愛し続ければ万事解決 | ナノ

愛し続ければ万事解決



※小春とユウジが出ます。


合宿所に来てから、ダビデは他校にも友達が出来たらしくよく笑っているのを見掛ける。きついトレーニングと競争を繰り返している中に楽しさを見つけられて何よりだ。俺も新たな話し相手が出来たりして、新鮮で嬉しい。

ある夜の事。
同部屋の金色が俺に声を掛けてきた。最初はふざけていただけだったのに、急に真剣な表情を見せてきたりして、真顔になるとこいつ怖いな、と思ったりした。


「どうした?金色…何か俺に言いたい事でもあるのか?」

「黒羽くんって、禁欲的ねぇ」

「きんよく…?」

「いい子。ほんまに」

「う、ん?そんなんでもねぇけど…」


育ちとか、口調とか、見た目とか、自分のところどころを掻い摘んでみてもいい子と言えるとは思えない。特別悪い事をした試しも無いから、どちらかと言えば良い評価になるのかもしれないが。


「あ。アタシね、これからユウくんとちょっと居なくなるわ。誰か来たら適当に言って?」


適当って、金色はこんなにざっくりした物言いをする奴かと疑問に思ったし、さっきのいい子の話はどうなったんだろうとも考える。が、何より先に頷いて承諾していた。まあ、何とかするさ。


「って言っても、一氏は「小春ー」


言葉を遮るようにして戸の開く音と声が重なってきた。目を遣ると、一氏と、その後ろにダビデ。


「お、なんや二人っきりで。浮気か!」

「そんなんちゃうよ。分かってるくせに」

「分かってても嫌や!小春は俺と一緒に居ればええ!」


なんて強引な。
一氏はずかずかと金色に寄って、何も構うものかとばかりに抱き寄せた。似たような体格な所為かそれほど衝撃を受けた様子もないが、金色は溜め息を吐いている。だけど、嫌そうな顔をしたのは一瞬に近くて、一氏を促して手を繋いで部屋を出て行く。


「ほなね、黒羽くん、天根くん。男前二人が並ぶと素敵やわぁ、ロックオン!」

「俺だけ見とけって言うてるやろー、小春は意地悪やな!」


俺だけ、俺だけって。一氏は金色が嫌な顔したりしてんの分かってるのか。
静かに戸が閉まり、話し声が遠退いていく。ダビデが俺の方へ向き、首を傾げたので金色が言っていた事を伝えた。戻るのに時間掛かるかもな、と付け加えると、結んでいた唇を綻ばせて俺が座っているベッドに腰掛けてきた。ぎしりと鳴って、ぴたりとくっつく腕に体温が伝わってくる。


「じゃ、戻ってくるまで二人で居られる…よね」

「あー、そうだな」

「バネさん…」


近い。ダビデの声が、近くて。左耳の鼓膜が震えるのがくすぐったい感じ。
俺が顔を向けると、ダビデは目を丸くしてぱちくりと大袈裟に瞬きをする。


「な…なんだよ」

「いや、バネさんすごく顔が赤い」

「は…?そっか?熱かな」

「…熱、じゃないと思う」


そうじゃなきゃなんだ、と返す前に頬に息が掛かった。唇が当たった時には震えてしまって、自分でも訳が分からず羞恥を隠すように口元を抑えた。妙な声が出かかって焦る。
ダビデの唇は頬に当たった後、耳をちゅっと吸った。あ、今度こそ声が出た。


「バネさん可愛い…」

「そ、そんな事あるか!久しぶりだから、なんつーか、こういう、あの、お前が耳元で、」

「焦りすぎ」


ふ、と笑った息がまた耳に掛かる。わざとだ。テンパってる俺が面白いのか。
ダビデは両腕をまわして抱き締めてきて、片手がするすると額を撫でて。首筋を撫でて。いやらしい動きじゃないのに、いちいち体がビクつく。


「ずっと触りたかった…バネさんの体」

「馬鹿、言うな」


そんなの、いつだって出来たのに。お前が誰かとお喋りするヒマ削って側に来れば、不可能じゃなかったのに。部屋なら、出来ただろ。俺だってこの感触が欲しくて、どんな思いをしていたか。


「ち、違う」

「え?なに、」

「違う……」

「…うん」


今のは俺の考えじゃない。
違うんだ、一氏と金色のやり取りを見たからだ。いや、あの二人が悪い訳でもない。どうして、なんで、言い訳ばかり考えてしまうんだろう。
ダビデは心配そうな表情を見せ、口付けてきた。伝わるぬくもりに、また少し落ち着く。大きな掌が腹から胸を撫で上げて、これからの行為を予感させる。
また、乱れてしまう。
こいつの手がどうにも気持ち良くてもう下半身は熱を集め始めていた。
太腿を撫で、焦らさずに中心に触れてくる。快感がじわりと広がってくるのが分かって、息が震えた。せめて声は出すまいと自分でシャツの裾を口元に持っていき、銜える。やめろ、と言ったらきっとやめてしまう。
もっと触って欲しい。そればかり思って見つめていたら、ダビデはいきなりズボンと下着の中に手を入れてきた。ぐ、と握られて、ちょっと乱暴に扱かれる。


「ふ…、んん、…っ」

「バネさん、可愛いよ。大好き。バネさんが一番好き」

「ん、ん…」


まるで俺が言わせている気がした、けど。とにかく気持ちがいいから、ベッドに両脚を乗っけて擦られるのに合わせて腰を動かした。早く出してしまいたい。


「すご…濡れてきた。バネさんの、おっきくなってるね」


恥ずかしい事を言われて思わず言い返そうとした唇がシャツを離してしまった。ダビデの舌が涎を舐め取るように動く。そんな事はいいから、と言うようにその舌を吸って、自分からキスを仕掛けた。
離れる頃にはダビデの唇も濡れて、熱い息を吐いていた。


「やばい、俺もきつい…」

「ダビも、よくなきゃ、意味ねぇよ…」

「…っ、手で、してくれる?」


すっかり硬くなったものを取り出してやる。ダビデのは勃つともっとでかくて、そうなってんのは俺とこんな事をしてるからなんだと思うと更に胸がうるさくなった。
気持ち良さそうにしている顔がいつもより色っぽくてかっこよくて、欲情しきった溜め息を漏らしてしまう。


「バネさん…好き、」

「しつこい…って…」

「言っても言っても足りない。それ以外出てこない」


馬鹿だな、ダビデは。
そんなお前にもやもやする俺ってなんなんだ。


「一緒に、イこ、な…?」


肩に額を乗せて囁くと、大きな体が揺れて、跳ねて、俺も頭が真っ白になった。








2012.9.22
バネさんは空気を読みすぎたり、いいお兄ちゃんになりすぎてしまうのではないかと思って興奮しました。


お題をお借りしました。
4m.a(PC向)



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