二分の一の確率

我々はなぜ、双子の生を享けたのか。それは二手に分かれて逃げるためである。
確率は二分の一。一方が追われ、一方は難を逃れるのだ。足を止めて、息を整え、未だ走り続けているであろう相方を想い、ほくそ笑む。二人で分割していた責任という名の罰則も一人で背負い込ませることになるが、見逃されたほうは自首するなんて馬鹿なことは考えない。一人でも逃げ切れば、我らの勝利なのだから。
とフレッドが考えているからして、ジョージもそう考えているに違いなかった。だから相方は、当てにならない。
フレッドは走りながら、微細まで暗記している忍びの地図を頭の中に描いた。僅かだが線がブレるほど必死になっている自分に笑けてくる。
影のように追い掛けてくる足音は、まだ遠い。

そして、肩で息をするフレッドの目の前に現れたのは、冷たい行き止まりだった。
この世界には神も仏もいないのか。ダンブルドアはいるけれど。

「ここの抜け道は、気紛れだからね」

一方、見計らったかのように追い付いた彼女は、息ひとつ乱れておらず、フレッドが自らこの道を選んだにも関わらず、こうなるようにわざと彼女に追い込まれたような気分になった。
無理、無理、勝てっこない。フレッドは観念した。彼女の靴は、明らかに運動用ではないのに、その気配は全力疾走していたフレッドの背後に、常に張り付いていたのだ。
それすらも、段違いの強者が悪戯に弱者を弄ぶような、ただの戯れに過ぎない。それほどの実力差だ。
服の下で汗をかいている背中を、冷たい壁に凭れさせる。
フレッドはでも、笑みを浮かべていた。彼女がここにいるということは、ジョージは逃げ切ったからだ。
一人でも逃げ切れば、我らの勝利だからだ。
「だから」と彼女は続けて言った。

「だから、気を付けないと、フレッド」
「……へ?」

名前を呼ばれ、間抜けな声が出た。それも自分が双子ゆえの、不意討ちだった。

「きみ、僕たちの見分けがつくのかい?」

僕らは実の母親も欺くのに?
彼女は、視力が悪い人みたいに目を凝らし、それから少し微笑んだ。「……そう」
冷酷な死神みたいだった女の子は、慈悲深い聖人のように笑うらしい。

「本当にフレッドだったの」

これにはフレッドも呆れた。
確率は二分の一、ってわけだ。


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