愛心過剰 顔を洗って鏡を見ると、自分の無表情な顔の中に楽しさが滲んでいる気がしてすぐに目を逸らした。 視界に入った時計に目をやる。 謙也さんが何か行動を起こしていたら、準備は進んでいるはずだ。せめて後ろを濡らしてくれているとラクだなんて考えながら部屋へ向かい、戸を開けると、四つん這いになって床に両膝を着け、ベッドに上半身を乗せて自分の尻に手を這わせている謙也さんが居た。 濡れた瞳は俺を捉え、あ、と短く声を上げて後ろに伸ばしていた手を退けてしまう。 「ほんまにやっとったんすか」 「は…!?やってお前が言うたんやろ…?」 「まあ、そうですけど」 わざとそう言えば謙也さんはぐしゃぐしゃにした顔を布団に押し付け、一言悔しそうに叫んだ。 「顔射。したやないですか」 「あ…う、」 「それを許してほしかったら…って話やろ、謙也さん。そないに恥ずかしがることもないし」 そう言いながら側に座る。謙也さんの傍らに置いてあるローションのボトルを手に取り、中身を掌に垂らして両手に広げ、申し訳程度に慣らされた尻へ伸ばす。粘ついた液体がぬるぬる滑ると、謙也さんは息を詰めるように体を揺らした。 「指入れました?」 「聞くなや…」 「聞かへんと分からないすわ。いきなりこうやって」 「あッ」 「入れてもええのかどうか、とか」 ローションで濡らしていたとはいえ二本入るということはそれなりに弄ってたんやな。 慣らすのが苦手だと知っている身としてこれは、まあまあ頑張った方やと思う。 俺が突然指を挿入したことに緊張した穴はぎゅっと締め付けてくる。力を抜かせようと後ろからシャツを捲り上げて腰の辺りを舐め上げた。 「は、ん…ひか、あ…っ」 「謙也さんの声えっろ。腰もえろいし。誘っとんのかと思いますわ」 「さ、誘う…って…はぁっあッ」 「後ろようなってきました?」 指をゆっくり出し入れさせてやる。謙也さんはもう腰を抜かしそうになっていて、がくがくと脚を震わせていた。 「もうええんちゃいます謙也さん。まだですか?」 「ひ、ん…っんっ」 「ああ、まだですか…まあええですよ。付き合います」 「あっあうっ」 指をもう一本増やして少しだけ早めに出したり入れたりを繰り返す。前の方を覗き込むと、ちんこは布団に擦れていた。意図してやっとんのかは分からんけどオナってるみたいでほんまにえろい。 「痛ないですか」 「い…たく、ない、ぃ…っ光、なんで…なんでや…」 「何がです?」 「やって、俺ぇ…っあっんッ・・んんっ」 もうイキそうなのに、とか、なんでいつもみたいに強引に挿入しないんだ、とか言いたいんだろう。 謙也さんの見えないところで欲情を抑えるように息を吐き、更に指を動かす。 「ぁ、ああ…っひかるッ…、やあっ」 「謙也さんがもうええって言うまで準備せぇへんと」 「は、ひっ…っも、ええから…ええからぁっ」 「そうですか」 あっさり言ってのけると拍子抜けした声が返ってきた。 謙也さんの中から退き、どろどろのままの指でチャックを下ろそうとするけど滑って無理だった。仕方がないのでズボンで拭って前を寛げ、硬くなっているそれを握り、数回扱く。 「…っひ、光、まだ…?」 「欲しいんすか?」 「ほし…い…っ」 尻たぶを鷲掴み、親指で穴を広げるようにしてひくひくとするそこへ先端をあてる。挿れるか挿れないか、というところで謙也さんが腰を押し付けてきて不本意ながら焦った。 手を添えてやると俺のそれはどんどん中に入っていく。 まるで食われているみたいな感覚だった。 「は、ぁ…っ入った、あ…っ」 「ちゅーか、…っどんだけやねん、謙也さん…自分からって」 「ああ、あっ…やって、…っ」 「やってやないわ。えろいことしか考えてへん脳や」 「ちが、違う…っ」 腰を掴んで揺さぶり始めると、謙也さんは高い声で鳴き始める。なんかそういう、オモチャみたいな。 「んっ、んっ…ちゃん、と…ひかる、のコトも、考え、てる、…っん、」 「そら当たり前やろ…」 「あ、あ・ァっ光…ぅ…ッ」 「俺のこと、好きすぎやないすか、」 自分で言って思わず笑いが漏れた。謙也さんは相変わらずアンアン言ってるから気付かないだろう。でも、反応したみたいに中が締め付けられて、その瞬間の気持ち良さに思わず乱暴に腰を打ち付けてしまう。 皮膚のぶつかり合う音に興奮が高まった。 俺も、謙也さんのことが好きすぎる。 腰を掴む手を一旦離し、後ろから両腕で抱き締めた。腹部に回す腕に力を込めると、苦しい、と謙也さんは言ったけど、ちょっと笑った風で、それがまた可愛い。気がした。 「光、は、あっ…俺、も…っいき、そ…」 「俺もっすわ…っ謙也さん、」 「あぁっあっちょ、おまえ、激し、ぃ…っんっ…、あっ、ぃ、ッ」 大きく震えた謙也さんの中で果てて、出し終わってもぎゅうぎゅう抱き着いてやった。汗まみれの汁まみれで気持ち悪いはずの状況なのに、俺は離れたくなくて。 「謙也さん…」 「はぁ…むっちゃヨかった…」 「…うっわ冷めるわ」 「ええ?」 腰を引いて退き、とりあえず近くにあるティッシュ箱を引き寄せる。 俺が淡々と拭いている間にベタベタのままの謙也さんがくっついてきて、しつこく何度もキスしてきた。 「なんや。うざいっすわ」 「光が好きやから気持ちええんやないか…」 いちいちほんまにうざいことしか言わん口や。 こっちから唇を吸ってやると謙也さんは顔をますます赤くして黙って離れた。 今度からうるさいと思ったら口吸ったろかな、と思った瞬間だった。 2012.6.25 受けサイドなのに謙也視点じゃなくなってました…アレレ でも今度は甘々っぽくなったかな…! |