気付けば暗闇の中にいた
十二神将の一人、青龍はまたひとつ眉間に皺を寄せるとあたりを見回した
異界でもなさそうなここは夢のような現実のような
兎に角も打開策はないかと暗闇を歩く
暫く歩くと見慣れた見たくもないものがいるのが分かる
それは十二神将最凶であるとか凶将であるとかそういうのも相まってか、暗闇の中に突っ立っているというのは些か不気味であった
しかし背には変えれないというやつで、ここは何処なのか聞かなければしょうがない
渋々歩み寄ると騰蛇の手には握り拳大の何かが動いている
腕はぐっしょりと濡れ、衣には点々と黒いシミ
ああ、あれは心臓なんだなと分かった瞬間、騰蛇の足元に転がっている見慣れた狩衣に栗色の―――
目を覚ますとそこは安部邸であった
辺りが暗くなっているところをみるとかなりの時間眠ってしまっていたらしい
ということは今まで見たのは夢で…
にしても妙に生々しい夢だった
青龍は舌打ちをすると真夜中なのを気にもせずドタドタと足音を立てて歩いていった
安部昌浩は今日も夜警を終え遅めの床についた
相方のもっくんと六合は祖父に異常がなかったこと、雑鬼に潰される自分の報告でもしているのではないかと考えながら眠りにつこうとしたその時、向こうから足音が聞こえてきた
まさかこの家に盗人でも?
いえいえ、盗むものなんてこの家にあっただろうか
ああでも彰子の顔でも見られたらまずいのではないかと考え、襖に手を伸ばしたと同時にバシンと開いたそこには
「青龍!?」
意外な人物はそれはそれは不機嫌MAXで太陰あたりが見たら泣いてしまいそうだ
「え、え?どうかしたの?」
青龍は一瞬今にも泣き出しそうな目をしたかと思うと、ゆっくり昌浩に歩み寄り膝をつく
益々訳がわからないと昌浩が青龍の顔を覗きこんだときガバッと着ていた小袖をはだけさせられた
人間あまりに驚くと声が出ないものだとか、そんな悠長に考えている場合じゃなくて
「ちょ………!?ギャーーッ!?青龍!?」
青龍はというと胸の傷が無いことを確かめるとギュウと昌浩の胸に顔を埋める
なんだがよくはわからないが、普段は冷たい印象しかない神将のただならぬ様子によしよしと雨色の髪を撫でる
「………じい様と喧嘩でもしたの?」
「………………否」
(なにそれ、もしかして俺が死んじゃうとか?)
(…………)
(昌浩まだ起きて…おうゎっ!?青龍)
(……チッ)
(昌浩に何をしてんだこのすっとこどっこい!!)
(…!もとはと言えばお前が!!)
(俺明日早いんだけどなぁ……)
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