裏ネタ | ナノ

彼が冷たいと言われているのを、この短い期間で幾度か聞いた。
試合中は鋭利な刃にも思える瞳。
それは今俺の下で溶けかけの氷みたいになって、俺だけを映している。
月光さんはそんな目をしているなんて自覚はないんだろうけど。
蛍光灯の光が目の動きに揺れて、水を張った粘膜が今にも雫を滴らせそう。
気持ちいいからだといいな、と思う。
でも耐えてくれているのが分かるから、それはきっと願望だ。

こんなに肌が熱いのに、口から零れる吐息が凍ったら。
それが小さな粒で、ダイヤモンドダストみたいに輝いても月光さんなら不思議じゃない気がしてしまう。

あ。

膨らむ妄想を打ち消すように、月光さんに引き寄せられた。
唇はやっぱり熱くて思わず口角を上げた。

溶解
2012/07/02
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