瑪瑙が静かに口を開く。その内容は羽月鴒人に向けて話しているのだろうが、聞こえた一つの言葉に思わず反応する。
 ボックス。
 あの男達が言っていた言葉だ。そして恐らく僕が追われる事になった原因。

 僕の僅かな変化に気付いたのだろう、霧崎瑪瑙が視線を向けてくる。それに僕は溜息交じりで答えた。

「…あの男達がボックス兵器を渡せと言っていた」
「…成程」

 話を完全には呑み込めていないが、男達が手に入れようとしているボックス兵器とやらに関する事をこの男も調べていたという事か。
 何か納得した風の男を見ながら自然と目は鋭いものとなっていく。
 そのボックス兵器というものがどんな物かはしらないが、組の人間であろう男達が欲しがるような物だ。兵器という言葉からしても碌な物ではないのだろう。
 そんな物に関わり、調べているというこの男は何者なのか。
 やはり只のファッションブランドの取締役とは思えない。
 そんな僕の視線に気付いているだろう男はけれどそれを気に留める様子もなく、話を続ける。

「どうやら僕達が匣兵器を使って襲撃を仕掛けるつもりらしいというデマが何者かによってこの辺りの組に吹聴されているようです」

 成程、それであの男達は僕がそのボックス兵器という物を持っていると思い、襲ってきたという事か。
 しかし何故それが僕なのか。
 今霧崎瑪瑙は『僕達』と言った。という事はそこには僕と霧崎瑪瑙、そして恐らく羽月鴒人も含まれているのだろう。
 何故このメンバーが襲撃を仕掛ける等という根も葉もない噂を流されるのか。職業もバラバラで仕事上の関りぐらいしかない僕達が。
 そこまで考えたところで気付く。

 そうか、前世か。

 僕の知らない前世がこんな所にまで関係してくるとは。

「そのデマを吹聴してまわっている人間が、対抗する為には同じく匣が必要だと組に甘言を弄し取引を持ち掛けているとか。その取引が今日行われるそうですよ。そして幸か不幸か、場所は」

 にぃ、と男の唇が弧を描く。そして人差し指が倉庫の奥を指差した。

「此処です」

 男の指差した先を見る。僕が入って来た入口とは逆の方向、そこには半分程開けられたシャッターの入口があった。
 外から見た時、かなり長く大きな倉庫に見えたが今思えば外観と比べると中はかなり狭い。何棟かの倉庫を連結しているという事なのだろう。
 数多くある倉庫群の中でこの倉庫だけが開いていたのはそういう事だったのか。
 身を隠す為にと入った倉庫だったが、まさか此処が取引場所になっていたとは。

「あと少しで取引の時間になります。恐らく奥にはもう匣を売ろうとしている人間がいる筈です。そしてその人物こそがボンゴレに匣を送った人物だ」

 また聞き慣れない言葉と共に意味を理解しきれない内容が紡がれる。
 だが羽月鴒人には当然ながら意味は伝わっているらしく、しっかりとその目は霧崎瑪瑙へと向いている。その目にはもう悲しみも怒りも無く、少しの揺らぎも無い。
 只真剣な色を湛えた強さがあった。

「…六道輪廻は使えるのか?」
「いいえ。この世界ではどうやら使えないようで。幻術も戦闘で使えるレベルのものは無理です」
「匣は?」
「持っています」
「…俺が行く。骸は雲雀を頼む」

 そう言うなり、羽月鴒人が立ち上がる。倉庫の奥へと視線を向けて。
 その彼に何か声を掛けようとした霧崎瑪瑙を彼は凛とした声でもって遮った。

「俺はきっと、この為に記憶を持っていた」

 雲雀を今度こそ守る為に。

 これは決意だ。彼の誓いだ。
 意味を理解しきれない僕にもわかる強さを持った言葉に霧崎瑪瑙の目が僅かに伏せられる。
 そして諦めを滲ませた声で一言、「お気をつけて」と告げる。
 その言葉に振り向く事無く、彼は倉庫の奥へと消えていった。



「…霧崎瑪瑙」

 彼がいなくなった空間で男の名前を呼ぶ。
 この男もこれだけの状況になって何の説明もしないで済むなど思っていないだろう。
 彼は何をしに奥へと向かったのか。ボックス兵器とはそもそも何なのか。
 全て説明しろと睨み付けた先の瞳は先程まで羽月鴒人へと向けていた温かさや優しさは無く、冷たいまでの冷静な色を見せていた。

「…匣兵器は強力です。全ての人間が使いこなせるわけではありませんがこれがこの世界で広まり、もし誰もが知るくらいまでに普及したら今までのような安寧の日々は送れなくなるでしょう。…前世で深く関わっていた貴方は特に。貴方は何も憶えていなくとも前世を知る人間はきっと放っておかない。だから彼は行ったのですよ。匣がこの世界の人間の手に渡る前に元を断つ為に。…そして何よりも貴方を守る為に」

 話を聞く限り、前世の僕は何処にでもいる極々普通の一般人ではなかったようだ。そしてそれは恐らく彼らも。

「匣を売ろうとしているくらいです。相手も匣を使える可能性が極めて高い。恐らく戦闘になるでしょう」

 今、この男は何と言った?

 まるで大した事では無いかのようにさらりと告げた内容に一瞬思考が停止した。
 戦闘?誰が?羽月鴒人が?
 たった今、ボックス兵器は強力だと言ったのはこの男だ。そんな危険な物を使う相手の所へ戦闘になるとわかっていながら彼を見送ったのか。彼は自ら向かって行ったというのか。

 僕は羽月鴒人についてあまりに知らない。
 イタリアとのクォーターで両親はイタリアに住んでいて、姉弟は姉が一人いて。
 ピアニストで、通訳や翻訳の仕事もしていて。
 白くて細くて、そしてその存在はどこか消えてしまいそうに儚げで。
 前世の彼がどんな人物だったのかは知らないが、いつも苦しそうに僕を見つめていた彼がそんな危険な相手に戦えるとはとても思えなかった。

 彼を一人で行かせてはいけない。
 彼を失いたくない。

「どちらへ?」

 黙って立ち上がり、奥へと向かおうとした僕の背中に声が投げかけられる。
 それに対し、振り返る事なく答える。

「…決まっている。助けに行く」
「助ける?無力な貴方が?」

 クハハハ!と男の笑い声が倉庫に響く。
 その可笑しくて堪らないと言わんばかりの笑い声に視線を向ければ、未だ体を揺らし笑う男と目が合う。
 その目の奥には笑っている人間とは思えない、剣呑な色が見て取れた。

「彼は僕に貴方を頼むと託していきました。いくら記憶が無かろうとその意味がわかるでしょう?今の貴方は無力なんですよ。匣を使う相手に対してどころか武器を持った一般人相手でも戦えないくらいに。そんな貴方を行かせる訳にはいかない。行ったところで彼を助けるどころか無駄死にしてお仕舞です」

 確かにそうかもしれない。現に僕は銃を持った相手に対抗する術も無く、この場所に身を隠していた。
 だが、だからといってこのまま何もせず此処にいられる訳がない。

「…僕に黙って守られていろと言うの?彼が戦いになるとわかっていながら木箱の陰で黙って隠れていろと?」

 そんな事、出来る筈が無い。

 男を睨み付ける。その先で男は目を伏せ、一つ溜息を漏らした。

「…貴方は、前世で彼を庇い、死んだそうです」

 目の前で、彼の体に覆いかぶさるようにして、息絶えた。そう聞いています、と男が静かに口にする。
 その言葉を特に動揺する事無く聞く。
 先程の羽月鴒人の取り乱しようから心のどこかで何となくそうなのではないかと思っていた。

「…貴方を喪ってからの彼の姿は、とても言葉では言い表せません。声も無く、彼の心は泣き叫んでいた。けれど彼は涙一つ流さず、穏やかに笑っていた。誰の目から見ても無理をしているとわかる程に痛々しく。声を掛ければ有難う、大丈夫と笑う。けれどそのどれも彼の心には届いていなかった」

 悔しそうに男の眉根が寄る。
 自身の二の腕の辺りを強く握るのが見えた。

 彼はどれ程の悲しみに襲われたのだろう。
 彼にとって前世の僕はどういった人物だったのかはわからないが、男の語る彼の姿を想像しただけでずきりと心臓に痛みが走り、喉奥が絞まり苦しくなった。

「眠る事さえ拒み、仕事に没頭し。あの時の彼は間違いなく死に急いでいた。…そして貴方が死んでから僅か三年後」

 そこまで言うと男は口を一度閉ざし、瞑目する。
 細く息を吐き出し、再び開いた目は羽月鴒人がよく見せる瞳に似ていた。

「彼は死にました。単身乗り込んだ任務先の敵地で」

 どくん、と一際大きく心臓が鳴った。熱が引き、指先が震える。
 単調に、いつもと変わらぬ調子で告げたであろう男の言葉はけれどほんの僅かに震えているように聞こえた。

 今更に気付く。
 前世の記憶を持つという事は、前世の悲しみも苦しみも全て背負うという事なのだと。

「彼にとって貴方は未だ癒える事のない傷だ。貴方はそれでも行くと?」

 さっきの彼の姿が脳裏に過る。
 血の気の引いた蒼白な顔で、見ているこちらが苦しくなるような瞳で、自分が泣いている事にも気付かず怒鳴る彼の姿が。
 初めて彼が僕に対して感情を露わにした。隠していたものを見せた。
 それをずっと望んでいたというのに、もう見たくないと思った。彼にそんな顔をしてほしくないと思った。
 僕が行く事によって彼はまた悲しむ事になるのかもしれない。また怒りに震え、涙を流すかもしれない。
 けれどそれでも僕は彼のもとへ向かいたい。

 もう同じ過ちは繰り返さない。

 言葉も無く男を見る。交差する視線。
 数秒の後、男がわざとらしく大きな溜息を漏らした。

「…わかってはいましたが、やはり言っても無駄なようですね」

 二人揃って頑固で困ったものだ、と立ち上がり、男がポケットから何かを取り出す。

「せめてこれを渡しておきます」

 そう言って渡されたのは紫色の石が嵌った指輪と掌に乗るサイズの小さな箱だった。

「匣とリングです。この中には恐らく貴方にとって使い慣れた武器が入っている」

 ボックス。これが。
 正方形の小さな箱には『Caro Guardiano della nuvola,Kyoya Hibari』と彫られている。
 英語ではないその言葉を正しく理解する事は出来ないが『Kyoya Hibari』の文字にこれが恐らく自分の前世の名前で、このボックスは自分の物なのだと理解する。
 文字が彫られている面とは違う面には穴があり、それ以外は特に何の変哲も小さな箱だ。
 凡そこれが危険な兵器には見えない。しかも目の前の男はこの中に武器が入っていると言っていた。
 前世の僕がどんな武器を使っていたかはわからないがとても武器が入るような大きさに見えない。一体僕は前世でどんな武器を使っていたというのか。
 そもそもこのボックスはどう開けるというのか。指輪も渡されたという事はこの指輪を使うという事が予想できるがボックスの穴に指輪は嵌りそうも無く、全く仕掛けがわからなかった。

「…使い方は」
「記憶が戻らなければ使えないでしょう。開匣出来ないのならば僕の後ろで隠れていなさい」

 そう言うなり男は背を向ける。
 見つめる先は羽月鴒人が消えていった倉庫奥の入口。

「開匣も出来ない人間に彼を守る資格などありません」

 行きますよ、と奥へと歩を進める男に何も言い返す事も出来ず歯噛みする。
 今の僕には彼を守る力も無ければ記憶も無い。想いだけが膨らみ暴れ、気を急かす。
 何かが胸の内から外へ出ようと激しく叩くような感覚に心臓に痛みが走り、頭にも鈍く痛みを感じ始める。

 思い出せ。今思い出さなければいつ思い出すというんだ。

 その声は果たして僕の声なのか、それとも前世の僕の声なのか。
 次第に強くなる痛みに浅い呼吸を吐き出し、手の内のボックスを強く握った。










 入口を通った先、先程いた倉庫と全く同じ作りの倉庫を通り、更に奥の入口を通る。
 その道中は全く人影も無く、自分達の足音だけが響く。けれど奥に近付くにつれ人の気配は強くなっていくのを感じた。
 間違い無くこの奥にいる。羽月鴒人と、ボックス兵器をばら撒こうとしている人間が。

「行きますよ」

 四棟目の入口。入った先には予想通り彼らがいた。
 広い倉庫の奥に眼鏡姿のどう見ても友好的には見えない表情の男がこちらを向き立ち、その手前、二十メートル程離れた所に僕達に背を向ける形で彼は立っていた。

 その手に赤く燃える弓を持って。

「…───」

 知っている。
 そう思った。

 僕はこの光景を確かに知っている。見た事がある。
 どこまでも澄んだ赤く美しい炎。彼以外にこれほどまでに美しい炎を灯せる人間はいないと、僕は確かに思っていた。
 炎を纏い、敵を射貫き、蹴散らす。その後姿を美しく思った。失いたくないと思った。

 それはいつ?

 目の前の光景にいつかの光景が重なる。
 目の前にある筈の無い、豪華な屋敷のような一室が見えた気がした。そこに立つ黒いスーツの男が炎の灯る指輪をボックスに近付ける光景も。

 その瞬間、頭の中を白く強い光が覆った。
 胸の内で暴れていた物が激しい熱を持って外へ溢れ出る。
 熱い。胸が、頭が、体全てが熱い。
 意識を失うのではないかという位の強い痛みが頭を突き抜け、それとほぼ同時に濁流のように記憶が駆け巡る。

 彼と初めて会ったのは応接室だった。それから黒曜でぼろぼろの彼に肩を貸した記憶。夜の校舎で彼の元へリングを弾き飛ばした記憶、未来へと飛ばされ戦った記憶。シモンファミリーとの戦いにアルコバレーノの代理戦争の記憶。
 彼と出会ってからの記憶は少しも色褪せる事無く、まるで昨日の出来事のように蘇る。

 屋上で煙草を吹かし授業をサボる彼を殴ったその感触。いつだって傷だらけの彼に呆れた時、鼻を掠めた微かな血と硝煙の臭い。仕事の話をしに財団へとやって来た彼の着物の擦れる音。手合わせした時の彼の好戦的な笑みとそんな彼に心躍った、その胸の高鳴りさえ全てが一瞬に、けれどはっきりと鮮明に蘇っていく。
 匂いも熱さも、彼の声も、五感で捉えた全てがこんなにも鮮やかに蘇る。

 そしてあの最期の出来事も。


『雲雀っ…!!』



「…全てわかったよ」

 僕の声に彼が弾かれたように振り返る。
 その驚愕と痛苦に染まる顔に微笑み、僕はリングを右手の中指へと嵌めた。

「獄寺」

 漸く君の名前を呼べた。
 漸く僕は君と同じ世界に立てた。

 漸く、また君と出逢えた。


 リングに炎を灯す。
 紫の炎。それを匣へと注入した瞬間、リングは跡形も無く砕け散った。手に残ったのは匣から現れた炎を纏う一対のトンファー。
 それを構え、僕は笑う。

「君が僕を守る為に記憶を持っていたと言うのならば、僕が記憶を取り戻したのは君を守る為だ」

 僕が唯一、美しいと、失いたくないと心から思った君を。

 そんな思いに呼応するように紫の炎が大きく燃え上がった。

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