メイン
彼等と彼女


一人目は同じ寮の、一つ歳上の人だった。
好きになったのなんて一瞬だったが確かにあれは恋だった。なぜその恋が終わりを告げたかというと、彼の悪戯の数々にドン引きしたから。そして、いつも違う女の子と仲良くしていたから。
あの瞳が自分に向けられることはないと悟り、この恋は幕を閉じた。

二人目は、そんな彼の弟。
スリザリンの子を好きになるなんて思っていなかったけれど、同じ歳であの頭の良さ、品の良さ、素行の良さ、顔の良さ。それらが魅力的だった。自分に持ってないものを持っている。そんな彼に惹かれた。
そして兄とは違うあの落ち着きようが、とてもかっこ良く見えた。
しかし、そんな恋も終わりを告げる。一年半近く彼を思っていたけれど、寮が違うのはやはり痛手だった。仲良くなれるチャンスなんて、作りたくても作れなかった。

三人目は、同じ寮の同級生。
全く意識していなかったのに、最近は目で追う日々が続く。なんで彼のかっこよさに今まで気づかなかったんだろう、というくらい。灯台下暗しとでもいうのだろうか。
彼はそんなに笑わない。でも、真面目に新聞を読むその横顔がとても素敵だった。学生時代の最後の四年間は、ずっと彼に夢中だった。
でも結局、思いは伝えられなかった。


そして、今。

一人目は大量殺人犯と成り果てアズカバンに投獄されている。
二人目は闇の帝王の部下になったものの彼に恐れをなして野たれ死んだ。
三人目は死喰い人となり父親の手でアズカバンへ投獄。

わたし、イリア・リービッヒが恋した男達は、揃いも揃ってクズばかりだった。

これはわたしに原因があるのだろうか。
このことを知ってる友達からは一種の呪いだと揶揄されたりもするけれど、割と本気でそう思ってしまうからやめてほしい。

しかしわたしも思うのだ。
学生時代、あの三人、誰でもいいし全員でもいいけれど、友達や恋人や、はたまた敵にでもなっていたら、彼らはこんなことにはならなかったのでは、と。
文字通りなんの行動もせず、ただ好きな人を作って目で追っているだけの女では彼らの人生を変えることはできないとわたしは知った。

もしシリウス・ブラックと一緒に悪戯をしていたら。
もしレギュラス・ブラックと一緒に儚い恋に身を焦がしていたら。
もしバーテミウス・クラウチ・ジュニアと一緒に監督生をしていたら。

未来は変わっていたかもしれない。
ただわたしが彼らの特別になったからといって、彼らが変わる保証なんてどこにもない。

あの三人、今はもう生きてるのは一人だけだけど、その命尽き果てるまで、頑張って長生きしてもらいたい。

そんなことを、アズカバンを脱獄したシリウスさんの指名手配書を偶然見かけて思った。
人を殺して投獄されたのにまた脱獄するなんて、彼はもしかしたら三人の中で一番クズなのかもしれない。

「あほだなぁ、あの人…」

そんな呟きが真冬の空に消える。

そしてそんなクズであほな人と偶然の再会を果たすなんて、思ってもみなかった。

back

- ナノ -