「帰国してからも一緒ですね、部屋」 部屋割りを見て嬉しそうに毛利が笑う。 「月光さんと同じ部屋にしてもらうのにめっちゃ努力してる甲斐ありますわ〜」 と付け足して。 四人部屋が並ぶ中、数箇所だけ二人での使用を黙認される部屋がある。コーチ陣が割振りを考えている為に自分から選ぶ事は出来ない。帰国後すぐにそこを使えるのは幸運だと言えた。 荷物を粗方整理し終えた頃には窓の外が薄暗くなっていた。食事と軽いトレーニング、その後の入浴を済ませれば日付を跨ぐだろう。 そんな事を考えていると、毛利はベッドから丁寧に畳まれた布団一式を引きずり出していた。何をしているのかと訪ねると小首を傾げ口元を緩めて笑う。 「ベッドは窮屈やし一日目は使わんでもええかなって。勿論月光さんも」 「床で寝るのか」 「そうです」 即答されて、特に言い返す言葉も無いので黙ると会話は途切れた。 毛利は遠征先でもよくベッドに潜り込んで来ていたが、帰ってきても同じ事をするとは思わなかった。 あいつ自身、一人でも一般的な規格ではおさまらないのに、更に大きい俺と寝る利点など無いだろう。 それを問うのは既に何度か経験済みだったので、今この場で再確認はしないが、本人が主張するのは「月光さんと寝たいから」という理由だ。 シーツを敷き直しているのを手伝い、床に広げた二組の布団見下ろす。 毛利がどう言おうと拒否する事は容易い。嫌だと言えばやめる聞分けの良さはある奴だから。それをずっと拒まずにいい様にさせている俺はやはり甘いのだろう。 不意に視界にゆらりと入ってきた影に顔を上げると、布団の上を膝立ちで移動してきたらしい毛利が正面まで来ていた。 「せめて夜まで待たんと。俺節操無い奴になってまう」 「もう夜だ」 「そうですけど、ちゃうんです」 伸びてきた腕が緩慢に首へまわされる。弱く抱き締められた時、俺の両手は自然と毛利の背中を撫でた。そうすると深呼吸をする様に息を吐く体が小さく揺れて俺のジャージを握る。 「月光さんと俺、心臓の大きさは同じなんやろか……ちゅーかドキドキしててきもいですか、ごめんなさい」 「毛利、」 「「さして問題はない」」 先を見越した毛利の声と自分の声が同じ音を発する。毛利はそれを心底可笑しそうに笑って退いた。 笑顔から変化した一瞬の表情が何かを堪えている様に見えて、その後の食事中も頭から離れなかった。 2012.6.3 タイトルださry 試しに書いてみた一緒に寝るまでの二人。 部屋割りどうなるのかな、一軍上位。丸ごと捏造です。 |