黒髪の少年「イッチ年生はこっち!イッチ年生はこっち!」
懐かしい声に従い、大量の一年生の中を進んでいく。
湖に浮かんだ船のカンテラが綺麗だった。
ピーターとリーマスとははぐれてしまった。
ピーターの「ハロルドー!」と半泣きで叫ぶ声を最期に。
だから今僕は一人。
ぼーっと乗船の順番を待ちながらあたりを見渡した。
城がぼぅっと明るく照らされている。
それに向かってゆっくりと進む船。
自然と笑みがこぼれた。
そんなことをしていると、直ぐに乗船の順番がまわってきて、僕は黒髪の男の子と二人で船に乗った。
………。
船に乗ってすぐに気がついた。
この子、スネイプだ。
ずっと黙って体育座りで俯いている。
僕の方にはちらとも顔を向けなかった。
「ねぇ」
仕方がないから僕の方で声をかける。
「………」
反応は無い。
相変わらず俯いたままだった。
「僕ハロルド・ホルター。君は?」
「………セブルス・スネイプ。」
「よろしくね、セブルス」
名前を呼んだとき、少し眉間にしわを寄せた。
スネイプはそれ以上何も言ってくれなかった。
名前を言うのも非常にめんどくさそうであった。
『先生』だともう少し饒舌な気がしたけど、子供時代は無口だったのかな。
無口の理由がわかったのは、船を降りてすぐだった。
僕達のすぐ後に到着した船に、母さんが乗っていた。
スネイプはタタタッと駆け寄り、母さんに話しかけた。
「リリー、大丈夫だった?」
「何を心配してるのセブ?このお船って素敵ね!勝手に動くんですもの。魔法みたい」
「リリー、魔法だよ。」
「セブ、私楽しみだわ、ここで過ごすのが!」
「…よかった。」
「私どこの寮になるのかしら。一緒だと言いわね」
「うん…!」
なんだこの態度の差は。
父さんがいじめたくなるのもわかるような気がしてきた。
だからっていじめないけどね。
あと母さんと話してる時のあのほとばしる笑顔。
眩しいッ
そんなことを考えながら二人をみていると、マクゴナガル先生がやってきて例の組み分け控え室に案内された。
二人を見ている人がもう一人居たことを、僕はそのとき気がつかなかった。
「ホグワーツ入学おめでとう。新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席につく前に皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。………」
「組み分けの儀式がまもなく始まります」
相変わらず先生の話は長かった。
僕は一回体験しているので少し飽きてしまったが、新入生は真剣に、先生の一言一句を聞き逃すまいと耳を傾けていた。
「一例になって。ついてきてください」
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