NO.6 | ナノ


▼ 雨音、胎生(拍手3)

雨の音は、母胎の中の音に似ているという。


「紫苑」
「ん?」


座る紫苑の腹に耳を当てる。
勿論紫苑は女ではないし、妊娠してもいない。
その証拠に紫苑の腹は食が満足にとれないせいで凹んでいる。
それでも、耳を当てた。



くる、きゅるる



腸が活動する音が聞こえる。
そして、小さく、血汐が脈打つ音。
規則的なリズムは、外から聞こえる雨の雫が落ちる音とハーモニーを奏でる。



パラパラ、パラパラ


とくとく、とくとく


くる、くる、きゅるる



「紫苑、あんたは生きている」
「ネズミ」
「おれも、生きている」
「どうしたんだ、ネズミ。ぼくの腹の音なんか聞いたりして。まるで子どもみたいだ」
「…かあさまのお腹の音が、とても落ち着くんだもの」
「はは、ぼくが母さんできみがぼくの子どもか」

愉快そうに笑う紫苑はネズミの頭を優しく撫でる。


「……仕方のない子。ほら、かあさまはここに居て、あなたの頭を撫でていてあげるから…目を閉じて」



パラパラ、パラパラ

とくとく、とくとく



その優しいリズムと、優しい紫苑の手に、意識はどんどん微睡んでいって。


「おやすみ、ネズミ」


柔らかく笑み小さく呟いた紫苑が、ネズミの頭に触れるだけのキスをしたのを、微睡んだ意識のままどこか遠くの方で、感じていた。





2012/04/03〜2012/11/30

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