▼ 叫び
昔とは違う、きみの抱き方に、離れていた4年間が、どうしようもなく、きみを変えたのだと理解した。
きみは変わった。
背が伸びて、男らしくなって、けれどより美しくなって、色気が増して。
きみは変わっていない。
夜明けの空の灰色も、ぼくを茶化す口調も、行為の最中に慈しむようにぼくの額に口づけをする癖も。
それでも、やっぱり違う。
それが、どうしようもなく。
「かな、しい」
「紫苑?」
否応なくもれる喘ぎ声の合間にその言葉を紡げば、きみは不思議そうに問うてきた。
ぼくを突き上げる動きを止めて、勝手に溢れてくるぼくの涙を綺麗なその手で拭った。
「ネズミ」
「どうした、紫苑」
「…ネズミ」
「紫苑?」
その優しい声色に、またどうしようもなく涙が溢れて。
昔より柔らかくも鋭くもなった声。
きみが、遠くにいるように錯覚して、ぼくはきみの頭を掻き抱いた。
「ネズミ。ぼくを、もっと抱いて。何も考えられなくなるくらい」
「…そのつもりだよ」
ぐっと突き上げてくるそれに、ぼくは悲鳴のような喘ぎ声を上げた。
その悲鳴が、きみに叫びに聞こえていたらいい。
きみと会った日、ぼくは叫んでいたから。吐き出せない思いと、胸の中でくすぶる悲しみと、虚しさと、きみへの愛が混じって、入り乱れたぼくの叫びを。
きみが、少しでもぼくという存在を、心の端にでも置いてくれるように。
叫び
2011/11/02