部室の扉を開けると空気が澱んでいた。こんなに澱んでいるのは久々だ 「何かあったんですか?」 「あ、ああ、日吉か‥‥、実は侑士失恋したらしいんだ」 どうやらこの澱んだ空気を放出している犯人は忍足さんみたいだ。しかし失恋したのは先月の話、もうとっくに振り切っていたと思っていたのだが。 「なんか今日例の子とジローが仲良さげに歩いてたの見ちゃったらしいぜ」 「忍足さんは振り切れてなかったんですか」 「あの様子じゃ振り切れてなかったみてぇだな。部室入ってきたときの侑士、目死んでたし」 向日さんが慰めようと話し掛けるが忍足さんは心を閉ざしている。そしていきなり忍足さんが大きくため息を吐いて喋りだした 「俺って駄目なんか?ジローみたく可愛くないもんなぁ‥‥俺の方がモテるんやけど。あの子はジローみたいなんがタイプなんやろな」 なぁ?と聞いてくる忍足さんに向日さんは答えられずにいる。仕方がない面倒臭いが俺が答えよう 「忍足さん、今のままの貴方を好きになる人は沢山います。それでいいじゃないですか」 「でも、俺は、あの子が好きやったんや。なんでジローなん。考えても仕方無いのは分かっとる、けどな‥‥」 「そいつがおかしかったんだよ!もっといい人いるって」 「彼女を悪く言わんといて!」 墓穴掘ったな向日さん。俺は巻き込まれないよう部室をあとにした ------------- 201103 |