バスの中で寝ていたらどうやら寝過ごしたらしい。これじゃあ赤也と同じレベルじゃないか。最悪だ。とりあえず知り合いに会わないように帰ろ「あれー、幸村くん?こんなところで何してるんだい?」 話しかけてきた奴は千石だった。こいつとはあまり接点はないはずだ。なぜ話しかけてくる。そっとして置いてくれ、こっちはバスで寝過ごして傷心中なんだよ。 「別に、散歩だよ。」 「散歩って、ここ立海から結構距離あるよね。歩いてここまで来たの?」 「うん」 「へぇー、すごいね」 寝過ごしたことは隠しておく。 「じゃ、俺散歩に飽きてきたから帰るよ」 「歩きで?」 「ちょっと疲れたからバスで帰ろうかな」 「バスに乗ったらまた寝過ごしちゃうんじゃない?」 「え?」 「なんてね、幸村くんに限ってそれはないよね。それよりも帰るんなら電車にしときなよ。駅すぐそこだし」 「‥‥じゃあ電車で帰ろうかな」 そうして千石と別れて言われた通り電車に乗った。電車の中で俺は気付いた、千石はすべて知っていると。俺が今日バスで寝過ごしたこと、それに気づかれないように嘘をついたことを。それなら最初から嘘などつかなければよかった。そしてバスより電車を勧めたのは駅が近かったからだ。本人もそう言っていたし。 その日の夜のニュースで夕方にバスが通る道路で事故があったらしい。幸い怪我人は一人もでなかったそうだが大渋滞だったとか。バスに乗っていたら帰るのが大分遅かっただろう。電車で帰ってよかった。どうやら俺は千石からラッキーを分けてもらったのだろう ラッキー千石と呼ばれるのも伊達じゃないね! ---------- 20110512 |