とりあえず


ジリリリリンと騒音を奏でる目覚まし時計を手探りで止め、朝が来たことをぼんやりと考える

ふと腕のなかに眠る人物に目をやればすぅすぅと寝息をたてている
幸せそうに眠る人物こそ清明の孫の生まれ変わりで、今は孫娘である
そんな孫娘と結婚して子を儲けて…………まぁ順番は逆であったが……

そんなこんなで一緒に居るのがなんだか可笑しくて十二神将の一人青龍はほんのり笑みを浮かべた

「おい、いい加減起きろ」

と声をかけても当然起きるわけもなく、頬をつねったり伸ばしてみる
襲ってやろうかなんて考えていると、ぼんやりと大きな目が開く

「…青龍おはよ…、って朝!!」

そうして勢いよく起きると朝御飯が!お弁当が!なんて騒ぎながら慌てて服を着る

「青龍は翔起こしてきて!あとえーっと…」
「チッ、これだからもっと早く起きればいいものを…今日は弁当はいい」
「嫌だ!作る!!」

そういってカーペットに足をひっかけそうになりながら台所に向かう昌浩をやれやれと見送ってスーツに着替える


コンコンとノックして息子の翔の部屋に入ればまだ眠っているようで、青龍はベッドに腰かけた


「………狸寝入りか、翔」
「うー…えっと、その、父上に起こして欲しくて」

ばつが悪そうに布団を被る我が子を起こして早く着替えてこいと促すと、はい!と元気に自分と似た容姿答えるのだから、なんとなく違和感があるが、性格は自分に似なくて良かったなんて思う


朝食は急いで作りました感満載のもので味噌汁と焼き鮭、白ご飯
まぁ…いいよね。
と思って用意した昌浩であったが、青龍にはバレバレだったようで、また冷食かと視線で文句を言われた気がする

それでも可愛い我が子は
「母上のごはんおいしいです」
と満悦の笑みで言ってくれるのだから朝のちょっとピリピリした空気が和んだ



「母上、いってきます!」
「ちゃんと今日も風音先生の言うこと聞かなきゃダメだよ」
幼稚園に行く息子をぎゅうっと抱きしめる

「青龍はい、これお弁当。あと今日俺さ…」
手渡された弁当と一緒に昌浩も引っ張って、そのまま抱きしめる
「ちょっと、恥ずかしいんだけど…いっつもこんな風にしないくせに」
「気が向いただけだ」





「………邪魔したか?」
ガチャリと玄関の扉を開けてしまったのは六合で、その姿を見るやいなや固まってしまった青龍をよそめに、息子の翔は「だんなだー!」と駆けよって高い高いをしてもらっている

「六合、何故ここに」
「だから俺今日じい様のお使いに行くって言おうとしてたのに、あ、六合は俺のお迎え兼護衛で…」

そういうことは早く言えとか、言いたい事も言えないこんな世の中じゃとか、とにかく朝からどっと疲れた

「…青龍」
「なんだ」
「早くしないと幼稚園の時間に遅れるが」

いいのか、と言い終わらない内に行ってくると玄関を出てマンションの下の駐車場に向かう
翔を送り届けて会社に着く頃には1日の仕事が終わったくらい疲れてるんじゃなかろうか、なんて思いながら




(なんか朝からばたばたしてごめんね、すぐ用意するから)
(昌浩)
(ん?なに?)
(なるべく首が隠れる服がいいと思うが…)
(………え″っ!?)

 

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