壊れていたのは僕Smaaaaash!!
「はぁっ…はぁっ…」
キャインキャイン、と僕が今バットで倒した犬が、傷つき、足を引きずりながら必死で逃げていく。
その悲痛な声をきくたびに、僕に何か小さな電流が走った。
背筋がゾクゾクする。
快感にもにた、それ。
そしてそんな感覚を持つ自分に、またゾクりとした。
僕は、もう何十、何百と敵を倒してきた。
そしてそのたびに、胸の中に何か黒いものが溜まっていく。
「ニンテン、やったわね!」
「また強くなったみたいだね、君」
「うん…ありがとう…」
アナとロイドに賞賛されても、その黒いものは無くなることはなかった。
『認めちまえよ』
ふいに聞こえたその声。
「………」
僕は無視した。
『わかってんだろ?その正体』
また聞こえた。
「…うるさい」
今度は無視できなかった。
何故なら、きっとどこかでこいつの存在を認知している自分がいたから。
『おい、素直になれよ』
「うるさいっ!!」
ちゃぷん…
僕は真っ黒な世界に入った。
ここには、僕しかいない。
僕は、僕を睨みつけた。
「怖い顔すんなってー」
「なんなんだよ、お前!いきなり僕の前に現れて!」
「僕?僕は君さ。前にも言ったろ。」
「信じ…られるわけ…」
否、信じられるからこそ、信じたくない。
認めてしまったら、そこで終わり。
この体を乗っ取られてしまうだろう。
「やだ、…やめろっ!」
「何を?僕はなんにもしてないよ?」
「消えろ…!お前なんて!消えろ!お前は僕じゃない!!」
ぴくっ…
彼の顔が悲しみに歪む。
何で…、どうしてそんな顔をするんだ。
「…君がそう願うなら、僕は、どうしたらいいんだ」
「え…?」
「僕は君だ。僕は僕だ。僕の中の歪んだ感情が僕だ!君は僕に全てを押し付けて悪者にする…。野良犬を痛めつけて快感を覚えるんだろ、それは君がそう思ってるんだろ!」
「ち、…ちが…」
「何が違うんだよ、僕は狂ってない!狂ってるのは君だ!それを信じたくないから僕のせいにする!」
「違うっ…!」
「僕が悪魔か何かだと思っているんだろう?違うよ。僕は僕だ。君の中の、負の感情が僕なんだ」
「やめろっ!!」
「ねぇニンテン、僕を受け入れてよ」
「あ、ニンテン!気がついたのね」
「大丈夫?君急に倒れるんだもの」
「お水持ってくるわ。まってて」
ぼんやりと揺れる意識の中、僕は手探りでバットを探し、ぎゅっと握りしめた。
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