カエルチョコ
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カタタン…
カタタン…

コンパートメントの窓から外を見る。
見慣れた景色。
だけど所々未来とは違うところがあって、見ていて飽きない。
ふぁあっとひとつ欠伸をして、また外を見る。



『え、列車でここまで来るんですか?』
『そのほうが自然じゃろう?』
『そうですけど…』
『それに、友達も増えるしのぅ』
『先生、おもしろがっていませんか…?』



「ねぇ、ここ、空いてるかな………」

列車のリズミカルな振動と、単調な景色で意識が微睡みかけてきた頃、コンパートメントのドアが開かれた。

「うん、空いてるよ」
「…!よかった………!」

ありがとう、とコンパートメントに入ってきたのはペティグリューだった。

「………どうかした?」

固まっている僕を疑問に思って、心配そうな顔で声をかけてきた。

「う、ううん。君がちょっと知り合いに似てたから…。」
「そっか」

まあ知り合いその人なんですけど。
ペティグリューは未来のあの汚らしい姿とは似ても似つかなかった。
髪はふわふわと綺麗で指通り良さそうだし、ふっくらとした体型もデブとはまた違った太り方で、幸せそうだし、ほっぺは柔らかそうで、目は優しかった。

え、誰これ。

辛うじて出っ歯は健在だった。
これでペティグリューって見分けた僕はすごい。
自分でわからないうちに色々観察していたらしい。
ペティグリューのオドオドとした態度と、他人の様子を伺うのはどうやら小さい頃からの癖のようだ。
親に可愛がられてそうなのにこんな癖がつくなんて…。

「ねぇ、新一年生だよね?僕はピーター・ペティグリュー。君の名前、聞いてもいいかな?」

はにかんだ笑顔で頬をうっすら染め、緊張のためか、多汗症なのか鼻に汗をかきながら僕に話しかけた。

一言でいうと、ペティグリューの容姿と態度は可愛らしいといえた。
嫌な言い方をすると、取り入りやすい性格。
これで父さん達も虜にしたのか。
油断すると自分の懐に入っている。
そんな感じ。
そして僕も例に漏れず、さっさとペティグリューに気を許してしまった。
なんでこんないい子が父さん達を裏切ったんだろう?

「僕はハロルド・ホルター。ハロルドでいいよ。」
「よろしくハロルド!僕のこともピーターって呼んでね」

一通り自己紹介が終わり、次は雑談しようかなと僕が口を開けた瞬間ダンッとコンパートメントの扉が開かれた。
ピーターは音に吃驚してヒッと小さく悲鳴をあげて少し飛び上がった。
僕は一瞬心臓と動きを止めてドアへ顔を向けた。
くすんだブロンドの髪を携えた男の子が肩で大きく息をしながら叫んだ。

「僕のカエルチョコが逃げたんだ!君たち知らない?」

デジャヴ。
確か一回目のホグワーツ特急でも同じようなことを言われた記憶がある。
そのときは『ペットのカエル』だったけど。

「し、知らないよ…?」
「…そっか。あ、ここいいかい?もうどこも空いてないんだ。」
「いいよ。多い方が楽しいし。」
「ありがとう」

ニコッと笑った少年のトランクについた名札を見て、僕は固まった。

【R・J・ルーピン】

よく見てみると、顔に傷は無いがたしかにリーマスだった。
鳶色の目にボロボロの服、ぼさぼさの髪に、何故か安心してしまう笑顔。
そして無類のチョコ好き。
あのリーマスに間違いなかった。


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