正反対
気が付けば、いつもソイツとつるむようになっていた。つーか気付けばいつもソイツが側に寄ってくるようになっていた。飯も昼休みも小便も、何故か気が付けばいつも隣にいる。
「ギョーザ食いてぇな」
「あ、いいねぇ。ちょー食いたくなってた」
「行くか」
ほらまた、すぐ笑う。
「二人乗りとか照れちゃうじゃんー♥」
「しがみつくんじゃねぇよ気色悪ィ」
「っあは、落ちるって」
昼休みに抜け出してバイクぶっ飛ばして飯食いに出て、戻る気にもなれずにゲーセンにまで連れられた。
「凌ちんさ、もうちょっと可愛く出来ないわけ?プリクラだよ?」
「何で男二人でそんなモン撮らなきゃならねぇんだよ!馬鹿じゃねぇのか」
「ほらちょっとにこってしてみ?」
「…………」
言われた通りにしてやれば都が思い切り吹き出してげらげら笑う。
「ぶっ殺すぞてめぇ」
「いやっ…ふは、可愛いと思うよ」
「それもそれで腹立つな」
プリクラの半分を手渡されて何となくそれをぼんやり眺める。中学時代なんかは喧嘩ばかりしていたし、こんなガキの遊び場に来るような事もなかった。蓋を開けてみりゃ俺と都は正反対だ。
都は普通に生きて普通に遊んで、すげぇ普通。俺のような奴等になんか関わり合いもなかったろう。
「てめぇ、鏑木凌だろ?」
ゲーセンを出てすぐに、ぐいっと胸ぐらを掴まれる。見やればそれは俺のような奴等だ。都とは違う。それは、こっちの世界の話だ。
「おい都お前先戻ってろよ、俺は遊んでやらなきゃならねぇから」
「………あ、いや奇遇っすねぇ!俺同じ中学だった新屋っていうんですけどぉー」
不意に、都がやんわりとその男の手を俺から離させた。
「いや先輩凄かったっすよねぇ、中学ん頃!先輩が卒業してからも武勇伝語り継がれてたんすよ。あ!良かったら握手して貰えませんか!俺ずっと憧れてたんすよぉー」
「あ?あぁ……」
都が擦り寄っていってソイツの手を取ると、普通に連れていって何やら話し出す。知り合いかよ。マジでか?都が?そういう知り合いがいんのかよ。
「んじゃな」
「はい!有難うございました!」
その男らが立ち去ると、都は盛大に溜め息をつく。
「誰あれ?凌ちん知り合い?」
「は?お前、同じ中学なんじゃねぇの」
「嘘に決まってるでしょ」
都がにっと笑って、正直ちょっと引く。
「天性のペテン野郎だな、お前」
「痛いのとか嫌だし、柔よく剛を制すってね」
俺と都は本当に正反対だ。
都が柔よく剛を制するのなら、俺は剛良く柔を絶つ。それほどに正反対だけれど、それでも居心地は悪くない。むしろ、二人いれば何だってやれるような気までしてしまう。
多分そういうモンなんだろう。友達なんてのは慣れちゃいないが、多分そうやって補い合うようなモンなんだ。
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