最近鉄の様子がおかしい。
 以前は行き先さえ伝えておけば誰も付いてくる事無く一人で行動していたというのに、最近は同行を申し出てくる事が多くなった。
 それを拒否すれば今度は行き先を事細かに聞かれ、出先では頻繁に電話で所在を訊かれる。そして一人でいる時に感じる視線。尾行だ。恐らく会社の人間だろうが。
 これは長年僕に仕えている鉄にしては明らかにおかしな行動だった。
 僕は一人でいる事を好み、詮索される事を嫌う。それを彼は誰よりもよく知っている筈だ。
 彼は僕が嫌う事を決してしない。言動も常に秩序立っていて余程のイレギュラーが起きない限りは乱される事がない。
 そんな彼のここ最近の言動を不審に思わない方がおかしい。
 何故突然そんな行動を取るようになったのか。彼の事だ、何か理由もなくこんな事をするとは思えない。
 そう考え思い至ったのは思考を占め続ける自分にとって唯一の存在、羽月鴒人だった。
 鉄と羽月鴒人は前世からの顔見知りだ。本人達の口から聞いたわけではないがそう確信している。そして鉄が普段と違う行動を取る時、それは彼が関係している時だ。
 小さな所作や目の動き等些細な変化ではあるが、いつもと違う様子に僕が気付かないわけがない。
 今回の鉄の行動も羽月鴒人が関係しているに違いない。勘ではあるが恐らく間違いないだろう。

 連絡しようにも繋がらず、接触しようとしても避け続ける彼。
 その彼が関係しているとしたら、これは彼と接触するチャンスなのではないだろうかと思った。
 どう関係しているかまではわからないが今のこの状況に何か変化があれば彼が何かしらの動きを見せる可能性がある。
 兎にも角にも、僕を頑なに拒否し避け続ける彼との今の現状に僕は変化を齎したかった。





 それは十二月二十五日、クリスマスの日だった。
 恒例となりつつある鉄の同行申し出を拒否し、行き先を告げ会社を出た昼過ぎ。
 外は冷え込み、見上げる空は灰掛かっている。そういえば今日は夜には雪が降るだかでホワイトクリスマスだとテレビで騒いでいたなと思い出す。
 街中もいつもより人が多いのはクリスマスだからだろう。浮かれた雰囲気の街を後方からの視線を感じながら一人歩く。
 予想通り尾行だ。何故そんなにも僕の動向が気になるのか知らないが、いつもは好きにさせておいたその尾行を今日は放っておくつもりなはい。
 いつもならば極力避けるような人混みへと自ら足を進める。そして一際混みあってる場所に入ったのを見計らって脇道へと入った。
 そこからは軽く駆け足で人通りの少ない方へと行けば感じていた視線はあっさりと無くなった。
 やはり尾行は会社の人間だったらしい。探偵等の尾行に慣れている人間ならばこんな簡単には撒けなかった筈だ。
 あっさりと当初の目的を達成し、そこからは悠々と歩く。
 さて。僕を見失い、どう動くか。
 今頃鉄辺りは慌てているかもしれないと思っているとポケットに入れているスマホが音を鳴らし震えた。十中八九鉄だろう。思たよりも見失った事に焦っているのかもしれない。
 そう思いながらも鳴り続けるスマホに出る事無く、人気のない道へと歩いていく。
 これから何処へ行こうか。
 会社で鉄に伝えた行き先も嘘だ。尾行は撒かれ、連絡は取れず、伝えられた行き先も違う。
 完全に見失った僕に対してどういう行動を取ってくるかはわからないが一先ず夕方頃までは行方をくらます事にしよう。
 暫くして諦めたのか静かになったスマホをポケットから取り出し画面を見るとそこには案の定予想していた人物からの着信表示があった。
 恐らくこの先何回も同じように電話がかかってくる事になるだろう。それを考えると電源を切った方が良いだろうかとも思ったが、それは止めてマナーモードにだけして再びポケットに突っ込んだ。
 もしかしたら僕のこの行動に羽月鴒人が直接何らかのアクションを取ってくるかもしれない。そんな希望も含んだ考え故の行動だった。

 どうにも羽月鴒人が絡むと僕はらしくない行動を取ってしまうようだ。
 けれどきっとそれはお互い様の筈だ。

 お互いがお互いの事を思考の全てを占めてしまう程に意識している。必死に逃げる彼はその事に気付いているのだろうか。

 そんな事を考えている内に気付けば人気の無い住宅街にまで来てしまっていた。
 この辺りにいればさすがに見つかる事は無いだろうが、長く時間を潰すには適さない場所だ。
 だからといって今頃会社の人間が捜し回っている街中に戻るつもりはない。ここは少し先まで歩いて小さな商店街にまで行こうか。それとも駅に行って電車にでも乗ってしまおうか。
 思考を巡らせ歩く住宅街はとても静かで、昼だというのに自分の足音くらいしか聞こえない。筈だった。

「………」

 後方から聞こえた微かな足音に足を止める。この辺りの住民か。そう思ったが自分が足を止めれば足音は止まり、再び歩き出せば後ろの足音もついてくる。
 尾行の人間に見つかったか。…いや、違う。
 歩いていく内に増えていく足音。そして何よりも不愉快なまでに感じるいくつもの鋭い視線が街中で僕をつけていた人間とは違う事を示していた。

 …全く、次から次へと。

 一体僕に何の用があるかは知らないが、これだけわかりやすく剣呑な視線を投げつけながら後をつけてくる人間を放っておく事は出来ない。

「…出ておいでよ。僕に何の用?」

 立ち止まり発した声に後ろの気配はすぐに動いた。振り向いた先には黒いスーツを身に纏った柄の悪い男が三人。その姿はどう見ても堅気の人間には見えなかった。

「…斑鳩要だな」
「そうだけど」

 ここで誤魔化したところで意味はないだろう。恐らくこの辺りを縄張りにしている組の人間だろうが、僕をつけてくる理由がわからない。
 斑鳩グループへの介入目的か、それとも脅しか。だとしたら僕に接触してきたところであまり意味は無いのだけど、と内心溜息を吐く。
 確かに自分は斑鳩グループを束ねる斑鳩家の一人息子ではあるが、後を継ぐ気は更々無いのでグループ会社には属していないし、経営に関与できる力は持っていない。今の会社もグループとは一切関係無く自分で起ち上げたものだ。
 色々と融通が利くので交渉や会食の場でグループの持つホテルやレストラン等は使うがそれ以外での関りはほぼ無いと言っても良い。
 その事を知っているのは家の人間とグループの上層部くらいだが、隠しているわけでもないので調べればすぐにわかる事だ。それを知らずに組として接触してくるとはとてもじゃないが思えない。
 ならばグループは関係なく、僕の会社か、もしくは僕自身への用か。いずれにしても話を聞かない限りはどうにもならない。
 出来る限り穏便に済む話であれば良いのだけどと、とてもじゃないが穏やかではない空気を出す男達に面倒だという態度を隠す事も無く視線を向ける。
 そんな僕に投げられた言葉は予想していなかったどころか全く意味のわからないものだった。

「匣兵器とやらをこちらに渡してもらおうか」
「ボックス兵器…?」

 この男は何を言っているのか。
 人間違いでもしているんじゃないだろうかと思う程言っている意味が理解出来ない。
 どうやらボックス兵器とやら目的で後を付けてきていたらしいが生憎そんな物は持ち合わせていないし、そもそもどういう物かもわからない。
 何故それを僕が持っていると思ったのかは知らないが見当違いも良いところだ。

「そんな物持ってないけど」
「嘘を吐くな」

 本当の事を言ったというのに即座に否定され眉間に皺が寄る。
 これは本格的に面倒な事になった。
 言葉で言っても信じないならばどうすれば良いというのか。今持っている物を全部出して見せれば納得するのだろうか。
 だがとてもじゃないが所持品全てを見せたところで納得するように思えない男達の様子に白い息と共に溜息が出た。

「どうしても渡すつもりが無いというのならば無傷では済まなくなるぞ」

 目の前の男の内の一人がそう言うなりスーツの内側に手を入れる。そして次に出てきた手には黒く光る武器が握られていた。拳銃だ。
 一般人に対して銃を持ち出すとは本当に穏やかじゃない。
 本物であろうその銃口がこちらに向けられる。普通であればパニックに陥るだろう状況だが、自分でも驚く程に冷静だった。まるでこんな経験が過去に幾度となくあったかのように。

 さあ、どうするか。

 拳銃なんて物を持ち出されては対抗する手段は無い。
 相手が一人ならまだいけたかもしれないが相手は三人。しかも一人だけが銃を持っているとは考えにくい。恐らく全員が持っているだろう。
 対してこちらは一人。しかも当たり前だが武器らしい武器は何一つ無い。
 そうなると話も通じない相手に取るべき行動は一つしかない。

 一つ息を吐く。
 そしてすぐ近くの脇道へと一気に駆けた。

「待て!」

 いきなり撃つつもりはなかったのだろう、相手は安全装置を解除していなかった。即座に発砲は出来ないと判断した上での行動だ。
 後ろから追ってくる足音と怒声を聞きながら住宅街を縫うように走り抜ける。
 銃を持っている相手に直線上で逃げるのは得策ではない。出来る限り脇道から脇道へと入りつつ、住宅街の外れへと向かう。
 関係の無い人間を巻き込むわけにはいかない。このまま外れへと走れば確か巨大な倉庫が立ち並ぶ場所に出る筈だ。その倉庫で身を隠し、連絡を取る。それが今自分の取れる最善だ。
 追いつかれないよう走り続けるのは中々にきつい。息が切れ始め足も重くなっていく。それはあの男達も同じだろうがどれだけ距離が開いているかはわからない。自分自身の走る足音と呼吸音で追いかけてくる足音が聞こえづらい。
 ともかく少しでも早く身を隠さなくては。体力が尽きる前に。
 然程詳しくない住宅街を脳内の大体の方角に向けて走り続ける。何度目かわからない曲がり角を曲がる。すると突然住宅が途切れ、目の前に巨大な倉庫が立ち並ぶ敷地が現れた。此処だ。
 どこの会社の敷地だったか覚えていないが敷地を覆うフェンスの入口は開けられたままになっており、自由に出入り出来そうだ。不用心な会社に呆れつつもここは有難く侵入させてもらう事にする。
 十棟以上はあるだろう倉庫。その中で一つだけ入口が開けられているのを見つけそこに駆け込む。
 中には海外からの輸入品だろうか、大きな木箱がいくつも積まれ、視界を遮り天井が高いにも関わらず圧迫感を与えてくる。これは隠れるには好都合だ。
 入口からは見えない場所、木箱の陰に屈み、すぐにポケットからスマホを取り出す。画面には数回にわたり鉄からの着信があった事を知らせる表示が出ていたがそれに掛け直す事無くメールを開く。
 すぐ側に男達がいる可能性もある中、声を出すわけにはいかない。汗が滲む手で手早く今の状況と現在地、そして警察に連絡する旨を打ち込み鉄へと送信する。今自分が出来る事はこれで全てだ。
 木箱に凭れるように座り、上がった息を整える。その間、外から聞こえる物音や気配に神経を集中させた。

 こんな事になるのならば会社の人間に好きに尾行させておけば良かったか。恐らくあの男達は僕が一人になるのを待っていたのだろう。
 全く知らない物について訊かれ、全く意味もわからないまま脅され、追いかけられ。
 特段、特別な日だという意識は無かったが散々なクリスマスだと前髪を掻き上げる。

 警察が来るまでどれくらい時間がかかるかわからないが、それ程遅くなる事もないだろう。それまで見付からないようにしなくては。今の自分には対抗できる手段が何も無い。
 息を潜め意識を集中させた耳に聞こえてくるのは数人の走る足音と話し声。内容までは聞き取れないが感じ取れる苛立った口調に自分を追ってきた男だろうと理解する。
 この周りにはいくつもの倉庫があったが、入口がわかりやすく開いていたのは此処だけだった筈だ。あまりにも怪しいこの倉庫に男達がやって来るのは時間の問題だろう。

 …警察が来るまでは隠れていようと思っていたが、難しいかもしれないな。

 すぐに動けるようにと腰を浮かし、背凭れにしていた木箱から離れる。そして片膝を立て一層外の気配に集中させた時だった。
 外から聞こえる男達の怒鳴り声に数発の銃撃音。そして人を殴るような鈍い音に一気に気が張り詰める。
 一瞬警察が到着したのかとも思ったが恐らく違う。車が来る音もサイレンの音も全く無かった。それに警察だとしたらいきなり発砲するなんて事はまず無い。それは逆も然りで、警察相手に安易に発砲するような組はいない筈だ。
 だとしたら今外にいるのは誰だ?一体何が起きている?今の僕の状況を打開できる何かが起きたのだろうか。
 全く外の状況がわからないが、第三者が現れたのは確かだろう。果たして敵か、味方か。
 この国の日常ではそうそう聞く事の無いであろうその音はすぐに止んだ。打って変わり静まり返る中、聞こえた一つの足音がこの倉庫に誰かが入って来た事を教えた。

 誰だ。あの男達の内の一人か。それとも全く知らぬ第三者か。

 時間が経ち引いた筈の汗が再び滲み始める。
 今不用意に動けば足音で自分の存在を知らせる事になってしまう。そうなるくらいならば。
 薄らと汗の滲む掌を握り、足音が聞こえる方をしゃがんだまま向き、構える。
 体術の心得は無いわけではないが学んでいたのはもう五年以上前、学生の時だ。しかも護身術が中心で真っ向から相手と対峙し打ち負かすようなものではない。
 相手がどんな人間かはわからないが、格闘技を習得しているような人間だった場合太刀打ちできるとは正直あまり思えない。
 だがこちらが先手を取れば。
 足早に近付いてきた足音がすぐ側から聞こえる。まるでこちらの場所がわかっているかのように。
 体勢を低くし、気配を消す。息を押し殺す。木箱の陰から人の姿が見えた瞬間に一撃を食らわす。そのつもりだった。
 その人物の姿を見る瞬間までは。

「…っ!」

 靴の先が見えた瞬間、繰り出した右手の拳を相手に当たる寸前で止めた。
 埃っぽく、積み上がる木箱で薄暗いこの場所でも鮮やかに輝く銀色が視界に飛び込んできた。

「何故君が此処に…」

 あれ程会いたいと願っていた人物が突然現れた。それもこんな場所で。
 驚きに瞠目し、声が掠れる。
 そんな僕に目の前の彼は翠眼に悲痛な色を浮かべ、苦しそうにくしゃりと顔を歪ませた。

「雲雀…!」

 どくりと心臓が鳴った。
 羽月鴒人が僕の前世の名前を呼ぶ。悲愴なまでの表情で。

 その似た光景を、僕は見た気がした。ずっと昔に。

「怪我は…!?」

 僕より余程汗を滲ませ、呼吸を乱しながら僕の肩を掴み無事を確認する。その様子から彼が急ぎ此処に来た事が窺えた。
 あれ程までに距離を置こうとしていた彼が、危険であろうとわかっていながらも僕の為に。

「怪我は無い。大丈夫だよ」
「…そうか…」

 良かった、と消え入りそうな声で呟き、そのままずるずるとしゃがみ込む。
 僕の肩に置かれたままの手が震えていた。

「…何故此処に?」
「草壁から連絡がきて…お前が危ないって…それで…」

 草壁。聞き慣れない名前だ。
 けれど僕のこの状況を知っているとなると鉄しかいない。恐らくそれが鉄の前世での名前なのだろう。

 雲雀、そして草壁。

 彼の口から飛び出す前世の名前に違和感を覚える。
 彼は今まで前世に関する事を口にしようとしなかった。鉄との関りを尋ねても嘘を吐き、僕の事を雲雀と呼んだ直後から着信拒否をして関りを断とうとするぐらいに僕に知られる事を恐れていた筈だ。
 僕に知られないようにと今までかなり神経を使っていたように思う。それ程までに彼の言動は何も知らなかった僕から見ても慎重さを感じるものだったし、気を張り詰めているのもわかっていた。
 にもかかわらず今の彼からはそれが感じられない。以前の彼では考えられない、するりと出た言葉達。そんな彼が纏う空気は張り詰めたものはどこにも無く、不安と焦りで揺らいでいるように見えた。

 彼に何が。

 そう思い、翡翠を覗いて全てを察した。
 僕を見つめる瞳は不安定に揺れ、焦点が合ってるはずなのに合ってないように感じる。

 彼は今、現実と前世の境目が曖昧になってしまっている。

 何故そうなったかはわからない。
 恐らくだが、僕が危険に冒されたという事で焦りや惧れといったものに襲われ冷静さを極度に欠いてしまったのだろうと思うが、そもそも何故そこまで彼が取り乱しているのかがわからない。
 特段親しいわけでもない僕で何故。
 もしかしたらこれもまた、前世が関係しているのだろうか。羽月鴒人は僕の記憶が戻る事を何よりも恐れていると、あの気に食わない男は言っていた。その恐れている過去が今こうして彼から冷静さを奪い、苦しめているのだとしたら。

 自分は何も知らない。前世の事も、彼の事も。それがこんなにも辛い。
 何も知らない自分には彼の苦しみを理解する事も分かち合う事も何も出来ず、只瞳を揺らし顔を歪める彼を見つめ、痛む胸に息を詰めるだけ。
 せめて彼の震えを止めたくて、肩に乗せられたままの白い手に触れた。その手は汗ばんでいるにも関わらず酷く冷たくて、また胸が軋む。

 胸の奥深く、魂が叫んでいる。思い出したいと、思い出せと。
 彼を独りにするなと叫ぶ胸の内に奥歯を噛む。

 何故思い出せない。

 こんなにも近くにいるのに遠い彼を抱き締め、温めたくて仕様が無かった。



 普段の精神状況とは程遠い男が二人。周りの状況に気付けないのは当然だったのかもしれない。

「見つけたぞ!」

 すぐ近くから聞こえた声に即座に顔を上げる。そこには僕を追ってきた男とは違う、けれど同じように黒スーツに堅気とは思えない風体の男が銃口を向け立っていた。
 ある程度予想はしていたがやはりあの男達は僕を追いつつも仲間と連絡を取っていたようだ。
 目の前で男が銃の安全装置を外す。それを見た瞬間、僕の体は勝手に動いていた。
 すぐ側の羽月鴒人の腕を掴んで引っ張り、男に背を向ける形で抱き込む。無意識で取ったその行動は本能に近く思えた。

 彼を失いたくなかった。

 抱き込んだ細い体が暴れ、雲雀と何回も叫ぶのを無視して腕に力を込める。
 次に来るのは銃弾が体を貫く痛みか、それとも拳や蹴りによる衝撃か。けれどもそのどれも訪れる事は無かった。
 背後から聞こえたのは男の呻き声と体が倒れ込む音。そして。

「どうやら無事なようですね」

 ぼろぼろになった貴方を笑いたかったのですが、と人を不快にさせる声が聞こえ振り向く。
 そこには不愉快極まりない男、霧崎瑪瑙がやはり不快な笑みを浮かべ立っていた。

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