君の描いた幸せ 1/3朝食をとりに大広間へきた。
さっきまでは誰もいなくてしんとしていたのに、今は生徒や先生で賑わい、辺りにはいいにおいがたちこめている。
隣を見ると、あくびをかみころし、まださめ切らない目をこすっているセブルスがいた。
「セブー!」
向こうからたっぷりとした赤毛の女の子が走ってきた。
周りがざわつく。
その女の子が、赤い装いだったからだ。
「あ、リリー…!」
「セブ、おはよう」
「おはよう」
「よく眠れた?」
「どうだろう…。リリーは?」
そんな他愛もない会話をしている2人は気づいていないようだ。
でも僕は気づいていた。
「グリフィンドールが…」「スリザリンに…」「穢れた血…」
周りの目が、悪魔のように厳しい。
僕は気分が悪くなった。
「そちらはだぁれ?」
「ああ…同室の、ハロルドだ。」
急に自分の名前が呼ばれてびっくりした。
「まぁ、お友達ができたのね!」
「友達なんかじゃ…」
「よかったわ、私あなたの人付き合いがうまくいくか心配してたの」
「初めまして、僕はハロルド・ホルター。セブルスのことは任せてよ」
「まあ頼もしい!私はリリー・エバンズよ!」
母さん…。
目の前でにこにこと笑う、この人が僕の母さん。
いずれ死んでしまう…僕をかばって。
僕は胸がきゅうっとなった。
「やぁおはよう。セブルス、ハロルド、そして…グリフィンドールのお嬢さん。席を間違えておりますよ。」
ルシウスがとても丁寧に、うやうやしく言った。
そしてリリーの肩に手をおこうとした。
…が、そのては逆に掴まれた。
「おや、これはこれは」
「おはようルシウス。すまないね、うちの寮生が紛れ込んでいたようだ」
顔を上げると、リリーと同じ赤いローブを着た
「アーサー、寮生の管理もきちんとできないのかね偉大なグリフィンドール様は?」
アーサー・ウィーズリー。
若き日の、ロンのお父さんがいた。
ウィーズリーさんはキッと一瞬ルシウスを睨むと、リリーを連れて行った。
「何故、グリフィンドール生と一緒にいたのだね?」
僕らにだけ聞こえるような低い、小さい声でルシウスが言った。
そして僕らを交互に見て、どこかへ行ってしまった。
セブルスは何も言わず、グリフィンドールの長机の方を寂しげに見ていた。
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