悩みは口実 | ナノ

悩みは口実


好きでやっている訳ではないのだと心の中で言い訳し続けるもそろそろ限界。謙也さんが興奮している所為か、はたまた若干テンパっている所為か涙を零し始めて、ごくりと喉を鳴らした。


「も…ええやろ、…っ財前、」

「ええやろってまだ少ししか経ってませんよ」


傍らに置いてある時計に視線をやってそう答える。

ベッドの上で俺に向かって足を広げるこの部屋の主は、浅い息を吐いては上擦った声を漏らす。
堰き止めたままのソレの先端を親指で軽く撫でてやると、体が揺れて綺麗な腿の筋肉がくっきりと浮き上がる。

謙也さんが早漏でお悩みやから付き合うてるんや。どないしたら、なんて言われて俺が答えを出せるはずもない。
検索すればそれなりに情報は得られたのかもしれへんけど、触りたくなってしまったんやから仕方ない。適当な事を言って射精時間を延ばしてやる事にした。
別にこの人のちんこに触れたいって訳やないけど、触ると泣いて喜ぶからそれが見たくて。


「財前、出したい…っ」

「はぁ、駄目です」

「ほなら…が…まん、するから、キスして」

「はあ?」


どさくさに紛れて何を言っているんだと睨むと、真っ赤な顔を横に逸らして謙也さんが唸る。
アホか。恥ずかしいなら言うなや。


「しゃあないっすわ…」


壁に寄り掛かっている先輩に顔を近付けてやると、逸らしていた顔をゆっくり戻して目を合わせてくる。目の次は唇をじっと見つめてきて、熱い息が口元に掛かったと思ったら塞がれた。躊躇いを見せない舌が誘うように口内を擽ってくる。
誰にも役立ちもしないけど、謙也さんはキスが上手い。上手いですねなんて言おうものなら喧しいので言ってはやらない。
濡れた音が耳元に入ってくると俺も体の芯が熱くなってきて自分から舌を絡めた。
うう、と少し苦しそうな声を出してから、ん、ん、と甘えた鼻を抜ける声が続く。

握る手をそのままに、片手も近付けてやんわりと先端側を握ってやった。先走りを塗りたくるみたいに動かすと謙也さんの口は弾かれたように離れていった。


「キス、もうええの」

「んぁっやってこんな、ああ…っ」

「我慢するんでしょ」

「手ぇ動かすの、やめぇ、って…!」

「謙也さんの元気すぎですよ」

「うぁ…あ…っあほぉ…」

「誰がアホや。射精したくて後輩に泣いて縋ってるアンタがアホやろ」


いやいや、先輩の性器を嬉々として握っている俺もなかなかアホやけども。しかし興奮しっぱなしの謙也さんは俺の言葉に声を詰まらせて眉尻を下げる。あーあ。情けない顔して。


「ざい、ぜ」

「光、やろ?謙也さん」

「ひかる…」


相変わらず上擦った声が俺の名前を紡いで、その口が小さく弧を描いた。余裕が出てきたかと思っていると、謙也さんは立てていた膝を一気に合わせ、俺は腕を動かせなくなった。


「何しとんのですか。俺の左腕挟まってるんやけど」

「うう、やって…も、無理」

「ほー、力ずくで離さそういう魂胆なん?…立派な大腿筋をお持ちやな!」

「ああッンっ痛い痛い痛い!!」

「アンタのちんこは俺が握っとんのやで。ほんまアホやな」


そうは言っても謙也さんの足の力が抜けて俺も気が抜けたのか、つるりと性器が手から離れた。握り込んでいた為に離れる瞬間も刺激になったらしい。ふぁ、と間抜けな声を上げて謙也さんはとうとう出してしまった。
出すのはこの際構わないのだが、その瞬間は運悪く顔を近付けてしまっていたので、顔面に精液が飛んでくるという最悪な結果になった。


「わ…っちょ、ごめん、顔めっちゃ汚れて…」

「おかしな抵抗して顔射って謙也さん…」

「ごめんて!」

「許せる訳ないっすわ」


とりあえず顔を洗ってくる事にする。
立ち上がった俺を見て相当頭にきたのだと思ったらしい謙也さんが腕を掴んで尚も謝ってきた。


「挿れさせてくれるんやったらええですよ」

「え、」

「顔洗ってくるんで自分で準備しといて下さい」

「いや、それは、…光!」


尻を自分で弄るのは謙也さんの苦手な事。それを知ってて言った。最近は気持ち良くなるというのを分かってきてしまったようで、ますます嫌っている。
洗面所のコックを捻りながら鏡を見ると精液の付いた顔で薄く笑う自分が居て気分が悪かったが、さっきの謙也さんを思い出して打ち消した。


「早漏で困る事なんか無いくせに、あのアホ…」






2012.5.31
あまり甘くなくなってしまいましたが、デレてるんです…!笑



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