第一話
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私はいつの間にか、またこの学校の生徒として在籍していた。
しかし着ているのは赤いローブ。
もし輪廻転生を信じるならば、私は今、前世の記憶を持ったまま来世へと転生したことになるのだろう。
しかし、現世の記憶は、まるでない。
前世の記憶を信じるならば、ここはホグワーツの医務室である。
そして、現世の私でわかることは、私は頭を強く強打したようであることだけだ。

さっとベッドサイドのカーテンが開けられ、校医が顔を出す。この人は一体何歳なのだろう。顔を出した人はマダムポンフリーだった。
「目が覚めたのね、気分は?」
上ずった声で私に尋ねる。その間も彼女は忙しなく動いていた。
「気分は悪くありません。しかし頭痛があります。それと、記憶がありません。」
記憶が無いと言っても、マダムは顔色を変えない。この世界ではよくある話だ。
「そう。どこまで覚えているの?」
「わかりません。この学校と、マダムのことはわかります。しかし自分の名前はわかりません。学校に入ってから、いいえ、自分が生まれてからの記憶がありません。」
「また厄介なことになりましたね、ミスターブレイブ。」
「ブレイブというのですね。私のファーストネームは何というのでしょうか。よければ教えていただけませんか?」
「ええ。ウィル=ブレイブ。これがあなたのフルネームですよ。少しのプロフィールもお伝えしておきましょうか?」
「お願いします。」
「ウィル=ブレイブ、あなたの名前です。グリフィンドールの一年生。授業の出席などには目立った問題点はありません。成績もまずまず。そう、今は年明けの二学期ですよ。わかるとは思いますが。問題行動などは…そうですね、ありません。」
問題行動のところでマダムが言いよどんだのが気になったが、続きがありそうなので水を差さないで置く。
「続けてください。」
「…それなのよ。」
「それ?」
「あなたは、そんなにお行儀のいいこではなかったわ。」


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