アレ、癖になりそう | ナノ

アレ、癖になりそう


時間の合間を縫ってやってきたトイレで、凛は個室に俺を押し込めるなり強く抱き着いてきた。ぎゅっとしっかり回された腕の邪魔をすることなく、腰辺りを撫でてやる。
俯くと凛のつむじが見えて、なんだかそこに口付けを落としてみたくなったが、嫌がるかと考え直し、やめておく。

腕の力がやや弱まったところで顔を上げた凛が座るよう促すので便座に蓋をして座った。そうすると当然、俺の方が低くなる。
満足そうな表情の中には色気も混じっていた。

目的は、人前で出来ないようなこと。

合宿で一度も触れ合う機会はないだろうと思っていたが案外そうでもないようで。それが叶うと思うと嬉しい、と思ったりする。
同じ部屋であってもそういう雰囲気を出す気にはなれないし、周りにも迷惑だから、誰も見ていないところでは目一杯甘えてやろう。手を上にやり、凛の髪の先を軽く引くと屈んで俺の望むものをくれた。

啄むように軽い口付けを繰り返しながら凛の開けっ放しのジャージに手を滑らせる。中のTシャツをなぞって、優しく胸元から腹筋にかけて触れた。そしてハーフパンツの上から中心を撫でてやる。
唇が離れると凛は俺の首筋に無理矢理顔を埋めてきた。


「知念、…はぁ…っ」
「…ん…」
「あー、勃ちそ…」


耳に掛かる息が熱くて、吹き込まれる声が擦れていて、心臓が壊れそうなくらいにばくばく音を速める。
俺がそうしているのを止めず、凛の手も動き出した。狙いを定めていたみたいにいきなり股間を掴まれる。びく、と跳ねた身体に凛は笑った。掴んだ手は次第に揉むように動き、硬くさせようとする。気持ちがいい、と素直に言うと、俺も、と返ってきた。


「入れたいんだけど、ダメ?」


ダメ、と言いたい。過酷な練習もある。
でも、凛と一つになる快楽を知っている俺は久しぶりのその感覚を思うと簡単に断れなかった。辛くて違和感が残るのは自分なのに。


「いい。しよう…」
「今日は意地張らないのな」
「……」
「永四郎にゴム貰ったから。用意いいだろ」


一旦離された手がポケットへ入り、コンドームの袋が現れた。いつも見るのとは違うので、手渡された俺は繁々と観察してしまった。
しかも木手が使っている、ということなのだろうか。そして今も常備していると考えていいのか。思っていたより進んでいる木手の性事情に少しばかりショックを受けたが、今は心の中で感謝する。

凛が躊躇い無くハーフパンツと下着を下げると性器が露になった。完勃ちさせる為か自分で扱いてみせてきたりして、無駄にいやらしい。俺の手からコンドームを取り上げ、早速破いて中身を出したが、それを見て俺達は固まった。

広げてみると無数の突起。その突起は場所によって小さかったり大きかったりしている。


「ローション付きなのは嬉しいけど…これってどうなんだ?永四郎、相当変わってんな」
「…痛くないのか?」
「俺こういうのって女に合わせてあるやつしか知らないんだけど。…やめるか?」


明らかに普通ではない見た目だったが、やめたくはなかったので首を横に振る。
装着は難なく出来たようで、本人はサイズも悪くないと言う。


「先に知念の準備しておけば良かったな…このまま動くのはかなり笑える。つーか萎える?」
「いや、大丈夫…」


便座から腰を浮かせてジャージと下着に手をかける。そのまま下ろしたところで凛が「それ、えろい」などと言うから思わず股間を抑えてしまった。


「ジャージの裾から見えるか見えないかって感じがえろいな」
「何回も言うな」
「まあまあ、どうせ脚開くんだからよ」


凛の手が太腿に触れる。肌をくっつけられた箇所が熱い。
そろりと膝を動かすと、自分で脚を持つように言われた。言葉を失ったが、いつまでもトイレに篭る訳にはいかない。興奮に任せて、ということにして膝裏に手を入れ、後ろのタンクに背を預けるようにして脚を上げる。
上のジャージに隠された部分が軽く布を押し上げて見えるのが今更ながら恥ずかしい。


「そのままでいろよ…」


囁く声が響きそうで怖い。
片手で尻の狭間を明かすようにされる。コンドームがまとう粘液を指にたっぷり乗せる様がやけに淫ら。程無くして体内に侵入してきた指の感触に目を瞑って耐えた。
息を吐きながら受け入れる準備を手伝い、溶けていくまで待つ。
その間も、人工的な濡れた音がぐちゅぐちゅと鳴っていた。
久しぶりなので硬くなってしまったのか、凛はゆっくりと解していく。


「だいぶ開いたかな。痛くない?」
「ん、…大丈夫……っ」


抉るようにして抜け出た指に膝が跳ねる。
また体を屈めて凛が熱い切っ先をあてがってきた。もう少しやり易い格好になろうかと提案したけれど、俺の今の格好を気に入っているからと言ってそのまま腰を進めてきた。挿入は苦しくて息を詰めそうになるが、目の前にある顔も堪えているようだった。
大きく息を吐いていると、突然ずるりと大きな質量が入り込み、思わず呻く。


「う、っ…ッ」
「悪い、ちね、…やべ、全部入っちゃった……慣れるまで待つから」


こくりと頷いて、鈍痛が早く過ぎるのを願う。だけど、確かに痛みはあるのに、ナカにいると思うと疼くから不思議だ。
首筋に顔を埋められて、くすぐったさに肩を竦めそうになる。息がかかると、熱に浮かされたみたいに意識がぼんやりとしてきた。


「そろそろ、いい?」
「う、ん……く、あっ」
「あ。声あんまり、な…?」


言わんとしていることに頷きながら、抜き挿しされる感触に震える。出入りする度に粘液と空気が交じり合って妙な音を立てた。
便器は軋み、断続的に蓋と擦れる音をさせている。
俺の息遣いと凛の動きもそれと同じ間隔で。

こんなところで、こんなことをしていい訳がない。悪いことをしている。申し訳ないと思うところもあるけれど、今与えられる快楽しか求められない。
思い切りしがみ付きたいが、両手は塞がっている。


「は……っ、ん…ッりん、…っ」
「うん、なに、気持ちいい?」
「い、いい…っ」


いいところを的確に擦られ、ジャージに当たっている自分の性器も先走りを滲ませているだろう。こんなに気持ちがいいのに、耐えなくてはいけない。元より大声で喘ぐことはないが、声を抑えるというのは思っていたより大変だ。
それに、着けているコンドームの所為で感じ方が違う気がした。
俺は膝を自分に寄せるようにして手を伸ばし、凛のジャージを引き寄せた。


「ん…どした?」
「はぁ…っは、…ナカ、熱くて、」
「中?」
「コンドーム、変なの着いてたろ、…っだから、なんか、…変、で」
「ああ!忘れてた」


ずるずると抜けて、先っぽだけが体内に残る。ぶるりと大袈裟に震える俺をよそに、凛はそこを観察しているようだった。


「コレな、…痛くないんだ?」
「とりあえず、今は…、平気…」
「擦られると、イイわけ?」
「あっあっ…待て!…っ動くって言ってから、動け…っ」
「面白いなー、永四郎に後でもう一個もらお」


突起の多いところで擦られ続けて、俺はとうとう自分のジャージに放ってしまった。ジャージの内側でぬめり、動きに合わせて捏ねられる。


「ぁ、…ッいま出た、のに、」
「もうちょっと付き合えよ…っ俺イってないから」
「んっ、んんっ…っ」


凛が達する頃にはすっかり身体が熟しきり、俺は再度懇願する羽目になったが、時間切れ。
その時はとにかく片付けが大変だった。自分を静める以上に。





「コンドーム、本当に使ったの?」
「だってくれたから」
「……ごめんね、知念クン」


木手が凛に呆れたように溜め息を吐きつつ謝ってくれたが、返す言葉がなかった。
本当は痛みよりも気持ち良さの方が印象的だったのだが。


「永四郎、また使うからちょうだい」
「嫌です。知念クンが可哀想でしょう」
「ケチ」

「……」


いや、やっぱり言えない。






2012.10.14
下品!笑
今回もファンタジー満載です。
知念くんは大きいから個室系はきつそうだなと思いつつ。
立ちバックも辛そうですがいつかさせたいですね。




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