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引かれ男の小唄


イリアのことが嫌いになったわけじゃないけど、イリアよりチョウが、僕の目には魅力的に映った。

女の子っていうのはとても敏感で、チョウもイリアも僕がチョウのことを好きになっていると気づいていた。

それからイリアは僕と距離を置くようになり、チョウもチョウで僕に好意を示すようになった。

贅沢な三角関係に蹴りをつけたのはイリアで、僕たちの関係はただの寮が同じ生徒に元通りで。聞いた話によるとイリアは少し泣いていたとかで、ぼくもチョウもイリアの友達に睨まれたりした。

それから何日たっただろう。
イリアがグリフィンドールのウィーズリーの双子の片割れとよく一緒にいるのを見るようになった。
聞いた話によるとあれは弟のジョージ・ウィーズリーだそうだ。僕には見分けがつかないけれど。

柱の陰に隠れてこっそりキスしていたり、ベンチで仲良く杖を振っているのを見て、ああ成る程、と僕は悟った。

「ジョージすごい!なんでもできるのね」

イリアが笑う。

「なんでもじゃないよ。でもいずれそうなるぜ」

ウィーズリーが笑う。

いい人を見つけられたのなら、僕も嬉しいよ、だなんて感情よりも、なんで僕の代わりがあいつなんだ、という嫉妬のほうがはるかに上回っているのがわかった。

それを見た夜、談話室に行くとイリアがソファーに座ってた。
僕に気づくと昔みたいに優しく笑って、どうしたの、と言った。

「イリアこそどうしたの?」
「ジョージに手紙を書いてるの」
「ジョージって、あのジョージ・ウィーズリー?」
「そうよ」
「へぇ、そっか。好きなんだ?」
「ええ、好きよ」

ずきり、と胸が痛んだ。

「でも、彼はグリフィンドールだろ?別の寮」

そう言ったらイリアは怒るどころかおかしそうに笑った。

「それはセドリックも同じでしょ?自分の彼女のこと、忘れちゃったの?」
「忘れてないよ。チョウはレイブンクローだ」
「ほら。好きな人が他の寮にいたら駄目なんてことないわ」

そう言ってまた、羽ペンでさらさらと文字を書く。

「イリア」
「なに?」
「僕は、君のことが嫌いになったわけじゃないよ」
「私も、セドリックが嫌いなわけじゃないわ」
「もう一度やり直せるとしたらどうする?」
「あら愚問よ。無理ね。私は今、ジョージが一番好きなの。セドリックがチョウを一番好きなのと同じくらい」
「僕が一番好きなのは、イリアだけど」

それを聞いたイリアはぴたりと手を止めた。

カチカチ、と時計の秒針の音が何回か聞こえると、イリアは僕の顔を見た。

「でも私は、ジョージが一番好きなの。女の子って、男の子が思ってるより結構あっさりしてるんだから」

悲しいのなんて最初の三時間だけなのよ、なんて、ウィーズリーのようないたずらっ子のように笑った。

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