NO.6 | ナノ


▼ 咳

 
※ネズミがバイオレンス
※紫苑が痛い痛いなります
※裏じゃないけど若干危ない
※学パロとも言えない学パロ




けふり。

足の下の紫苑が咳を漏らした。
紫苑の紫色の瞳がネズミを恨めしげに睨みつける。
白い絹糸のような髪が地面の茶色に散っている。
紫苑の瞳から、髪、地面へ視線を移し最後に、周り。
紫、白、茶、所々に赤、地面の茶、そしてまた白。
最後の白は誰かの足。それも沢山の足が、ネズミたちを囲んでいた。
ネズミが口元を笑みに歪めると、足の下の紫苑がネズミを睨みつける。

けふ、けふり。

また紫苑が咳をする。
足の下で気管がこすれるような音もするが、ネズミはただ笑うだけだった。
紫苑の咳の犯人は、おれ。
その事実が、たまらなく可笑しかった。

「きみは、なにがしたい」

掠れた声で問う紫苑の目は、生理的な涙で濡れている。

「別に、なにも」

ネズミが笑んだまま問いの解を返すと、紫苑はわけが分からないとばかりに眉を寄せた。
ざわめく周り。
だが、だれもネズミを止めたり、紫苑を助けようとはしない。
それは、ネズミを苛立たせた。
紫苑を踏む足に力が入り、紫苑がまたけふっ、と咳をした。
周りがはやし立てる声はネズミの苛立ちを助長するものでしかなく、紫苑を踏みしめる力を強める。
紫苑が唇を噛み締めネズミを強く睨みつけた。

「あんたはなにがしたい」

睨みつける紫色を見つめて、今度はネズミが問うた。
紫苑がいくら華奢だとは言え男だ。
逃げようともがき暴れれば逃げられるだろうに、逃げない紫苑が不思議でたまらない。

「別に、なにも」

紫苑が解を返しながら、自身を踏みしめるネズミの足を掴んだ。
だが、それも、ただ掴む、だけ。
ネズミの灰色の瞳は、紫苑の…もとは白く艶やかだったであろう…内出血が出来、腫れて赤くなった手を写す。
なんだか無性にその手に触れたくて、ゆっくりと足を上げた。

けふり、けふ、けふん。

圧迫していたものが無くなって広がった気管を、空気が我先にと通っていき、紫苑が体を丸めて咳をする。
周りからは、足を上げたネズミに対して非難の声が上がるが、ネズミはただ、紫苑だけを見つめていた。
破れた制服と、頬に残る殴られた後の痣。
切れた唇から流れた血が、紫苑の唇をまるで紅を塗ったかのように見せる。
ネズミは舌なめずりをすると、未だ咳をする紫苑の胸ぐらを掴み上げ、その切れた唇をベロリと舐めた。

紫苑が目を見開いているのが、近すぎて焦点が結べないぼやけた視界の中で確認できた。
先ほど触れたいと思った手を握ると、痛みにか紫苑の肩が跳ねた。
唇を舐め、唇を合わせ、下唇を噛み、舌を吸い上げる。
血の味がして、眉を寄せる。
見開いていた紫苑の目が潤み、涙が零れるのを見た。
ぎゅう、と握った手が握り返された。
霞んだ紫色の瞳は、今は震える目蓋に隠されて、見えない。

けふり。

紫苑の舌を吸い上げながら咥内を蹂躙していた舌を引っこ抜くと、紫苑が小さく咳をした。
切れた口の端を唾液が伝い、荒く息をする紫苑の頬は上気している。
周りが、小さく息を飲むのが聞こえた。
罵倒や、非難の声も今は聞こえない。
ネズミは苛立った。
なにがこんなに苛立つのか、さっぱり分からないまま、初めて見る扇情的な紫苑をただ見つめた。

「きみは、なにがしたい」

もう一度問われたことに、今度は答えられなかった。
踏まれても尚、ネズミを強く睨みつけていた紫苑の強い瞳は、かわいそうなほどに潤んでいた。

「きみがなにをしたいのか、ぼくは分からない」

分からないんだ、ネズミ。
呟いて、涙を流す紫苑。紫苑と握り合う手とは逆の手で、ネズミは紫苑の肩を抱く。
ネズミと握り合っていない方の紫苑の手は、ネズミの胸元の制服を掴む。

「ぼくはこんなにもきみが好きなのに」

涙に濡れた震える声で言われた台詞に、ネズミは灰色の目を細める。

けふり。

今度はネズミが咳をした。
胸を突く痛みは咳のせいだと、言い訳をして、紫苑の手を握る手に、力を込めた。



‐‐‐‐‐
これは一体なんなんだ((
ネズ(→)←紫?
周りってちょいちょい出てきたけど何なんだろう((
一応男子校のつもりでした。
ネズミ→人気者でボス、紫苑→嫌われ者、みたいな感じで書いてました。
これから紫苑さんは尻狙われるようになるんだ、それでネズミさん「おれは関係ない」とか言ってツンデレ発動するんだ、でもやっぱり守っちゃったりするんだ。知らんけど。

2012/01/03


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