リク:菊大 | ナノ

甘さも痛みも享受する


英二が眉を潜めて俺を見つめている。
その瞳に、怯んだ。
怖いという訳じゃなかったけれど確実に嫌われたと思ったからだった。


仲が良くて息も合って、何でも曝け出せる存在にお互いなっていて。そこから恋人に発展したのは英二が勇気を持って告白してくれたおかげ。
そうでもなければ、俺は我慢を突き通して親友のままでいいと思っていただろう。
感謝していた。
今が凄く幸せで、いろいろ辛いことがあっても英二とのことを思って頑張れる。


二人で所謂幾度目かのデートというやつをした、その日の締め括りと言ってもいい。俺の家で、それとなくそういう雰囲気になったので英二とキスをした。
俺達がキスをするのはその時点で初めてではなかった。軽く触れる程度の、暖かい唇を一瞬感じるだけのキス。

目を開けると英二が真っ赤な顔をそのままに微笑んで、なんて可愛いんだろうと思った。そして俺は衝動的に英二を押し倒していた。


ビックリしたように見開いた瞳が俺を射るように見るまでそんなに掛からなかったと思う。


英二が珍しく見せた表情に固まって退けることも出来ないでいると、結ばれた唇が開いた。


「大石、これってどういうこと?」
「…ごめん」
「謝る前に、どういうことか説明して」


俺は最低だ。いくら恋人でもこんな急に。
何か言おうと思っても頭がなかなか働かなかった。
四つん這いから身を起こして謝罪ばかり繰り返していると、上体を起こした英二が胸倉を掴んできた。


「ごめんはいいってば!俺だって分かってるよ…」
「でも俺……英二に何も言わないで突然」
「俺はそんなことに怒ってない。大石がそういうことしたいならさ、したいよ俺だって」


したい、と英二が直接的ではないにしろ言ってくるのが恥ずかしくて、目を背ける。こんなことにも耐えられないのに、押し倒すなんて、考えなしにも程がある。


「大石聞いてる?」
「あ、…っご、ごめん」
「だから……はぁ。大石が自分から押し倒してきたってことはさ、もう大石の中で無意識に決まってたんだよね。それがちょっと嫌だなって思っただけ」
「決まって…って、何?」
「俺のことどう思ってんの?大石」


英二の問いに目一杯考えて出した言葉が『可愛い』だった。好きとか嫌いとか、信頼しているとか、そういうことじゃなくて浮かぶといえば漠然とそれかなと思ったからだ。でも英二はそれに対して溜息を返してきた。


「俺も…大石のこと可愛いと思ってるよ?」
「え?だけどどう見ても英二の方が可愛いよ」
「…そういう風に言うけどさ、その時点でもう俺と大石は平等じゃないじゃん」
「どういうこと…?」


また難しい顔をしている。
どうフォローしたらいいのか検討もつかない。
俺は自分で思うよりもずっと浅く考えていたのかもしれなかった。

可愛いからという言葉を、英二は明らかに不満そうに受け止めていた。それが何故か分からない俺に英二は目を細めて悲しそうに声を絞り出す。


「意識してたよ…大石とえっちするの。俺はどっちでも良かったんだよ、男役でも女役でも。でも大石は違うよね?俺が可愛いと思ってて、俺が女役だと思ってたんでしょ?」
「え…?」


思わず聞き返してしまったが二回目を聞きたかった訳じゃない。
驚きのあまり「え」しか出てこなかっただけ。

これは照れている場合じゃない。
押し倒しただけならまだ良かったのかもしれないけれど、英二の言うことは図星だ。

具体的に性的な行為を想像していた訳じゃないけれど、なんとなく英二に尽くすものだと思っていたし、俺がリードしなければならないという気持ちがあって、英二側にもそういう気持ちがあるとまで考えていなかった。


「やっぱりそうなんだ」
「…ごめん、英二…」
「素直だから許す。でも大石、折れてくれるよね?」
「…何、を?」
「俺が大石を押し倒してもいいよね…ってこと」


返事をする前にゆっくりと横たえさせられた。
部屋の灯りを遮る英二の顔が、試合中に見せたどれよりも男らしくかっこ良くて、その迫力に思わず喉を鳴らしてしまう。

そして俺は英二になら何をされてもいいよな、と自分に言い聞かせた。

自分を責めるよりも吹っ切る方が英二も嬉しいはずだ。


「英二…悪かったと思ってる」
「…うん」
「でも償いとか自己犠牲じゃなく、英二が好きだから…折れるよ」
「大石っていきなりすっごい恥ずかしいこと言うね!」
「英二に比べたら普通だよ」


俺がそう言うと、かっこいい顔が、緩まってふにゃりと笑んだ。こんなに可愛くて、かっこいい恋人がいる俺は幸せだ。

唇が頬に触れて、俺の唇に重なると、先ほどまでとは違って濡れた舌を潜り込ませてくる。
熱くて積極的なそれがとてもいやらしく感じて目を強く閉じた。

粘膜が舌で撫でられる。
溢れる唾液を飲み込むが追いつかなくて垂れていく。
唇が解放されて荒い息をつきながら、べたべたになったシャツを引っ張った。


「涎…」
「脱いで、大石」
「あ、…うん」


呆けながらも促されるまま、唾液がしみになったそれを脱いだ。


「あれ?上は脱がなくていいのか…」
「え?どうして?」
「え…だって、その……」


思わず触れた胸元。要するにそこにあるべきものが無いと言うか。
英二は小さく笑って俺を抱き締める。


「まだそんなこと言ってるの?分かってないなー…。こんなに可愛いところ、可愛がるに決まってんじゃん」
「か、可愛いって……」


女性ほどじゃないにしろ、突起があるはずのそこはへこんでいて、実は少し気にしている。何の気なしに言ったのかもしれないけど、可愛いと言われると余計に恥ずかしい。
英二は指の腹でぷにぷにと陥没した乳首を押したりしている。


「これってやっぱり、立ったら俺の乳首みたいになるんだよね。舐めたらなるかな」


呟いて、胸元に舌を這わせてきた。
ぞわぞわと寒気みたいな感じが広がって息を詰める。英二の舌はわざと唾液で湿らせたようにぬるぬるしている。
片方も指で優しく捏ねられた。
それだけでも俺の体はビクビクと跳ねてしまう。


「なかなか出てこないね」
「英二…もう、下が苦し…」
「まだ遊びたいから駄目」


ちゅぱちゅぱと吸われる音がする。
駄目と言われては待つしかない。顔を両手で覆ってなんとか耐える。ずっと英二の立てる音が気になって、耳も何かで塞ぎたいくらいだった。


「ん…っ……ッ…」
「あ、見て見て大石。吸ったら乳首びんびんになったよ!」
「そ…そういうこと、言わなくていいから英二」
「わざと言ってるんだってば。…ここ、硬いね」
「ふ…っ」


するすると熱を持ったところを手の平が往復している。ひく、と腹筋が震えた。
ズボンから下着までずり降ろされて、俺も腰を上げて協力すると一人だけ裸になった。


「英二は…脱がないのか」
「うん、大石だけ裸なのがいいよ」
「え…っ嫌だそんなの、恥ずかしい」
「恥ずかしがってる大石可愛いんだもん」


嬉しくないと言い返しても、英二は笑って誤魔化すだけ。

勃ち始めたそこを優しく握られて、目が潤む。しかしなかなか激しい快感は襲ってこない。自分で擦るよりも焦れったい。英二にされると思うだけでおかしくなりそうなのに。


「あ…っは……」
「ねえねえ、どうしてほしい?」
「な、に…」
「言ってみて」


ぼんやりする頭で反芻して導き出した答えに泣きそうになる。それは絶対に拒否したいことだ。この、今の状況もとても恥ずかしいのに。英二をじっと見つめても、その目は笑いを含むだけで少しの哀れみもない。
顔を背けて股間を隠そうとすると、英二は両手を掴んで屈み、腿に舌を這わせ始めた。


「ほらほら、舐めちゃうよ。いいの?」
「嫌だ、…っ」
「やっぱり。大石ってそういうの駄目そうだし。でも言えないって言うなら舐める。どっちか、ね」
「嫌だって、言ってるだろ…っ英二…っやだ、…っや、…ひっ!!」


軽く握っていただけの手が根元を抑えて、本当に英二はそこを口に入れたようだった。驚いて首を起こすと、何の躊躇いもなさそうな表情で英二は顔を上下させていた。力が抜けて後頭部をぶつけた。
未知の感覚に震える。いつの間にか自由になっていた両手はもうどこも隠さず、ただカーペットを掻いた。


「おおいひ、ん…っねえ、気持ちいい?」
「あ、あ、…っ…き、気持ち、いい…」
「どこが?」
「おれ、の…っそこ、」
「そこって?」
「ぺに、す…」
「おお!ペニスって…言うんだ…可愛い」
「嫌だって言ってるだろ…そういうの…っ」


声が詰まって、俺は思わず泣いた。本当に恥ずかしいのに、英二は面白がってばかりだ。
身を任せている状態からか、俺の精神は後退しているのかもしれない。いつもなら無いしゃくりあげて声を上げるような泣き方に、英二はごめんと上擦った声を出した。


「ごめんごめん、ごめんね、大石…つい、いやらしいこと言わせたくなっちゃって。気持ち良くするから許して」
「ひぁ、あっ」


また熱い口内に包まれたペニスがぬるぬるぐちゃぐちゃと、訳も分からないくらい嬲られて、出そうになった。
しかし射精に至る前に、異物感が先立った。
いつの間にか開いていた脚の付け根に強引にクッションか何かを入れて、浮かせた腰を利用してぐりぐりと体内に何かが入ってくる。それはたぶん指なのだけど、その行為は想像を超えていた。


「えいじ、汚い、そこ、汚いよ…っ」
「汚くないよ大石。待って、今ハンドクリーム塗ってみる…」
「ちょ、ちょっと待っ、…あっきもち、悪い…ッ」
「我慢して」


英二の指が尻の穴を暴いてくる。余裕がないのか、優しくない動きだったが、たっぷり足されたぬめりが手伝って指がどんどん入ってきた。


「こ…こんな…っいいのかな、これ…っ」
「へ?なんで?」
「いや…だって、…ごめんな英二」
「何言ってるんだよ。大石だからしたいって思ってるのに、謝るなよ」


膝をすくうようにして英二は俺の顔を覗き込んだ。

想像を逸していたけど、俺はもう吹っ切ることが出来る。ただ英二の方はひどいトラウマになるんじゃないかと思った。
そんな俺に英二は眉間を潜めて真剣な眼差しを返してくる。


「痛かったら絶対言って…やめるから」
「痛くても、大丈夫……分かるだろ、英二」


何故かクリームを塗られた箇所かひくんと蠢いて自己嫌悪に陥りそうになる。顔から火も出そうだ。早く、早く。

ごくりと唾液を嚥下した英二は興奮を抑えきれない様子で僅かに口元に弧を描かせるのみだった。

力の入ってしまう尻の肉を掴んで開かせてきて、英二はそこへ自分のペニスを押し当てる。俺だったら出来ないかもしれない。いろいろと躊躇って前に進めないだろう。
でも英二は違うから。


「あ…っふッ…ん、んん、い、痛…ッ」
「大石、俺と一緒に深呼吸しよ…ね、これじゃ俺も…痛い」


吸って、吐いて、呼吸が合っていく。


「あっつ…い…っえいじの、あ、熱い…ッ、硬い…」
「やめて大石…」
「恥ずかしいところを、見たいって…」
「やり返すって、訳?…俺は構わないもんね……大石にならやらしいこといっぱい言えるしっ」
「あっ!ぁ、あっ…や、ぁ…ああ、…っあッ…んっン、…ッ」


中の熱が、行ったり来たりする。
英二の形が中を抉って、先端の張ったところが内壁を擦る。実際はゆっくりなのかもしれない。でも、何がなんだか把握出来ないくらいの激しさに感じる。
凄く気持ち良くて声が出てしまって、恥ずかしいと考える分が全部快感に染まったようだった。


「大石…大石の、ここ、気持ちいいよ…腰止まんない、…んっ…」
「は、ぁ…っおれも、きもち、い…英二…英二…ッ」


両腕を英二の背中にまわして、そのその背中にしがみ付く。俺と大差ない体格なのに凄く頼りになる気がした。縋りつく俺の頬を撫で頭を撫で、英二が顔を歪める。それを見てぐっと締め付けてしまい、悲鳴が漏れる。英二はもう慣れたように、腰を打ち付ける速度を上げた。


「ンっ…あ、…だめ、…だ、俺…ッもう、あっ、あっ…あ、はぁあ、」
「一緒にイこ、大石…っ」


だらしなく先走りを垂らしているペニスを握って、強く扱かれる。大きく震えた俺の上で英二が果て、中に精液が注ぎこまれた。ぴゅ、ぴゅ、と断続的に飛ぶ俺の白濁が自分の体を汚す。


「……は…、疲れるな、これ……はぁ…は…、大丈夫か、英二」
「うん…大石、すぐに疲れるって言うの、どうかと思う」
「え…!?駄目、だった…?」
「…まあこれからずっと俺だけに言うんだし、いいけどね」


英二は笑ってじゃれてくる。なかなか退かない。抜かれたらそれはそれで何だかまずい気もするが、このままでいる訳にはいかないし。


「あの、もう…処理、しないと」
「余韻に浸ろうよー。そうやってちゃっちゃと終わらせようとして…」
「違うよ英二、えっ」
「俺はもう一回イケるのに…」


ぐりゅ、と萎えたそれが動かされる。惜しむように抜き挿しを繰り返されると、また熱が燻りだしてしまう。
こんな英二も好きだけど、何度も許していたら体がもたない。大人しく抜くよう促しながら、自分の熱を抑えるために目を閉じた。






2012.3.12
リクエスト通りになって…いないかもしれない菊大。
男前にならなくてすみません。
お前もネコになる気ないじゃないか!とツッコミが入りそうな菊丸。

趣味に走って菊丸は若干言葉責め、大石は陥没乳首の持ち主です…
コンプレックスがあって、それを無意識に突かれてあーもう!でも好き!ってなる大石も可愛いんじゃないかと思った訳で…申し訳ない!

有難う御座いました!!

リクエスト:自分が攻めだと思ったら受けで、でも普段と違ってすっごく男前だったから相手にキュンキュンしてる菊大。露骨系エロ