裏ネタ | ナノ

絶対結ばれないようにいつでもハサミを持って待ち構える悪魔が二人も居たら、そりゃあ挫けたくもなる。

側で謙也さんが泣きわめくのを感じながら俺は吐き気を堪えるのに必死だ。
出来れば謙也さんを助けたい。尋常じゃない泣き方をした恋人は流石にネタになると思えない。
でも俺も目は見えないし身動きだって満足にとれないから何の役にもたたない。

「ひかる、」

耳元で湿っぽく囁かれた声は千歳先輩のそれだ。

「謙也、静かに出来へんの?」
「離せ言うとるやろ白石!もう…っ財前、財前、大丈夫か、っ?なあ、っ」
「謙也さ、うっ!」

中の異物が暴れだした。それは想像するにバイブとかそんな感じの物だろう。名前を呟く声は阻止されて、謙也さんは不安そうにまた叫ぶように呼んでくる。
声が漏れないように我慢しているが、そろそろまずい。

「光の、ガチガチになっとるばい。後ろもこぎゃんと飲みこんでいやらしかねえ」

そんな訳ない、そんなはずない。

「財前…?な、何されとんねん?千歳、おい!」
「何を他所に気ぃやっとんのや。余裕やな」
「しら、ぁ……っ」

普段はしない、唇を噛み締めるという行為に、愛撫する舌がやんわり叱責してくるように感じた。千歳先輩はいい人だ。普段は温厚な性格をしている。

しかし時々こんなことになる。

俺と謙也さんは千歳先輩と白石部長に幾度と結ばれそうになる糸を切られてきた。肉体的なことは初めてだった。今回乗りきれるかどうかは分からない。
狭い中で混沌とする関係は長すぎる糸をぐちゃぐちゃにからめすぎてもうほどけないんじゃないかと思う。
何の信仰もない俺だが、謙也さんがせめて壊れないようにと祈るばかりだ。

手が届きそうで届かない。やっと届いたと思ったらまた違う人の手。
2012/04/13
- ナノ -