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騎士団裁判2


一時間後(本当は30秒後)。
二人を落ち着かせた裁判長はさっきの話し合いをまとめた。

「被告人の主張。子供に人狼が移るのが怖い。それに対し本人は結婚に意欲的。子作りにも意欲的。だがしかし子作りならば子ができるのが当たり前」
「つけなければね」
「弁護人、ナイスフォローだ」

と、シリウスとイリアが親指を立ててお互いを賛辞しあう子芝居を目の前で見ているリーマスは、笑いながらため息をついた。

「しかし本人は口頭尋問ではっきり結婚は子作りではないと断言。言ってることが滅茶苦茶だぞリーマス」
「それは君のまとめ方のせいじゃないかな」
「だからつまりアレだろ?結婚ってのは子作りしなきゃいけないわけじゃないって自分でもわかってるんだったら、無理して子供を作らなくてもいいんだよ。お前が怖いなら、トンクスもそれはわかってくれるはずだ」
「でも!女性には母性愛があるだろう?自分たちの子供が欲しいとか、自分で子供を育てたいとかあるだろ?」
「イリア、お前の意見は?」
「ない。全然。痛い思いをしてまで家族を増やそうなんて思わない」
「…」

イリアの言葉にリーマスはかける言葉が見つからなかった。

「ほら、リーマス。これが女の本音だ」
「いやこれは特殊なほうだろう!?トンクスの弁護人っていうけどイリアは…」
「まぁ待ちなさいよMr.ルーピン。あなたは子供が欲しいの?いろいろあるけどまずはこれが大切よ」

Mr.ルーピンとまるで他人行儀の呼び方をしたことで、ここがまた法廷に変わった。

リーマスは腕を組んだ。昔から何かを考える時、彼はいつもこのポーズをする。
深く考えている合図。友人二人はじっとそれを見つめていた。

「…わからない。でも、トンクスが欲しいというのなら…一緒に育てていきたいと思うよ」
「裁判長、被告人は今結婚してもいない歳下の女性の名前を上げました。つまりもう、彼には彼女との未来予想図が」
「よし、閉廷!」
「いや早いよ!まだ何の解決にもなってない!」
「なってるだろ!自分のコンプレックスを子供に押し付けてビビってるだけだったんだよお前は!」
「いい加減腹くくりなさい。歳の差なんて気にするほどトンクスは細かい女じゃないわ」
「80代のジジイが16の娘と結婚した話もある」
「お金は確かに大切だけど、あなたの収入とトンクス家の財産ならなんとかなる。この前トンクスが必死に計算してたわ」
「あの空っぽの脳味噌でな。困る時もあるだろうよ。でも騎士団を見てみろ。モリーとアーサーっていう心強い味方がいるだろ!俺たちだって子守りくらいできる」
「そして第一に!トンクスはあなたの人狼を理解してる。それも含めてあなたのことが好きって言ってるの。おわかり?」
「判決!さっさとプロポーズして式の日取りを決めろ!以上!閉廷!」

そして最後にパァン! と裁判長と弁護人はハイタッチした。

あっけらかんとして二人を見つめるリーマス。
そんなリーマスには目もくれず、二人は法廷(騎士団本部ブラック家のダイニングルーム)から出ていった。

そしてその後すぐ、耳まで真っ赤なトンクスが遠慮がちに部屋に入って来たのだった。

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