パロディでガイ様華麗にバイト中。ルーク←ガイ←アッシュ前提のガイアシュ。



ある有名な工業専門学校の学生の俺は、最近バイトを始めた。親戚の伯父さんに無理に勧められた感はあるもの、眼鏡の似合う店長に不満はない。なかなか良い勤め先だと思う。正直、金銭面で困ることも多々あったのでこれからは安定した生活を送れると安堵した。その矢先の出来事だった。

ここ最近、俺が務めるより前から常連だったであろう、紅い髪をした少年がやけに目についた。彼は俺がカウンターで会計待ちしていると、必ずこちらを見ていて、それに気付いた俺がそちらを見ると、ふいと目を逸らすのだ。それがどうも謎で、店長の彼に聞いても「最近は特に来られますねぇ」とはぐらかされたままだ。俺は店内で自棄に目立つ彼のことを何も知らなかった。知っている事と言えば、彼が毎回“カフェラテ”を頼むことぐらいだ。

(今日も来てる…)

店の一番隅っこにある二人用のテーブルに彼はいつも居る。カウンターからその姿を見るのが自分の日課になっていた。彼は夕方に近いこの時間帯によく訪れる。確かこの近くに新しくできたばっかりの進学校があったな…そこの生徒だろうか。学校帰りに寄ってるのかな。なんて勝手に彼のイメージを固めていってしまっていた。
そして俺を呼ぶベル(正式にはオーダーのためのベル)が店内で鳴り響く。お客は彼を含め3人。既に2人はオーダーアップ済み。とすると、俺を呼んでいるのは。

「ご注文はお決まりですか?」
「………」

彼はいつも俺が駆け付けると、ジロリと一旦顔を見上げてから、声を出さずメニュー表の項目を指差す。俺は彼の手がそれを指す前に声をあげてしまった。

「カフェラテでよろしいですか?」
「え、…はい」
「かしこまりました」

小走りでカウンターの裏まで回った俺は思わず手で口を押さえた。

「しまった…」

なにをはしゃいでいるんだろう俺は。あと、初めて彼の声を聞いた。思ってたより高いそれはきっと驚いたからだと思う。そうさせたのは俺で、複雑な感情が出たり入ったりした。俺はカフェラテが厨房から出されるまで、その場で蹲っていた。

「ガイ、でましたよ」
「あ、すいません」

店長に鋭い目で睨まれ、急いで立ち上がると同時に店のドアが豪快な音を立てて開かれた。何かと思うと親友のルークが自分の名前を呼びながらのしのしと、こちらに歩いてきていた。目の隅で紅い彼が身を縮めた気がした。

「おいルーク、もう少し静かに入ってこいよ」
「あ、悪い。ついテンションあがっちゃって。そこ座っていい?」
「ああ、飲み物何にする?」
「うーん、じゃあカフェラテ」
「カフェ…わかったよ」

その言語にビクリとした自分を恥じながら持ち場に戻ると、あったのは彼に届けるはずのカフェラテで。思い出したように彼の方を見ると、彼は窓の方をみてこちらなんて見てなかった。なんだか少し苛立ってしまって、その器を持ち上げズカズカと彼の前を通り過ぎて、ルークの元へ向かった。その時感じた視線に優越感を覚え、カフェラテをルークの前に置く。

「早いなー」
「まぁ、ね。ところでルーク学校はどうだ?」
「うん、楽しいよ。そういえばこないだアニス見つけてさ」

ルークの通う学校は中高校で、俺が高校生の時ルークが中学生で、それから親の付き合いということで長い付き合いになる。しかしここ最近のルークの家の事情が酷く、俺が高校を卒業した後、その姉妹校に転校したと聞いていた。新しい友達もできてるみたいで、兄弟みたいに世話してきただけあって安心した。
そこまで考えて、ふと先程無視してしまった彼のことを思い出した。そういえばルークと彼の髪の色は似ている。俺はルークの耳に近づき告げ口みたいに彼のことを呟いた。

「なぁルーク、あの子はお前の親戚か誰かなのか?」
「え?あ、あれ?アッシュじゃん!おいアッシュ!」

ルークがぶんぶんと手を振ると、ガタンと音とたてて彼は立ち上がりそのまま逃げるよう店を出て行ってしまった。

「あ、お客さん…!カフェラテ…」

なんだか俺はさっきから失敗しっぱなしだ。どうも調子が悪い。
ルークが頭を抱えて唸る俺と扉を交互に見てから、不思議そうな顔をして問いかけた。

「なんだ、ガイ覚えてないのか?」
「なにがだ?」
「あいつ、俺の兄貴だよ」

何度かあったことあるんじゃないかなーなんてルークの言葉は、左から右へ流れて行ってしまった。






次の日のバイトの初めに、店長に呼び出された。

「ガーーーーイーーーー?貴方これを見てみなさい」

店長の真っ黒な笑顔に困ってしまって、引き攣った表情でその紙を貰いうけると、それはお店の接客に対するアンケートだった。最近導入されたばかりの俺の賃金問題にかかわる大事な紙。と言っても俺のほかにアルバイトは3人いるのだが。

「アンケートですか?」

描いてあることより先に、達筆な字だなと思った。女性のものだろうか。

「悪い点、客の注文を勝手に決める。来店する客が知り合いなのは良いが、マナー違反はちゃんと注意しろ。教育足らず。オーダーが後の人に先に商品を出すのは違反。客と駄弁るなら商品をだしてから、常識。…ぼろくそだな」

思わず苦虫を潰したような顔になってしまうほど、言われ放題な紙をみて、また苦笑い。

「これ、彼のものですよ」
「じゃあこれ…」
「あなた宛てのクレームです」

そういえばあの時、彼はカフェラテを待ってる時間ペンを握っていたなと思い返す。これを書いていたのか。苦すぎる紙を丁寧に四つ折りにして、反省より彼への罪悪感でいっぱいになった胸を、どうすればいいんだろう。

「すみません…」
「謝る人が、違うと思うのですが?」

溜息一つ吐いた店長は本当に呆れた様子で俺を責めた。そうだ、彼に謝らなくては。店員として接客が悪いとかそういうわけじゃなくて、俺自身が謝らなくては。

「…それもそうだ」


早く彼に会わなければと、気だけが急ぐばかりで、案の定それから一カ月、最低賃金でこき使われたことは言うまでもない。





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