この世界の神様はとても気まぐれで、人の使う言葉をコロコロ変える。なぜなら、人々の意思の疎通を嫌うからだ。

世界には、数え切れないほどの言葉と文字が溢れてる。そして、毎日たくさんの言葉と文字が生まれ、変わり、死んでいく。

そのため、人々は自分の気持ちを、相手に伝える手段がない。手紙など意味がない世界なのだ。

けど、誰かに何か伝えたくて、ひたすらに手紙を書く。相手に伝えたいという思いは、手紙に閉じ込めることしか出来なかったからだ。

でもそれは、相手に伝わらない、届くことのない手紙。読まれることのない手紙。



伝えたかったこと、自分の思い、すべて手紙に閉じ込める。自分の中から消えてしまうまで。




そんな世界の片隅で、誰かは小さく願う。

「どうか、世界が少しだけ優しくなりますように。」top