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ラストノートまで楽しんで


なんとなく、こうなるだろうことは分かっていた。
なにがって、ドラコとの関係が。

自分の潜在意識に気付いたのが先か、マルフォイ家の血筋を脈々と受け継いだドラコに違和感を覚えたのが先か、なんて今となっては知る由もないしどっちでも良いけれど、寒色は寒色でも青と緑で寮が分かれ、学年が上がるにつれ、わたしたちは付き合い方を忘れてしまった。

年齢を重ね、男女の役割を意識するようになってからは尚のこと、近寄り難い。話しかけづらい。なんか、怖い。知らぬ間に取り巻きも出来ているし、わたしの出る幕は早々に無くなっていた。

校内ですれ違ったら会釈、目があったら少し笑うけど気まずくなってすぐに逸らす、挨拶は月に一度できたら言いほう。
お互いの呼び方はもっぱらファミリーネームで、昔のようにドラコ、イリア、と呼んだり呼ばれたりしなくなって結構経つ。今4年生だから、たぶんもう3年くらい経ってる。

今さらこの溝を埋め立てられるかと問われれば、無理だと思う、に尽きる。

向こうだってそれに気付いているだろうに、毎年律儀にクリスマスカードだけは送ってくるのだから義理堅い男である。

しかも今回、プレゼントも贈られてきた。
手のひらに収まるサイズの小さなものだったけれど、開けてびっくり、中身は香水だった。しかも箱の中にもメッセージカードが書かれている。



メリークリスマス。
自分用に買ったんだけど、イリアにも似合うと思う。
付けすぎるなよ。

ドラコ・マルフォイ



なんともまぁ、シンプルなメッセージだった。
けれど、彼の中でまだわたしが存在していることが少し嬉しかった。

試しに手首にワンプッシュしてみると、爽やかな森林の香りがした。

そのまま寮を飛び出て、あてもなく、ではなく、ドラコを見つけるという目的を持って校内を歩き回った。

実はわたしも、プレゼントを用意していたのだ。
しかも同じく、香水。
もちろん香りはドラコからもらったものとは違うけど、わたしが普段から愛用している香水だ。

たとえ離れていても、わたしのあげた香水を振り撒けば、わたしのことを思い出す。

だから今年のクリスマスプレゼントは香水で決まり、なんて謳い文句を載せてたあの雑誌、ドラコも多分、読んだんだろうな。

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