確かに誰かを巻き込むわけにはいかない、と足早に家へ帰ると玄関の前で甲斐がしゃがんで漫画を読んでいた。 会う約束をしていたわけではないが遊びに来たのだろう。何か大事な話があるというような緊迫した様子もなく、むしろ読み進めることに夢中になっている。 「裕次郎、中入れー」 鍵を取り出しながら言うと、あれだけ夢中になっていた漫画をあっさり閉じて鞄に突っ込んで立ち上がった。 「なー寛、永四郎から聞いたんだけど」 「……ん、ああ……」 自室に着いて鞄を下ろしながら知念は思わず苦笑を浮かべてしまう。 木手や平古場に施されたことは省いて、大変な思いをしたが今はもうだいぶ落ち着いているのだと伝えると、つまらなそうに溜め息を吐いて鞄からビニール袋を取り出した。 引っ繰り返されて出てきたものは、大きめの何かの軟膏と、薬らしき物が入った箱である。箱にはよく効く!とも書いてある。 それを見つめて僅かに首を傾げた知念に、甲斐はもう一度溜め息をくれてやる。 「もういいのかもしれないけど、俺は寛とシたくて。よく分からんけど兄ちゃんの部屋から持って来たんばーよ」 「ゆ、裕次郎……」 ありがとう、と呟く。どんなことであれ、きっと甲斐は自分を思いやってくれているのだろうと知念は感じた。 甲斐は溜め息を吐いた時とは一変した表情で謎の箱をひょいと取り上げ、開けて中身を数粒取り出すと知念の手を取ってそれを乗せた。 形状はごくごく小さな透明のカプセル、である。薬のようなものなら飲めという催促なのだろうが、何せ得体の知れない物体なので知念は躊躇った。 「大丈夫。なんくるないさー、俺も飲んでみたし」 「あぎじゃびよー……」 そこまでされては拒否する気も起きない。何が起こるか分からない実験のようなものだ。 渡されたペットボトルを受け取って一気に飲み込む。突然何かが変わるわけでもないらしいので、本を読んで過ごすことにした。 *** 「あ、あっ…ゆ、ゆうじろ…っい、ッ」 「でーじえろい、寛のここ」 膝を立てて寝転んだ知念の片足を上げさせて後孔に指を二本捻じ込みながら、甲斐は興奮を隠せない様子で笑う。 体質のせいかあれから間もなく知念だけに大きく効果があらわれて、前が限界まで硬く勃ち上がってしまった。甲斐は容赦なく押し倒し、ズボンと下着を剥ぎ取るようにすると、早業で軟膏を指に出して秘部に押し当てたのだった。 ゆっくり時間を掛けて拡げることもしなかったのに、指を飲み込むのに苦痛は伴わなかった。 ただ痛いほどに快楽が高まり、早く出してしまいたいのに甲斐は触ってくれない。自ら手を伸ばせば除けられてしまう。 「裕次郎…っふあ、あっ」 「アレ、何の効果が出るか分かってたんさー、だから寛みたいな奴が使ったらどうなっちゃうのかなーって思って」 ギラついた瞳と視線がかち合い、知念の背にぞくりと寒気のようなものが走った。 本当に壊れてしまいそうだというのに、甲斐は残酷なことをする。 正しく実験だったわけだ。 「い、イきたい…いぃ…っ」 甲斐の服を関節が白くなるほど掴んで懇願するが、返事の代わりにぐちぐちと後孔を弄られる。 時々足される軟膏が音を大きくして、激しく出し入れされていると知り、知念はとうとう涙を零して擦れた喘ぎを漏らした。 その様をも観察するようにじっくりと見つめ、甲斐は自分の下肢へ片手を伸ばした。それもまた硬くなり、解放を待っている。 唇を舐め、甲斐は前をくつろげた。 知念の穴に指を抽挿させながら下着から性器を露出させる。 「ふ…う…っゆうじろ、いれる、ばー?」 「ん、後で」 「後!?って、ア、ッあっ」 中のひと際感じるところをぬるぬると擦ってやりながら、甲斐は自らの手で自慰を始めた。 どちらのものとも言えない濡れた音が続き、知念はとうとう射精せずに絶頂を迎えて強く目を瞑った。と、指を抜いて移動した甲斐が顔を跨ぐようにし、唇をこじ開けて知念の口内へ白濁を吐き出した。 広がる苦味よりも熱が、甘美に感じる身体に沁み渡るようだった。 小さく震えながら手を添えて更に放出を促すように扱くと、甲斐の腰は抜けそうになって揺れた。 「寛…しんけん煽りすぎ」 「裕次郎は…焦らしすぎだばー…」 あやしいカプセルのせいか、熱は治まる気配もない。そのまま2人は行為を続けた。 おかげで知念は体調を取り戻したが、甲斐は翌日腰のダルさに部活で本調子になれず、木手に怒鳴られるのだった。 |