「あの、柳先輩聞きたいことがあるんすけど‥」
「なんだ赤也?」

今日も赤也は俺に色々なことを聞いてくる。差し詰め俺は赤也の辞典といったところか。

「仁王先輩のことなんですけど、あの“プリッ”てなんなんすか?」

いつかは聞かれると思っていたがあいにく俺もこれは知らない。しかし知らないと言っても赤也は引き下がらないだろう。しょうがない、知らないが答えてやろう‥

「お前が入学する前の話だから知らないだろうが、実はな仁王はプリンが大好きなんだ」
「え、甘いの苦手って言ってましたよ。」
「プリンは例外だそうだ。前の仁王はよくプリンを食べていた。プリン好きのレベルを越えてプリン中毒だったくらいだ。」
「まじすか」
「ああ。しかし精市がある日突然プリン禁止令をだしたんだ。」
「ええ!なんでっすか?!」
「理由は忘れたな。それから仁王はプリンを食べなくなった。だがプリン中毒だった仁王はおかしくなっていきプリン、プリンと言うようになった。“プリッ”はその時の名残だろう」
「仁王先輩にそんな過去があったなんて‥俺、プリン買って仁王先輩にプレゼントしてきます!」

そう言って赤也は売店に行った。

「精市、そこにいるんだろ」
「なんだ、気づいてたの?」
「最初から気づいていた」
「珍しいね、柳が嘘つくなんて」
「たまにはな」


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20110605
BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
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